沈降とは?終末沈降速度・ストークス則・沈降槽設計を例題で解説

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コップの中の泥水を静かに置くと、重い粒子は底へ沈み、上側の液体は徐々に澄んでいきます。このように、流体中の粒子を重力などの力で移動させ、粒子と流体を分ける操作が沈降です。

沈降は、排水処理の沈殿槽、鉱物スラリーの濃縮、結晶の分離、粒度測定、遠心分離などに使われます。沈降を理解する鍵は、「重い粒子ほど速く沈む」だけではありません。粒径、粒子と流体の密度差、流体の粘度、粒子濃度、装置内の流れが沈降速度を左右します。

この記事では、重力・浮力・抗力のつり合いから終末沈降速度を導き、ストークス則、粒子レイノルズ数、自由沈降と干渉沈降、沈降槽の表面積計算を例題付きで解説します。

この記事の目標

  • 沈降・清澄・濃縮の違いを説明できる
  • 粒子に働く重力、浮力、抗力を図式的に理解できる
  • ストークス則から終末沈降速度を計算できる
  • 計算後に粒子レイノルズ数を確認できる
  • 自由沈降と干渉沈降の違いを説明できる
  • 表面負荷率から沈降槽の必要面積を計算できる
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沈降とは

沈降とは、液体や気体中に分散した粒子が、重力・遠心力などを受けて流体に対して移動する現象です。ここでは、液体中で液体より密度の大きい固体粒子が重力によって下向きに移動する場合を中心に考えます。

\[
\text{粒子を含む懸濁液}
\longrightarrow
\text{清澄液}
+
\text{濃縮された粒子層}
\]

沈降操作には、主に次の二つの目的があります。

  • 清澄:上澄み液から粒子を除き、澄んだ液体を得る
  • 濃縮:底部から、固体濃度の高いスラリーを得る

同じ装置でも、清澄液の品質を重視すれば沈殿槽・清澄槽、濃縮スラリーを重視すればシックナーと呼ばれることがあります。

沈降と濾過の違い

操作 分離の駆動力・仕組み 特徴
沈降 重力または遠心力で粒子を移動させる 濾材が不要。密度差と粒径の影響が大きい
濾過 圧力差で流体を濾材へ通す 微粒子も捕集しやすいが、濾過抵抗が増える

実際の固液分離では、沈降でスラリーを濃縮してから濾過し、さらに洗浄・乾燥することがあります。沈降は後段装置の負荷を小さくする前処理にもなります。

粒子に働く三つの力

図解|粒子に働く3つの力と終末沈降速度
粒子に働く3つの力と終末沈降速度沈降する球形粒子に働く下向きの重力と上向きの浮力・流体抗力を示し、3つの力がつり合うと終末沈降速度に達すること、ストークス則では速度が粒径の2乗に比例し粘度に反比例することを示す図。沈む粒子に働く3つの力終末速度に達すると粒子重力 Fg浮力 Fb抗力 FD下向きの重力に、浮力と抗力が対抗Fg = Fb + FD合力=0 → 加速度=0一定速度で沈降するこれが終末沈降速度 vt球形・Re_p ≪ 1 のときのストークス則vt = (ρp − ρf) g dp² / (18 μ)粒径が2倍 → 速度は4倍粘度が2倍 → 速度は1/2

静止した液体中を球形粒子が下向きに沈むとき、主に次の三つの力が働きます。

向き 意味
重力 \(F_g\) 下向き 粒子自身の重さ
浮力 \(F_b\) 上向き 粒子が押しのけた流体から受ける力
抗力 \(F_D\) 運動と反対向き 粒子の運動を妨げる流体抵抗

粒子径を \(d_p\)、粒子密度を \(\rho_p\)、流体密度を \(\rho_f\)、重力加速度を \(g\) とすると、球の体積は、

\[
V_p=\frac{\pi d_p^3}{6}
\]

です。したがって、重力と浮力は、

\[
F_g
=
\frac{\pi d_p^3}{6}\rho_p g
\]

\[
F_b
=
\frac{\pi d_p^3}{6}\rho_f g
\]

となります。粒子を実際に下向きへ動かそうとする力は、重力から浮力を引いた見かけの重力です。

\[
F_g-F_b
=
\frac{\pi d_p^3}{6}
(\rho_p-\rho_f)g
\]

\(\rho_p>\rho_f\) なら粒子は沈み、\(\rho_p<\rho_f\) なら上昇する傾向があります。油滴や気泡が液中を上昇するのは、密度差の符号が逆だからです。

終末沈降速度とは

沈降を始めた直後、粒子は重力によって加速します。しかし、速度が大きくなるほど抗力も増えます。やがて、

\[
\text{見かけの重力}
=
\text{抗力}
\]

となり、粒子はほぼ一定速度で沈みます。この一定速度を終末沈降速度 \(u_t\) と呼びます。

球形粒子に働く抗力は、抗力係数 \(C_D\) を使って、

\[
F_D
=
\frac{1}{2}
C_D\rho_f A_p u_t^2
\]

と表されます。球の投影面積は、

\[
A_p=\frac{\pi d_p^2}{4}
\]

なので、

\[
F_D
=
\frac{\pi}{8}
C_D\rho_f d_p^2u_t^2
\]

です。終末速度では力がつり合うため、

\[
\frac{\pi d_p^3}{6}
(\rho_p-\rho_f)g
=
\frac{\pi}{8}
C_D\rho_f d_p^2u_t^2
\]

となります。整理すると、

\[
\boxed{
u_t
=
\sqrt{
\frac{4d_p(\rho_p-\rho_f)g}
{3C_D\rho_f}
}
}
\]

です。ただし、\(C_D\) は沈降速度に依存するため、一般にはこの式だけで直接 \(u_t\) を決められません。

粒子レイノルズ数

粒子まわりの流れが粘性支配か慣性支配かを判断する無次元数が、粒子レイノルズ数です。

\[
\boxed{
\mathrm{Re}_p
=
\frac{\rho_f u_t d_p}{\mu}
}
\]

ここで、\(\mu\) は流体の粘度です。粘度と動粘度の違いは、粘度の基礎記事で解説しています。

流動域 粒子まわりの流れ 計算の考え方
ストークス域 粘性力が支配的 \(C_D=24/\mathrm{Re}_p\) を使用
中間域 粘性力と慣性力の両方が重要 \(C_D\) の相関式を用いて反復計算
ニュートン域 慣性力が支配的 \(C_D\) がほぼ一定となる範囲がある

境界値は相関式や粒子形状で変わります。本記事では、ストークス則を使った後に \(\mathrm{Re}_p\) を計算し、十分に小さいことを確認します。

ストークス則

粒子レイノルズ数が十分に小さいとき、球形粒子の抗力係数は、

\[
C_D
=
\frac{24}{\mathrm{Re}_p}
\]

で表されます。これを終末速度の力のつり合いへ代入すると、

\[
\boxed{
u_t
=
\frac{(\rho_p-\rho_f)g d_p^2}
{18\mu}
}
\]

が得られます。これがストークス則です。

公式から読み取れること

ストークス則から、次の関係がわかります。

  • \(u_t\propto d_p^2\):粒径が2倍なら、沈降速度は4倍
  • \(u_t\propto(\rho_p-\rho_f)\):密度差が大きいほど速く沈む
  • \(u_t\propto1/\mu\):粘度が高い液体ほど沈みにくい

特に粒径は二乗で効くため、微粒子の沈降は非常に遅くなります。凝集剤によって微粒子を大きなフロックにするのは、この粒径効果を利用するためです。

ストークス則の主な前提

  • 粒子がほぼ球形で剛体である
  • 粒子が単独で、十分に広い静止流体中を沈む
  • 流体がニュートン流体である
  • 粒子レイノルズ数が十分に小さい
  • 容器壁やほかの粒子の影響が小さい
  • ブラウン運動が支配的になるほど小さな粒子ではない

NISTの粒度測定資料では、ストークス則の適用範囲として \(\mathrm{Re}_p\) が約0.25以下であることが示されています。教科書によっては、より安全側に \(\mathrm{Re}_p<0.2\) や \(\mathrm{Re}_p<0.1\) を目安とする場合もあります。

例題1:ストークス則で終末沈降速度を求める

水中を沈降する球形粒子について、終末沈降速度と1 m沈む時間を求めます。

物性・条件
粒子径 \(d_p\) \(50\,\mu\mathrm{m}=5.0\times10^{-5}\,\mathrm{m}\)
粒子密度 \(\rho_p\) \(2500\,\mathrm{kg/m^3}\)
水の密度 \(\rho_f\) \(1000\,\mathrm{kg/m^3}\)
水の粘度 \(\mu\) \(1.0\times10^{-3}\,\mathrm{Pa\,s}\)

手順1:ストークス則で仮計算する

\[
u_t
=
\frac{
(2500-1000)
\times9.80665
\times(5.0\times10^{-5})^2
}{
18\times1.0\times10^{-3}
}
\]

\[
\boxed{
u_t
=
2.04\times10^{-3}\,\mathrm{m/s}
=
2.04\,\mathrm{mm/s}
}
\]

手順2:粒子レイノルズ数を確認する

\[
\mathrm{Re}_p
=
\frac{
1000
\times2.04\times10^{-3}
\times5.0\times10^{-5}
}{
1.0\times10^{-3}
}
\]

\[
\boxed{
\mathrm{Re}_p
=
0.102
}
\]

\(\mathrm{Re}_p\) は0.2より小さいため、この例ではストークス則を使う判断は妥当です。

手順3:1 m沈む時間を求める

\[
t
=
\frac{H}{u_t}
=
\frac{1.0}{2.04\times10^{-3}}
=
4.90\times10^2\,\mathrm{s}
\]

\[
\boxed{
t
\approx
8.2\,\mathrm{min}
}
\]

この計算は、粒子が終末速度へ短時間で到達し、容器壁や粒子同士の影響を受けない理想条件での値です。

粒径が沈降速度へ与える影響

同じ密度の粒子が同じ液体中をストークス域で沈むとき、速度は粒径の二乗に比例します。

粒子径 終末沈降速度 50 \(\mu\mathrm{m}\) 粒子との比較
\(10\,\mu\mathrm{m}\) \(0.0817\,\mathrm{mm/s}\) 1/25
\(20\,\mu\mathrm{m}\) \(0.327\,\mathrm{mm/s}\) 4/25
\(50\,\mu\mathrm{m}\) \(2.04\,\mathrm{mm/s}\) 1

実際の粉体には粒径分布があります。沈降速度の分布を考えるときは、D10・D50・D90と粒径分布も重要です。

ストークス域を外れる場合

粒子が大きくなり \(\mathrm{Re}_p\) が増えると、慣性の影響が無視できなくなります。その場合は、次の手順で計算します。

  1. 終末沈降速度 \(u_t\) を仮定する
  2. \(\mathrm{Re}_p=\rho_fu_td_p/\mu\) を求める
  3. 適用範囲に合う \(C_D\) の相関式から抗力係数を求める
  4. 一般式から新しい \(u_t\) を計算する
  5. 値が収束するまで繰り返す

\[
u_t
=
\sqrt{
\frac{4d_p(\rho_p-\rho_f)g}
{3C_D\rho_f}
}
\]

非球形粒子では、球形度を含む抗力相関式や実測値を使います。大きな粒子へストークス則をそのまま外挿すると、沈降速度を誤って見積もるため注意が必要です。

自由沈降と干渉沈降

自由沈降

懸濁液が十分に薄く、粒子同士がほとんど影響しない沈降を自由沈降と呼びます。単一球を仮定するストークス則は、自由沈降の考え方です。

干渉沈降

粒子濃度が高くなると、粒子同士の流体力学的な干渉や、粒子の沈降に伴う液体の上向き流れが無視できません。そのため、懸濁液全体の沈降速度は単一粒子の速度より小さくなります。これを干渉沈降と呼びます。

単分散の球形粒子について、代表的な経験式であるRichardson–Zaki型の式は、

\[
\boxed{
u_h
=
u_t(1-\phi)^n
}
\]

です。ここで、\(u_h\) は干渉沈降速度、\(\phi\) は固体体積分率、\(n\) は粒子レイノルズ数などに依存する指数です。低レイノルズ数域では、目安として \(n\approx4.65\) が用いられることがあります。

たとえば、例題1の粒子で \(\phi=0.20\)、\(n=4.65\) と仮定すると、

\[
u_h
=
2.04
\times(1-0.20)^{4.65}
\]

\[
\boxed{
u_h
\approx
0.723\,\mathrm{mm/s}
}
\]

となり、単一粒子の沈降速度の約35%まで低下します。指数は粒子の形状、粒径分布、凝集状態などでも変わるため、実際のスラリーでは沈降試験が重要です。

沈降の四つの型

粒子の状態 特徴
独立粒子沈降 希薄で非凝集性 粒子がほぼ独立に沈む
凝集沈降 沈降中に粒子が凝集 フロックが成長し、速度が変化する
界面沈降 比較的高濃度 懸濁層が一つの界面を作って沈む
圧密沈降 粒子同士が接触する高濃度層 粒子層の自重で間隙液が押し出される

排水中のフロックや高濃度スラリーでは、単一粒子のストークス則だけで挙動を表せません。回分沈降試験で界面高さの時間変化を測り、清澄・濃縮特性を評価します。

回分沈降試験

透明なメスシリンダーなどへ均一な懸濁液を入れて静置すると、上から順に清澄液、沈降中の懸濁層、濃縮層が形成されます。清澄液と懸濁層の界面高さ \(H\) を時間 \(t\) に対して記録します。

\[
u_{\mathrm{interface}}
=
-\frac{\mathrm{d}H}{\mathrm{d}t}
\]

界面高さがほぼ直線的に低下する初期領域では、その傾きから界面沈降速度を求められます。後半になると粒子層が圧縮され、界面の低下は遅くなります。

連続沈降槽の原理

理想的な連続沈降槽では、原料懸濁液が槽内へ入り、粒子は下向きに沈み、液体は上部から流出します。

理想沈降槽のイメージ
懸濁液の流入 → 静かな沈降域 → 上部から清澄液
            ↓
        底部から濃縮スラリー

流量を \(Q\)、沈降槽の水平投影面積を \(A\) とすると、表面負荷率または表面越流速度は、

\[
\boxed{
v_o
=
\frac{Q}{A}
}
\]

です。理想的な独立粒子沈降では、沈降速度 \(u_s\) が、

\[
u_s\geq v_o
\]

を満たす粒子は槽底へ到達できると考えます。

なぜ深さではなく面積が重要なのか

幅 \(W\)、長さ \(L\)、深さ \(H\) の矩形槽を考えます。液体の水平速度を \(u_x\) とすると、

\[
u_x
=
\frac{Q}{WH}
\]

です。粒子が槽長 \(L\) を移動する時間は、

\[
t
=
\frac{L}{u_x}
=
\frac{LWH}{Q}
\]

です。この時間内に深さ \(H\) を沈む条件は、

\[
u_s t\geq H
\]

なので、

\[
u_s
\frac{LWH}{Q}
\geq
H
\]

\[
u_s
\geq
\frac{Q}{LW}
=
\frac{Q}{A}
\]

となり、深さ \(H\) が消えます。したがって、理想的な独立粒子沈降の除去性能は、主に表面積で決まります。

ただし、実装置の深さは不要という意味ではありません。滞留時間、入口・出口の乱れ、短絡流、風、スラッジ貯留、掻寄せ機構などを考えるために、十分な深さと適切な槽形状が必要です。

沈降槽の必要表面積

除去したい限界粒子の沈降速度を \(u_c\) とすると、理想槽の必要面積は、

\[
\boxed{
A
=
\frac{Q}{u_c}
}
\]

で求められます。ここでは、流量と沈降速度の時間単位をそろえることが重要です。

例題2:沈降槽の必要面積を求める

流量 \(Q=120\,\mathrm{m^3/h}\) の懸濁液を処理します。除去対象粒子の設計沈降速度を \(u_c=0.40\,\mathrm{mm/s}\) とし、必要表面積を求めます。

手順1:沈降速度の単位を変換する

\[
0.40\,\mathrm{mm/s}
=
0.00040\,\mathrm{m/s}
\]

\[
u_c
=
0.00040
\times3600
=
1.44\,\mathrm{m/h}
\]

手順2:必要面積を求める

\[
A
=
\frac{Q}{u_c}
=
\frac{120}{1.44}
\]

\[
\boxed{
A
=
83.3\,\mathrm{m^2}
}
\]

たとえば幅6 m、長さ14 mなら、

\[
A_{\mathrm{actual}}
=
6\times14
=
84\,\mathrm{m^2}
\]

です。このときの表面負荷率は、

\[
v_o
=
\frac{120}{84}
=
1.43\,\mathrm{m/h}
=
0.397\,\mathrm{mm/s}
\]

となり、設計沈降速度 \(0.40\,\mathrm{mm/s}\) をわずかに下回ります。

手順3:滞留時間を確認する

槽深さを3.0 mと仮定すると、

\[
V
=
84\times3.0
=
252\,\mathrm{m^3}
\]

\[
\boxed{
t_R
=
\frac{V}{Q}
=
\frac{252}{120}
=
2.10\,\mathrm{h}
}
\]

面積条件を満たしても、実設計では入口・出口の流れ、ピーク流量、沈降試験、スラッジ量、安全余裕、適用法規・設計基準を別途確認します。

理想沈降槽の除去率

同じ沈降速度 \(u_s\) を持つ独立粒子が入口断面に均一に分布すると仮定すると、理想除去率 \(\eta\) は、

\[
\boxed{
\eta
=
\min\left(
1,\,
\frac{u_s}{v_o}
\right)
}
\]

と表せます。\(u_s\geq v_o\) なら理想的には全量除去、\(u_s<v_o\) なら一部が流出します。

粒径分布を持つ実粒子では、粒径ごとの沈降速度と質量分率を組み合わせて全体除去率を考えます。この考え方は、分級効率と部分分離効率にもつながります。

沈降装置の種類

装置 特徴 主な用途
矩形沈降槽 一端から流入し、反対側から清澄液を取り出す 用排水処理
円形沈殿槽 中央付近から流入し、周縁から越流させる 用排水処理、汚泥分離
シックナー 掻寄せ機で底部スラリーを集める 鉱物、化学、結晶スラリーの濃縮
傾斜板・傾斜管沈降装置 多数の傾斜面で有効沈降面積を増やす 省スペースの清澄処理

傾斜板を設けると、装置の設置面積を大きくせずに沈降に使える投影面積を増やせます。ただし、粒子の滑落性、閉塞、洗浄性も考慮します。

実際の沈降速度が理論値とずれる理由

  • 非球形:角張った粒子や板状粒子は球と異なる抗力を受ける
  • 粒径分布:大粒子と微粒子で沈降速度が大きく異なる
  • 凝集・分散:フロック形成や解砕で有効粒径が変わる
  • 干渉沈降:高濃度になるほど粒子同士の影響が増える
  • 壁効果:容器が狭いと流れが制限される
  • 非ニュートン性:スラリーの見かけ粘度がせん断速度で変化する
  • 温度:温度変化で流体粘度や密度が変わる
  • 装置内流動:短絡流、乱れ、循環流で粒子が流出する

そのため、理論計算は設計の出発点です。実スラリーでは回分沈降試験、沈降管試験、パイロット試験などで挙動を確認します。

沈降計算の手順

  1. 粒子径、粒子密度、流体密度、流体粘度をそろえる
  2. 粒子が単独で沈むか、高濃度懸濁液として沈むかを確認する
  3. ストークス則などで終末沈降速度を仮計算する
  4. 粒子レイノルズ数を計算し、使用した式の適用範囲を確認する
  5. 必要なら抗力係数相関式で反復計算する
  6. 沈降槽では \(v_o=Q/A\) と沈降速度を比較する
  7. 粒径分布、凝集、干渉沈降、非理想流れを考慮する
  8. 実液の沈降試験で計算を補正する

流量や固体流量を整理するときは、物質収支の基本もあわせて確認してください。

よくある間違い

1. ストークス則を使っただけで計算を終える

計算した \(u_t\) から \(\mathrm{Re}_p\) を求め、ストークス域にあることを必ず確認します。

2. 粒径の単位を変換しない

\[
1\,\mu\mathrm{m}
=
1\times10^{-6}\,\mathrm{m}
\]

です。ストークス則では粒径を二乗するため、単位換算ミスの影響が非常に大きくなります。

3. 粒子密度だけを使う

沈降の駆動力は \(\rho_p\) ではなく、密度差 \(\rho_p-\rho_f\) に比例します。

4. 高濃度スラリーにも単一粒子速度を使う

粒子濃度が高い場合は干渉沈降や界面沈降となり、単一粒子より遅くなります。

5. 沈降槽は深くすれば除去率が上がると考える

理想的な独立粒子沈降では、除去の基本条件は \(u_s\geq Q/A\) であり、表面積が重要です。深さは滞留時間や非理想流れ、スラッジ貯留などの観点から決めます。

6. 沈降速度と流量の単位をそろえない

\(Q\) が \(\mathrm{m^3/h}\) なら、\(u_c\) も \(\mathrm{m/h}\) にそろえてから \(A=Q/u_c\) を使います。

確認問題

3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。

QUICK CHECK

1 / 3

分離工学・初級

このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。

まとめ

  • 沈降は、粒子と流体の密度差を利用して固液を分離する操作
  • 終末沈降速度では、見かけの重力と流体抗力がつり合う
  • ストークス域では \(u_t=(\rho_p-\rho_f)gd_p^2/(18\mu)\)
  • ストークス則を使った後は、\(\mathrm{Re}_p=\rho_fu_td_p/\mu\) を確認する
  • 沈降速度は粒径の二乗、密度差に比例し、粘度に反比例する
  • 高濃度懸濁液では干渉沈降により沈降速度が低下する
  • 理想沈降槽の基本は \(v_o=Q/A\) で、必要面積は \(A=Q/u_c\)
  • 実設計では粒径分布、凝集、短絡流、スラッジ、沈降試験を考慮する
次に学ぶ内容
次の記事では、濾材とケークの抵抗、Darcy則、定圧濾過式を使って、濾過時間を求める方法を解説します。

参考資料

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