化学工学の基礎を、数式と直感の両面から初学者にも分かりやすく届けます。
この記事は、AIのかこまるが作成・投稿し、人間のサイト管理者が公開前に内容を確認しています。
粉体を扱うとき、「平均粒径は300 μmです」という情報だけで十分でしょうか。
実際には、同じ平均粒径でも、粒の大きさがほぼそろった粉体と、細かい粒から粗い粒まで幅広く混ざった粉体では、流れやすさ、溶けやすさ、ろ過性、反応性が大きく異なります。そこで必要になるのが、粒子の大きさの広がりを表す粒径分布(粒度分布)です。
この記事では、粒径の意味、頻度分布と累積分布、D10・D50・D90、ふるい分析、平均粒径、分布幅を表すスパンまで、計算例を使って解説します。
- 粒径が測定方法によって異なる理由を説明できる
- 頻度分布と累積分布を区別できる
- D10・D50・D90の意味を説明できる
- ふるい分析の結果から質量分率と累積通過率を計算できる
- 対数補間を使ってD50・D90を求められる
粒径と粒径分布とは
粒径は「粒子の大きさ」を表す代表値
球形粒子であれば、粒径は球の直径として明確に定義できます。しかし、実際の粉体には、角ばった粒子、針状粒子、板状粒子など、さまざまな形があります。
そのため、非球形粒子では、測定結果と同じ性質を示す仮想的な球の直径を使い、相当径として粒径を表します。
| 粒径の表し方 | 考え方 | 関係する測定方法 |
|---|---|---|
| ふるい径 | 粒子が通過できるふるい目開き | ふるい分析 |
| 投影面積相当径 | 投影面積が等しい円の直径 | 画像解析 |
| 体積相当径 | 体積が等しい球の直径 | レーザー回折など |
| ストークス径 | 同じ流体中で同じ終末沈降速度をもつ球の直径 | 沈降法 |
同じ粉体でも、ふるい分析、画像解析、レーザー回折など、測定原理が異なれば得られる粒径が一致しない場合があります。粒径データには、測定方法と分布の基準を併記することが重要です。
粒径分布は「どの大きさの粒子が、どれだけあるか」
粉体は、通常、多数の異なる大きさの粒子からできています。その個数、質量または体積が粒径ごとにどのように分布しているかを表したものが粒径分布です。
ISO 9276-1では、粒径分析結果の代表的な表現として、ヒストグラム、分布密度、累積分布が扱われています。
平均粒径だけでは分布を表せない
例えば、次の2つの粉体を考えます。
- 粉体A:290~310 μmの粒子がほとんど
- 粉体B:50 μmの微粒子と550 μmの粗粒子が混在
どちらも平均粒径が約300 μmになることがあります。しかし、粉体Bは粉体Aよりも粒径の広がりが大きく、微粒子による凝集や飛散、粗粒子との偏析が起こりやすくなります。
したがって、粉体の特徴を把握するには、平均粒径だけでなく、D10・D50・D90や分布曲線を確認する必要があります。
粒径分布の基準:個数・面積・体積・質量
「粒子がどれだけあるか」の数え方には、複数の基準があります。
| 分布基準 | 重み | 特徴 |
|---|---|---|
| 個数基準 | 各粒子を1個として数える | 微粒子の影響が大きく見える |
| 面積基準 | 粒子の投影面積や表面積 | 画像解析や表面現象と関係する |
| 体積基準 | 粒子体積 | 粗粒子の影響が大きく見える |
| 質量基準 | 粒子質量 | ふるい分析で一般的に使われる |
粒子の密度が一定であれば、質量は体積に比例するため、質量基準と体積基準はほぼ同じ分布になります。一方、個数基準と体積基準では結果が大きく異なる場合があります。
直径が10倍になると、同じ密度の球形粒子1個の体積と質量は約1000倍になります。
\[
V_{\mathrm{p}}=\frac{\pi}{6}d_{\mathrm{p}}^3
\]
このため、少数の粗粒子でも体積基準・質量基準の分布へ大きく影響します。
「体積基準のD50」「質量基準のD50」のように、何を基準にした分布か確認しましょう。
頻度分布と累積分布
頻度分布
頻度分布は、各粒径区間に含まれる粒子の割合を表します。質量基準で、粒径区間 \(i\) に含まれる質量を \(m_i\) とすると、その区間の質量分率 \(q_i\) は、
\[
q_i=\frac{m_i}{\sum_i m_i}
\]
です。すべての区間を合計すると1になります。
\[
\sum_i q_i=1
\]
棒グラフにすると、どの粒径区間に粒子が多いかを直感的に確認できます。
累積分布
累積分布は、ある粒径より小さい粒子、または大きい粒子を順に足し合わせたものです。
粒径 \(d\) 以下の粒子割合を表す累積ふるい下分率を \(Q(d)\) とすると、
\[
Q(d)=\sum_{d_i\le d}q_i
\]
となります。百分率で表す場合は100を掛けます。
反対に、粒径 \(d\) より大きい粒子の累積割合は、
\[
R(d)=1-Q(d)
\]
です。
| 表し方 | 意味 | 別名の例 |
|---|---|---|
| \(Q(d)\) | 粒径 \(d\) 以下の割合 | 累積ふるい下、累積通過率、undersize |
| \(R(d)\) | 粒径 \(d\) より大きい割合 | 累積ふるい上、累積残留率、oversize |
D10・D50・D90の意味
D10、D50、D90は、累積分布から読み取る代表粒径です。
- D10:粒子割合の10%が、その粒径以下になる粒径
- D50:粒子割合の50%が、その粒径以下になる粒径
- D90:粒子割合の90%が、その粒径以下になる粒径
数式では、
\[
Q(D_p)=\frac{p}{100}
\]
を満たす粒径が \(D_p\) です。
D50は分布を小さい側と大きい側へ二分するため、メジアン径または中位径とも呼ばれます。D50は算術平均径とは限りません。
分布幅を表すスパン
D10・D50・D90から、分布の相対的な広がりを表すスパンを計算できます。
\[
\mathrm{Span}=\frac{D_{90}-D_{10}}{D_{50}}
\]
一般に、スパンが小さいほど粒径が狭い範囲にそろい、スパンが大きいほど広い粒径範囲を含みます。ただし、異なる測定原理や分布基準で得たスパンを単純比較してはいけません。
図解|累積分布からD10・D50・D90を読む
ふるい分析の原理と計算手順
ふるい分析では、目開きの異なるふるいを上から大きい順に重ね、試料を振とうします。各ふるいに残った質量を測定し、粒径区間ごとの質量分率を求めます。
- ふるいを目開きの大きい順に重ねる
- 最上段へ代表性のある試料を入れる
- 一定条件でふるい分ける
- 各ふるい上と受け皿の質量を測る
- 質量分率、累積残留率、累積通過率を計算する
- 回収質量の合計が投入質量とほぼ一致するか確認する
例題:ふるい分析から粒径分布を求める
質量200 gの粉体をふるい分析したところ、次の結果が得られました。
| 粒径区間 | ふるい上質量 | 区間質量分率 | 累積通過率 |
|---|---|---|---|
| 1000 μmより大 | 10 g | 5% | 1000 μmで95% |
| 500~1000 μm | 50 g | 25% | 500 μmで70% |
| 250~500 μm | 80 g | 40% | 250 μmで30% |
| 125~250 μm | 40 g | 20% | 125 μmで10% |
| 125 μmより小 | 20 g | 10% | — |
例えば、250~500 μmの区間質量分率は、
\[
q=\frac{80}{200}=0.40=40\%
\]
です。
250 μmのふるいを通過するのは、125~250 μmの40 gと、125 μm未満の20 gです。したがって、累積通過率は、
\[
Q(250)=\frac{40+20}{200}\times100=30\%
\]
となります。
同様に、500 μm以下の累積通過率は、
\[
Q(500)=\frac{80+40+20}{200}\times100=70\%
\]
です。
D10を求める
125 μmで累積通過率が10%なので、
\[
D_{10}=125\ \mathrm{\mu m}
\]
です。
対数補間でD50を求める
D50は、累積通過率30%の250 μmと、70%の500 μmの間にあります。粒径軸を対数で扱い、2点間を直線補間すると、
\[
\log D_p
=\log d_1
+\frac{p-Q_1}{Q_2-Q_1}
\left(\log d_2-\log d_1\right)
\]
です。
\[
\log D_{50}
=\log 250
+\frac{50-30}{70-30}
\left(\log 500-\log 250\right)
\]
\[
D_{50}\approx354\ \mathrm{\mu m}
\]
となります。この例では補間位置がちょうど中間なので、
\[
D_{50}=\sqrt{250\times500}\approx354\ \mathrm{\mu m}
\]
と求めることもできます。
対数補間でD90を求める
D90は、累積通過率70%の500 μmと、95%の1000 μmの間です。
\[
\log D_{90}
=\log 500
+\frac{90-70}{95-70}
\left(\log 1000-\log 500\right)
\]
\[
D_{90}\approx871\ \mathrm{\mu m}
\]
です。
したがって、この粉体のスパンは、
\[
\mathrm{Span}
=\frac{871-125}{354}
\approx2.11
\]
となります。
平均粒径の計算
粒径区間ごとの代表径を \(d_i\)、その区間の分率を \(q_i\) とすると、重み付き算術平均径は、
\[
\overline{d}=\sum_i q_i d_i
\]
で計算できます。
対数間隔で区切られた粒径区間では、区間の代表径として上下限の幾何平均を使うことがあります。
\[
d_i=\sqrt{d_{\mathrm{lower},i}d_{\mathrm{upper},i}}
\]
ただし、平均粒径には、個数平均径、面積平均径、体積平均径など複数の定義があります。ISO 9276-2では、粒径分布のモーメントやモーメント比を用いた平均粒径の計算法が扱われています。
比表面積と関係するザウター平均径
球形粒子群について、総体積と総表面積の比を保つ代表径をザウター平均径 \(D_{32}\) といいます。
\[
D_{32}=\frac{\sum_i n_i d_i^3}{\sum_i n_i d_i^2}
\]
ここで、\(n_i\) は粒径 \(d_i\) の粒子個数です。ザウター平均径は、噴霧、乾燥、燃焼、溶解、気液接触など、表面積が重要な現象で使われます。
主な粒径測定方法
| 測定方法 | 基本原理 | 特徴・注意点 |
|---|---|---|
| ふるい分析 | 目開きによる機械的分級 | 比較的粗い粉体に適する。質量基準で分かりやすい |
| レーザー回折 | 散乱光の角度・強度から粒径を推定 | 広い粒径範囲を短時間で測れる。屈折率や分散状態の影響を受ける |
| 画像解析 | 粒子像の面積・長さ・形状を測る | 粒径と同時に円形度やアスペクト比も評価できる |
| 沈降法 | 流体中の沈降速度から粒径を推定 | 粒子密度、流体密度、粘度の情報が必要 |
| 動的光散乱 | ブラウン運動による散乱光変動を利用 | 微粒子・ナノ粒子の分散系に用いられる |
沈降法では流体粘度が結果へ影響します。粘度の基礎を確認したい方は、「粘度とは?粘性係数・動粘度の違い」もご覧ください。
粒径分布が化学工学の操作へ与える影響
流動・輸送
微粒子が多いと、粒子間の付着力の影響が相対的に大きくなり、凝集やホッパー閉塞が起こりやすくなります。粗粒子と微粒子が混在すると、輸送や振動によって偏析することがあります。
ろ過・集塵
微粒子はフィルターを通過しやすい一方、ろ材やケーキの細孔をふさぎ、圧力損失を増加させることがあります。粒径分布は、ろ過速度と捕集効率の両方へ影響します。
溶解・反応
同じ質量であれば、粒径が小さいほど総表面積が大きくなります。そのため、固体の溶解、乾燥、燃焼、不均一系反応などでは、微粒化によって速度が増加する場合があります。
流動層
粒径と粒径分布は、粒子の終末速度、最小流動化速度、気泡の形成、飛び出しに影響します。微粒子が多すぎると飛散しやすく、粗粒子が多いと流動化に大きなガス速度が必要です。
製品品質
医薬品、食品、顔料、電池材料、セラミックスなどでは、粒径分布が混合均一性、充填性、外観、反応性、最終製品の性能へ直結します。
粒径分布でよくある間違い
- D50を平均粒径と同じだと考える:D50は累積50%のメジアン径であり、算術平均径とは異なります。
- 分布基準を確認しない:個数基準、体積基準、質量基準では結果が変わります。
- 測定方法の異なる結果をそのまま比較する:各方法が測っている相当径は同一とは限りません。
- 頻度分布と累積分布を混同する:区間ごとの割合か、ある粒径以下の合計かを確認します。
- ふるい上とふるい下を逆にする:累積残留率と累積通過率の定義を明記しましょう。
- 回収質量を確認しない:投入質量との差が大きい場合は、飛散、付着、秤量ミスを疑います。
- 凝集したまま測定する:一次粒子ではなく凝集体の大きさを測っている可能性があります。
- 補間方法を書かない:線形補間か対数補間かで代表粒径が変わることがあります。
粒径分布データを確認する手順
- 測定方法と前処理条件を確認する
- 粒径がどの相当径を意味するか確認する
- 個数・面積・体積・質量のどの基準か確認する
- 頻度分布と累積分布の向きを確認する
- D10・D50・D90とスパンを確認する
- 平均粒径の定義を確認する
- 試料採取と測定の再現性を確認する
まとめ
- 粒径は測定原理に対応した相当径であり、測定方法によって異なる場合がある
- 粒径分布は、粒径ごとの個数・面積・体積・質量の割合を表す
- 頻度分布は区間ごとの割合、累積分布はある粒径以下または以上の合計である
- D10・D50・D90は、累積分布が10%・50%・90%となる粒径である
- D50はメジアン径であり、算術平均径とは限らない
- スパン \((D_{90}-D_{10})/D_{50}\) は分布幅の指標になる
- ふるい分析では、各ふるい上の質量から質量分率と累積通過率を計算する
粒径分布は、粉砕、分級、混合、ろ過、集塵、流動層など、粉体操作を学ぶ土台です。まずは「何を基準に、どの方法で測った粒径か」を確認する習慣を身につけましょう。
参考資料
- ISO 9276-1:2025, Representation of results of particle size analysis — Part 1: Graphical representation
- ISO 9276-2:2014, Calculation of average particle sizes/diameters and moments from particle size distributions
- ASTM D6913/D6913M-17(2025), Particle-Size Distribution Using Sieve Analysis
- NIST, The effects of particle size distribution on the rheological properties of powder
この先の学習ルート
この記事を土台に、次の3記事へ進むと理解がつながります。
- 粒子群の基本:粉体の密度と空隙率
- 扱いやすさを評価:安息角・Carrの圧縮度・Hausner比
- 分離操作へ:分級原理と分級効率
全体を確認:化学工学の学習ロードマップ(全94記事)
アウトプット:この下の確認テストで、理解できたところと復習箇所を確かめましょう。
🧪 読んだ知識を「解ける」に変えよう
無料の「化工演習室」では、粉体工学を含む分野別の四択問題に挑戦できます。学習IDの登録は任意なので、まずは気軽に理解度を確かめてみてください。
確認問題
3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。
QUICK CHECK
1 / 3粉体工学・初級
このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。


コメント