化学工学の基礎を、原理・数式と直感的なイメージの両面から、初学者にもわかりやすくお届けします。
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露点(露点温度)とは、水蒸気を含む気体を冷却したとき、最初の液滴が生じる温度です。結露するかどうかは「気体全体の圧力」ではなく、気体中の水蒸気分圧と、その温度における飽和水蒸気圧を比べて判断します。
露点は天気や空調だけの用語ではありません。圧縮空気、熱交換器、配管、乾燥機、排ガス設備など、化学工学のさまざまな場面で必要になります。
この記事では、水蒸気分圧から露点を求める原理と計算手順を、モル分率・相対湿度からの例題で解説します。既存の湿り空気・絶対湿度・相対湿度・露点が湿度全体の入門編であるのに対し、今回は露点計算そのものに焦点を当てます。
- 露点で成り立つ \(p_v=p_{vs}(T_{\mathrm{dp}})\) の意味
- モル分率と全圧から水蒸気分圧を求める方法
- 飽和水蒸気圧表・Antoine式から露点を求める方法
- 相対湿度から露点へ変換する方法
- 圧力が上がると露点が高くなる理由
- 0 ℃以下、高圧、酸露点などで必要な注意
露点とは?
水蒸気を含む気体を、全圧と水分量をほぼ一定に保ったまま冷却する場合を考えます。露点に達するまでは水は気体のままなので、水蒸気分圧 \(p_v\) はほぼ一定です。一方、水の飽和水蒸気圧 \(p_{vs}(T)\) は、温度が下がるほど小さくなります。
冷却を続け、両者が一致した温度で気体は水蒸気について飽和し、凝縮が始まります。この温度が露点温度 \(T_{\mathrm{dp}}\) です。
p_v=p_{vs}(T_{\mathrm{dp}})
\]
この1本の式が、露点計算の中心です。「既知の水蒸気分圧と同じ飽和水蒸気圧を示す温度を探す」と覚えると、計算の意味を見失いません。
露点計算で使う二つの圧力
水蒸気分圧:実際に含まれる水蒸気の圧力
理想気体とみなせる混合気体では、ドルトンの分圧の法則から、水蒸気分圧は水蒸気の気相モル分率 \(y_v\) と全圧 \(P\) の積です。
p_v=y_vP
\]
例えば、水蒸気が5.0 mol%なら \(y_v=0.050\) です。分圧の考え方に不安がある場合は、先に分圧とは?ドルトンの法則とモル分率を確認してください。
飽和水蒸気圧:その温度で共存できる上限
飽和水蒸気圧 \(p_{vs}(T)\) は、液体の水と平衡にある水蒸気の圧力です。温度だけで決まる純水の物性値で、温度が高いほど大きくなります。
| 量 | 意味 | 主に何で決まるか |
|---|---|---|
| 水蒸気分圧 \(p_v\) | 実際の気体中の水蒸気が受け持つ圧力 | 水蒸気量・全圧 |
| 飽和水蒸気圧 \(p_{vs}(T)\) | その温度で液体水と平衡にある水蒸気圧 | 温度 |
露点では、この二つが一致します。したがって、露点を求める問題は「水蒸気分圧を求める段階」と「その分圧に対応する飽和温度を探す段階」に分けられます。
水蒸気分圧から露点を求める3つの方法
- 飽和水蒸気圧表:\(p_{vs}=p_v\) となる温度を表から補間する
- 湿り空気線図:状態点から湿度比一定で飽和曲線まで水平に進む
- 相関式:Antoine式やIAPWS式を逆算する
手計算では物性表、空調計算の概略把握では湿り空気線図、表計算・プログラムでは相関式が便利です。精度と適用温度範囲は、使う物性データによって異なります。
Antoine式を逆算して露点を求める
飽和蒸気圧の代表的な相関式にAntoine式があります。NIST Chemistry WebBookの水の係数では、次の形で表されます。
\log_{10}\!\left(\frac{p_{vs}}{\mathrm{bar}}\right)
=A-\frac{B}{T/\mathrm{K}+C}
\]
露点では \(p_{vs}=p_v\) なので、温度について解けば次式になります。
\frac{T_{\mathrm{dp}}}{\mathrm{K}}
=\frac{B}{A-\log_{10}(p_v/\mathrm{bar})}-C
\]
ここで \(A,B,C\) は物質と温度範囲ごとの係数です。NISTに掲載された水の係数の一例は次のとおりです。
| 温度範囲 | \(A\) | \(B\) | \(C\) |
|---|---|---|---|
| 273~303 K | 5.40221 | 1838.675 | −31.737 |
| 304~333 K | 5.20389 | 1733.926 | −39.485 |
| 334~363 K | 5.07680 | 1659.793 | −45.854 |
係数と、圧力単位・温度単位・適用範囲はセットです。上の係数では圧力はbar、温度はKです。kPaをそのまま代入したり、計算された露点が係数の温度範囲外なのに使い続けたりすると、誤った値になります。
例題1:モル分率と全圧から露点を求める
全圧 \(P=101.325\ \mathrm{kPa}\)、水蒸気モル分率 \(y_v=0.050\) の理想気体混合物について、水の露点を求めます。
手順1:水蒸気分圧を求める
p_v=y_vP
=0.050\times101.325
=5.066\ \mathrm{kPa}
\]
\[
p_v=0.0506625\ \mathrm{bar}
\]
手順2:Antoine式を逆算する
答えが304~333 Kの範囲に入ると見込み、\(A=5.20389\)、\(B=1733.926\)、\(C=-39.485\) を使います。
T_{\mathrm{dp}}
=\frac{1733.926}{5.20389-\log_{10}(0.0506625)}-(-39.485)
=306.28\ \mathrm{K}
\]
\[
T_{\mathrm{dp}}=306.28-273.15=33.13\ ^\circ\mathrm{C}
\]
答えは約33.1 ℃です。求めた306.28 Kは使用した係数の範囲内なので、係数選択にも矛盾がありません。
水蒸気分圧5.07 kPaより飽和水蒸気圧が大きい高温側では、水蒸気は未飽和です。冷却して飽和水蒸気圧が5.07 kPaまで低下する33.1 ℃で、凝縮が始まります。
例題2:温度と相対湿度から露点を求める
乾球温度30 ℃、相対湿度60%の空気の露点を求めます。30 ℃における水の飽和水蒸気圧を \(p_{vs}(30\ ^\circ\mathrm{C})=4.2469\ \mathrm{kPa}\) とします。
相対湿度 \(\phi\) は、実際の水蒸気分圧と飽和水蒸気圧の比です。
\phi=\frac{p_v}{p_{vs}(T)}
\]
手順1:相対湿度から水蒸気分圧を求める
p_v=\phi p_{vs}(T)
=0.60\times4.2469
=2.548\ \mathrm{kPa}
\]
手順2:同じ分圧になる飽和温度を求める
\(p_v=0.02548\ \mathrm{bar}\) を273~303 K用のAntoine式へ代入すると、
T_{\mathrm{dp}}\approx294.56\ \mathrm{K}
=21.41\ ^\circ\mathrm{C}
\]
露点は約21.4 ℃です。現在の30 ℃より露点が低いため、空気は未飽和です。配管や壁の表面温度が21.4 ℃を下回ると、表面で結露する可能性があります。
圧力が変わると露点はどうなる?
水蒸気のモル分率を同じに保ったまま全圧を上げると、\(p_v=y_vP\) により水蒸気分圧が上がります。より高い飽和水蒸気圧に対応する温度が必要になるため、水の露点は一般に高くなります。
例題1と同じ \(y_v=0.050\) の気体を、全圧202.65 kPaまで圧縮したとします。
p_v=0.050\times202.65=10.1325\ \mathrm{kPa}
\]
\[
T_{\mathrm{dp}}\approx46.1\ ^\circ\mathrm{C}
\]
全圧101.325 kPaでの露点33.1 ℃から、約46.1 ℃へ上がります。圧縮機では圧縮直後にガス温度も上がりますが、後段の冷却器で露点以下まで冷却すると凝縮水が生じます。圧縮空気系にドレン分離器が必要になる理由です。
\(p_v=y_vP\) に使うのはゲージ圧ではなく絶対圧です。例えば0.7 MPaGをそのまま0.7 MPaとして使わず、大気圧を加えた絶対圧へ直します。圧力と単位は単位と次元の基礎も参照してください。
露点と相対湿度の違い
| 指標 | 表すもの | 単純加熱したとき |
|---|---|---|
| 相対湿度 \(\phi\) | 現在の水蒸気分圧が、その温度の飽和値の何割か | 低下する |
| 露点 \(T_{\mathrm{dp}}\) | 現在の水蒸気分圧に対応する飽和温度 | 圧力・水分量が一定なら変わらない |
30 ℃・相対湿度60%の空気を、水分を加えずに40 ℃へ加熱すると、飽和水蒸気圧が増えるため相対湿度は下がります。しかし水蒸気分圧が変わらなければ、露点は約21.4 ℃のままです。
このため、相対湿度は「現在の温度に対してどれだけ飽和に近いか」、露点は「水蒸気が実際にどれだけ含まれているか」を温度で表す指標、と考えると整理しやすくなります。
湿量基準で水分量が与えられた場合
乾燥計算では、水分量が「乾き気体1 mol当たりの水蒸気モル数」\(Y=n_v/n_{\mathrm{dry}}\) で与えられることがあります。このとき、水蒸気の湿り基準モル分率は次式へ変換します。
y_v=\frac{n_v}{n_{\mathrm{dry}}+n_v}
=\frac{Y}{1+Y}
\]
その後、\(p_v=y_vP\) を用います。乾き基準の比 \(Y\) をそのままモル分率として全圧に掛けないように注意します。質量基準の湿度比と乾燥計算は乾燥の基礎で詳しく解説しています。
露点計算で注意すべきケース
0 ℃以下では霜点との区別が必要
0 ℃以下では、液体の水に対する飽和ではなく、氷に対する飽和を考える霜点が重要です。過冷却水に対する露点と氷に対する霜点では飽和蒸気圧が異なるため、低温乾燥や低露点計では、どちらの基準か確認します。
高圧では理想気体近似からずれる
\(p_v=y_vP\) と純水の飽和蒸気圧だけで求める方法は、低圧の希薄な水蒸気を含む気体に対する基礎近似です。高圧では気相のフガシティ、凝縮水への気体成分の溶解、Poynting補正などが必要になる場合があります。
酸露点・炭化水素露点は別の計算
燃焼排ガス中の硫酸が凝縮する酸露点や、天然ガス中の重質炭化水素が凝縮する炭化水素露点は、水蒸気だけを対象とした本記事の計算とは異なります。多成分気液平衡や反応生成物を考慮します。
入口温度が露点以下なら、すでに凝縮している
計算で得た露点が現在の気体温度より高い場合、指定された水蒸気量をすべて気相に保つことはできません。平衡に達していれば一部はすでに凝縮しており、気相組成はその温度の飽和状態まで変化しています。
化学工学ではどこで使う?
- 熱交換器・配管:壁面温度と露点を比較し、結露・腐食・保温不足を予測する
- 圧縮空気:圧力露点を確認し、後冷却器、ドレン分離、吸着乾燥機を選ぶ
- 乾燥:供給空気の水蒸気分圧と除湿能力を評価する
- 排ガス:水露点や酸露点を下回らない出口温度を検討する
- 貯槽・断熱:外表面の結露、製品への水分混入を防止する
- 凝縮器:冷却温度と圧力から、凝縮開始条件を判断する
実務では、単に気体の代表温度と露点を比べるだけでなく、最も冷たい壁面温度、局所圧力、温度分布、起動停止時の過渡状態も確認します。
露点計算の手順
- 対象が水露点か、霜点・酸露点・炭化水素露点かを確認する
- 全圧は絶対圧にそろえる
- モル分率なら \(p_v=y_vP\)、相対湿度なら \(p_v=\phi p_{vs}(T)\) で水蒸気分圧を求める
- \(p_{vs}(T_{\mathrm{dp}})=p_v\) となる温度を、表・線図・相関式から求める
- 相関式の単位と適用温度範囲を確認する
- 求めた露点を装置の壁面温度・出口温度と比較する
- 高圧・低温・高精度計算では非理想性を検討する
露点の基礎ミニテスト
QUICK CHECK
1 / 3熱力学・物性・初級
このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。
まとめ
- 露点は、水蒸気を含む気体を冷却したときに凝縮が始まる温度である
- 露点では \(p_v=p_{vs}(T_{\mathrm{dp}})\) が成り立つ
- 理想気体混合物では、水蒸気分圧は \(p_v=y_vP\) で求める
- 相対湿度からは \(p_v=\phi p_{vs}(T)\) で水蒸気分圧を求める
- 水蒸気分圧と同じ飽和水蒸気圧になる温度を、表・線図・Antoine式から探す
- 水蒸気モル分率が同じなら、全圧が上がるほど水蒸気分圧と露点は一般に高くなる
- 0 ℃以下、高圧、酸露点、炭化水素露点では、基礎式だけで判断しない
露点計算は、複雑そうに見えても「実際の水蒸気分圧を求める」「それと等しい飽和水蒸気圧になる温度を探す」という2段階です。水蒸気分圧と飽和水蒸気圧を区別できれば、結露の原理を数式と感覚の両方で理解できます。
露点は、圧力、組成、対象凝縮成分、採用する物性式によって変わります。設計・安全判断では、機器の保証条件に合う物性データを用い、必要に応じてプロセスシミュレータや露点計による確認を行ってください。
参考資料
- NIST Chemistry WebBook:Water—Antoine Equation Parameters
- IAPWS:Supplementary Release on Saturation Properties of Ordinary Water Substance
- NIST Engineering Metrology Toolbox:Water Vapor Pressure and Dew Point
- NIST Journal of Research:The Relationship Between Dew-Point Temperature and Vapor Pressure


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