化学工学を初めて学ぶ方に向けて、数式の意味と身近なイメージをつなげて解説しています。この記事はAIが原稿・図解・確認問題を作成し、人間の管理者が内容を確認して公開します。
表面張力とは、液体の表面を広げることに抵抗する性質です。小さな水滴が丸くなること、ガラスの細い管に水が上がること、水をはじく面で滴が盛り上がることは、表面張力と界面の性質で説明できます。
ただし、「表面張力が大きい液体ほど、どんな材料にもぬれやすい」という理解は正しくありません。液体だけでなく、固体との組み合わせも重要です。この記事では、表面張力の単位、接触角、Youngの式、Young–Laplaceの式、毛管上昇を順に学びます。
- 表面張力と圧力・粘度の違いを説明する。
- 接触角からぬれ方を読み取り、水滴の内外圧力差を求める。
- 細い円管で液面が上がる高さを計算し、式の適用条件を確認する。
表面張力とは?単位はN/m
表面張力を \(\gamma\) と書きます。\(\sigma\) を使う教科書もあります。平らな液体表面に仮想的な切れ目を考えると、その線に垂直で、かつ表面に接する方向に、単位長さ当たりの引張力が働きます。表面張力が一様な直線状の境界では、力の大きさは次の形です。
\(L\) は力を数える境界の長さです。単位は \(\mathrm{N/m}\) であり、圧力の \(\mathrm{N/m^2}\) とは異なります。表面張力そのものが「面を下向きに押す圧力」なのではありません。曲がった界面では、表面に沿う力を合計した結果として内外に圧力差が生じます。
別の見方では、温度や組成などの条件をそろえて界面を可逆的に増やすための仕事は、表面張力一定なら次式になります。
新しい表面を作るにはエネルギーが必要です。このため、重力や外力の影響が小さい自由な液滴は、同じ体積で表面積が最小になる球形に近づきます。大きな滴や壁に触れた滴まで、必ず球になるわけではありません。力とエネルギーの二つの見方は、MITの界面現象教材でも説明されています。
表面張力・界面張力・粘度の違い
| 量 | 主に表すこと | 単位 |
|---|---|---|
| 表面張力 | 液体–気体の界面を広げることへの抵抗 | N/m |
| 界面張力 | 水–油など、二つの相の界面を広げることへの抵抗 | N/m |
| 粘度 | 流体のせん断変形の速さに対する抵抗 | Pa·s |
表面張力は界面張力の一種です。「とろみがある」と「表面を縮めようとする」は別の性質で、粘度から表面張力を決めることはできません。関連する基礎は粘度と動粘度の記事で確認できます。
水の表面張力はどのくらい?
清浄な水の室温付近での表面張力は、およそ \(0.072\ \mathrm{N/m}=72\ \mathrm{mN/m}\) です。以下の例題では、この値を丸めた教材用の値として使います。正確な計算では、温度と界面の状態に対応する物性値を選びます。
IAPWSの水の表面張力に関するリリースは、純水とその蒸気が平衡にある条件を対象としています。実際の水–空気界面や溶液では、汚れや溶質、界面への吸着も確認が必要です。多くの液体では温度上昇とともに表面張力が低下しますが、溶質の添加で必ず低下するとは限りません。
例題1:新しい表面を作る仕事
表面張力が \(0.072\ \mathrm{N/m}\) の界面を、\(20\ \mathrm{cm^2}\) 増やします。温度・組成を一定とし、表面張力も一定とみなせる場合、界面を増やす仕事はいくらでしょうか。
\[W_{\mathrm{surface}}=0.072\times2.0\times10^{-3}=1.44\times10^{-4}\ \mathrm{J}\]
答えは約 \(0.14\ \mathrm{mJ}\) です。これは界面面積を増やすための仕事だけで、装置の摩擦や液体をかき混ぜる仕事まで含む値ではありません。シャボン膜のように表裏の二つの界面が増える場合、\(\Delta A\) はその合計で数えます。
接触角とは?液体側から測る角度
固体の上に液滴を置いたとき、固体・液体・気体の三つが出会う接触線で、固体表面と液体表面の接線が作る角度を液体側から測ったものが接触角 \(\theta\) です。
- \(\theta<90^\circ\):比較的ぬれやすく、液滴が広がりやすい。
- \(\theta>90^\circ\):比較的ぬれにくく、液滴が盛り上がりやすい。
- \(\theta\to0^\circ\):非常にぬれやすい側。完全ぬれでは薄膜状に広がることがあります。
親水・疎水という言葉は、水に対するぬれ性を述べるときに使います。ある面が水をはじいても、油まで同じようにはじくとは限りません。
Youngの式:ぬれ方は三つの界面で決まる
理想的に平らで化学的に均一な、変形しない固体上の平衡接触角は、次のYoungの式で表せます。
添字S・L・Vは、それぞれ固体・液体・気体です。\(\gamma_{\mathrm{SV}}\) と \(\gamma_{\mathrm{SL}}\) は固体の界面自由エネルギー、\(\gamma_{\mathrm{LV}}\) は液体–気体の表面張力を表します。接触線における水平方向のつり合いとして理解できます。式の基本的な考え方はMITのYoungの式の教材で確認できます。
たとえば \(\gamma_{\mathrm{SV}}-\gamma_{\mathrm{SL}}=0.036\ \mathrm{N/m}\)、\(\gamma_{\mathrm{LV}}=0.072\ \mathrm{N/m}\) なら、\(\cos\theta=0.5\)、したがって \(\theta=60^\circ\) です。同じ液体でも固体表面の材質や処理が変われば、接触角が変わることが分かります。
表面の凹凸や汚れ、液滴が広がる途中か縮む途中かによって、測定される接触角は変わります。進行角と後退角の差を接触角ヒステリシスと呼びます。Youngの式へ実測値を入れる場合は、理想的な平衡状態との違いに注意します。
Young–Laplaceの式:小さな液滴ほど圧力差が大きい
一様な表面張力をもつ静止界面では、曲率と圧力差が関係します。凸な球形の液滴について、内側から外側を引いた圧力差は次式です。
\(R\) は半径、\(d=2R\) は直径です。半径が小さいほど圧力差は大きくなります。一般の曲面では、符号の向きをそろえた二つの主曲率半径を使い、\(\Delta P=\gamma(1/R_1+1/R_2)\) と表します。
例題2:水滴の内外圧力差
半径 \(R=0.50\ \mathrm{mm}\)、表面張力 \(\gamma=0.072\ \mathrm{N/m}\) の球形水滴を考えます。重力による変形を無視すると、内外の圧力差はいくらでしょうか。
半径を半分にすると圧力差は2倍です。外圧が101.3 kPaなら、内圧は約101.6 kPaになります。288 Paは内圧そのものではなく、外圧からの上乗せ分です。
水中の気泡とシャボン玉を区別する
水中の気泡には気体–液体の界面が一つあるため、球形なら \(\Delta P=2\gamma/R\) です。一方、空気中の薄いシャボン玉には膜の内側と外側の二つの界面があります。両面の表面張力が等しく膜厚が十分小さいとき、\(\Delta P\approx4\gamma/R\) となります。単に「気泡だから4倍」と覚えないことが大切です。
毛管現象:細い管で水が上がる理由
広い水面に細い円管を立て、管の内面を水がぬらす場合、水面が管内で上昇します。接触線の長さは \(2\pi r\) なので、表面張力の鉛直成分は \(2\pi r\gamma\cos\theta\) です。これが持ち上がった液柱の重さとつり合います。
\[h\approx\frac{2\gamma\cos\theta}{(\rho_l-\rho_g)gr}=\frac{4\gamma\cos\theta}{(\rho_l-\rho_g)gd}\]
\(r\) と \(d\) は管の内半径・内径、\(h\) は外の広い液面を基準とする液面の高さ、\(\rho_l-\rho_g\) は液体と気体の密度差です。空気の密度が水に比べて十分小さければ \(\rho_l-\rho_g\approx\rho_l\) とできます。
この式は、円形の細管、静止状態、既知の接触角、一様な表面張力を仮定し、メニスカスの体積などの小さな補正を省いた近似です。導出と補正の扱いはMITの毛管上昇の教材に整理されています。
例題3:内径1 mmの管では何cm上がる?
内径 \(d=1.0\ \mathrm{mm}\)、\(\gamma=0.072\ \mathrm{N/m}\)、\(\rho_l=1000\ \mathrm{kg/m^3}\)、\(g=9.81\ \mathrm{m/s^2}\) とします。完全にぬれる近似として \(\theta=0^\circ\) とし、空気の密度は無視します。
同じ条件で内径を0.50 mmにすると高さは約5.9 cm、内径1.0 mmのまま接触角が60°なら約1.5 cmです。細さだけでなく、ぬれ方も上昇高さを左右します。
\(\theta>90^\circ\) では \(\cos\theta<0\) となり、\(h<0\)、つまり毛管降下です。また、この式が求めるのは最終的なつり合い高さであり、そこへ到達する時間ではありません。上昇速度には粘度などが関わります。
化学工学ではどこで重要になる?
- 噴霧・乳化:液滴を細かくするには界面積を増やす必要があり、表面張力が液滴の分裂や合一に関わります。
- 吸収・抽出:気泡や液滴の大きさ、装置内のぬれ方が接触面積を左右します。接触面積だけで移動速度が決まるわけではなく、流れや移動係数も必要です。
- 沸騰・凝縮:気泡の生成や離脱、凝縮液の広がり方を考える基礎になります。
- 多孔体・膜:細孔への液体の侵入には、細孔径と接触角が関係します。
水と油の接触を利用する操作は液液抽出の基礎、表面を介した熱移動は沸騰伝熱へつながります。
よくある間違い
| 間違い | 確認すること |
|---|---|
| 表面張力の単位をPaにする | N/m。圧力差は曲率を組み合わせて求める。 |
| 接触角を気体側から測る | この記事では液体側の角度を使う。 |
| 半径の式に直径を入れる | 球形液滴は2γ/R=4γ/d。 |
| 毛管なら必ず液面が上がる | 接触角が90°より大きいと降下する。 |
| 表面張力だけでぬれ性を判断する | 固体–液体–気体の組み合わせを確認する。 |
| 毛管上昇高さから上昇時間も分かる | 静的なつり合いと、流れの速さは別問題。 |
理解度チェック
QUICK CHECK
1 / 3熱力学・物性・初級
このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。
まとめ
- 表面張力は、界面に沿う単位長さ当たりの力であり、単位はN/m。
- 同じ体積なら、小さな自由液滴は表面積を減らす球形に近づく。
- 接触角は液体側で測り、Youngの式では三つの界面の性質が関わる。
- 球形の液滴の圧力差は2γ/R。シャボン玉の二つの界面と区別する。
- 毛管上昇高さは管径と接触角に依存し、ぬれにくい条件では降下する。
かこまるの化工演習室では、化学工学の基礎分野の確認問題に取り組めます。本記事のミニテストと合わせて、理解の定着に活用してください。
参考資料
- MIT OpenCourseWare, Interfacial Phenomena, Lecture 2:表面張力の定義・Laplace圧
- 同 Lecture 4:Youngの式
- 同 Lecture 8:毛管上昇
- IAPWS R1-76(2014):水の表面張力
数値例と図解は学習用に独自に作成しました。実装置の評価では、温度・組成・表面状態に合った物性値と適用条件を確認してください。


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