Biot数と集中熱容量法とは?物体の加熱・冷却時間を例題で解説

内部温度が一様な球から周囲へ熱が移動し、温度差が指数的に減少する集中熱容量法の模式図 伝熱工学
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熱い金属球を空気中で冷やすとき、表面と中心の温度は同じと考えてよいのでしょうか。それとも、表面だけが先に冷え、中心には高い温度が残るのでしょうか。

この判断に使う無次元数がBiot数(ビオ数)です。Biot数が十分に小さければ、物体内部の温度差を無視し、物体全体を一つの温度 \(T(t)\) で表す集中熱容量法を使えます。すると、偏微分方程式である熱伝導方程式を解かなくても、加熱・冷却時間を指数関数で計算できます。

この記事では、Biot数の物理的意味、代表長さ \(L_c=V/A_s\) の求め方、\(\mathrm{Bi}<0.1\) の判定、集中熱容量法の導出、時定数、Fourier数との関係を、加熱と冷却の例題を使って解説します。

この記事でわかること

  • Biot数 \(\mathrm{Bi}=hL_c/k_s\) が比較する二つの熱抵抗
  • 集中熱容量法で使う代表長さ \(L_c=V/A_s\) の求め方
  • \(\mathrm{Bi}<0.1\) が意味することと、その限界
  • 物体全体のエネルギー収支から指数解を導く手順
  • 時定数 \(\tau=\rho c_pV/(hA_s)\) の物理的意味
  • 目標温度へ達する加熱・冷却時間の計算方法
  • Biot数とFourier数の関係 \(\mathrm{Bi}\,\mathrm{Fo}=t/\tau\)
  • 集中熱容量法を使ってはいけない条件

熱伝導方程式と境界条件を先に確認したい方は、Fourierの法則と熱伝導方程式を参照してください。本記事では、その方程式を空間方向に解かず、物体全体の収支へ簡略化できる条件に焦点を当てます。

図解|Biot数で集中熱容量法を判定
Biot数で集中熱容量法を判定物体内部の熱伝導抵抗と表面の対流熱抵抗を比較する。Biot数で集中熱容量法を判定物体内部の熱伝導抵抗と表面の対流熱抵抗を比較する。1内部伝導熱伝導率 k温度差を小さくする2Bi = hLc/k二つの抵抗の比小さいほど内部一様3表面対流熱伝達係数 h周囲へ放熱POINTBi < 0.1 が目安なら物体内温度を一様とみなし、集中熱容量法を使える式・図の記号は記事本文の定義と対応しています
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Biot数とは

物体表面と周囲流体の間で対流伝熱が起こるとき、熱移動には大きく二つの段階があります。

  1. 物体内部を熱伝導で移動する
  2. 物体表面と周囲流体の間を対流で移動する

Biot数は、物体内部の熱伝導抵抗と、表面外側の対流伝熱抵抗の比を表します。

\[
\boxed{
\mathrm{Bi}=\frac{hL_c}{k_s}
}
\]
記号 意味 SI単位
\(\mathrm{Bi}\) Biot数 無次元
\(h\) 物体表面と周囲流体の熱伝達係数 \(\mathrm{W/(m^2\,K)}\)
\(L_c\) 代表長さ \(\mathrm{m}\)
\(k_s\) 物体側の熱伝導率 \(\mathrm{W/(m\,K)}\)

内部熱伝導抵抗と外部対流抵抗を、面積基準で概略的に、

\[
R_{\mathrm{cond}}\sim\frac{L_c}{k_sA_s}
\qquad
R_{\mathrm{conv}}=\frac{1}{hA_s}
\]

と表すと、その比は、

\[
\frac{R_{\mathrm{cond}}}{R_{\mathrm{conv}}}
\sim
\frac{L_c/(k_sA_s)}{1/(hA_s)}
=\frac{hL_c}{k_s}
=\mathrm{Bi}
\]

となります。

平板・円筒壁の熱伝導抵抗と対流熱抵抗の計算は、平板・円筒壁・多層壁の熱伝導で詳しく解説しています。

Biot数を一言で表すと
物体内部の熱伝導が、表面での対流伝熱に比べて十分速いかを判定する数です。Biot数が小さいほど、物体内部の温度差を無視しやすくなります。

Biot数が小さい場合

\(k_s\) が大きい、物体が小さい、または \(h\) が小さいとBiot数は小さくなります。このとき、物体内部では熱がすばやく広がる一方、表面から周囲へ熱を出し入れする過程が相対的に遅くなります。

そのため、ある瞬間の中心温度と表面温度の差が小さく、物体全体を一つの温度で近似できます。

Biot数が大きい場合

\(k_s\) が小さい、物体が大きい、または \(h\) が大きいとBiot数は大きくなります。表面温度が周囲流体へ近づいても、中心には初期温度の影響が残り、物体内部に無視できない温度分布が生じます。

この場合、物体全体を一つの温度で表すことはできません。位置と時間の両方に依存する熱伝導方程式、Heisler線図、解析解、または数値計算を使います。

Biot数は物性値ではない

Biot数は、材料だけで決まる値ではありません。熱伝導率 \(k_s\) に加えて、物体の形と大きさ、熱交換する表面積、流体、流速などで変化する熱伝達係数 \(h\) を含みます。

同じアルミニウム球でも、直径を大きくする、空気から水へ移す、流速を上げる、といった変化でBiot数は変わります。熱伝達係数の考え方は、移動係数と移動抵抗で詳しく整理しています。

計算に必要な熱伝導率、密度、比熱、熱拡散率の違いは、化学工学で使う代表的な物性値を参考にしてください。

代表長さは \(L_c=V/A_s\) で求める

集中熱容量法の適用判定では、一般に代表長さを、

\[
\boxed{
L_c=\frac{V}{A_s}
}
\]

と定義します。ここで \(V\) は物体の体積、\(A_s\) は周囲と熱交換する表面積です。

形状と伝熱面 体積 \(V\) 伝熱面積 \(A_s\) 代表長さ \(L_c\)
厚さ \(2L\) の平板
両広面から伝熱
\(2LA\) \(2A\) \(L\)
半径 \(R\) の長い円柱
側面から伝熱
\(\pi R^2\ell\) \(2\pi R\ell\) \(R/2\)
半径 \(R\) の球
全面から伝熱
\(4\pi R^3/3\) \(4\pi R^2\) \(R/3\)
一辺 \(a\) の立方体
6面から伝熱
\(a^3\) \(6a^2\) \(a/6\)
表面積には実際に熱交換する面だけを含める
断熱された面、対称面、治具へ完全に覆われている面などは、周囲流体との対流伝熱面積へ含めません。たとえば厚さ \(2L\) の平板で片面だけが対流にさらされるなら、端面を無視すると \(L_c=2L\) です。

非定常熱伝導の厳密解やHeisler線図では、平板の半厚さ \(L\)、円柱・球の半径 \(R\) を代表長さとする資料もあります。同じ「Biot数」という名前でも、式ごとに代表長さの定義を確認してください。

集中熱容量法の目安は \(\mathrm{Bi}<0.1\)

工学上の目安として、

\[
\boxed{
\mathrm{Bi}<0.1
}
\]

なら、物体内部の温度を空間的に一様とみなし、集中熱容量法を適用することが一般的です。

ただし、0.1は自然法則による絶対的な境界ではありません。NPTELの講義資料では、平板の例で \(\mathrm{Bi}=0.1\) のとき中心と表面の差が約5%になることから、この目安を説明していますが、同時にthumb rule、すなわち経験的な目安であることも明記しています。

形状、時刻、境界条件、物性値の変化、必要精度によって誤差は変わります。\(\mathrm{Bi}\) が0.1付近にある場合や、高精度が必要な場合は、集中熱容量法と厳密解または数値解を比較してください。

Biot数が小さいことは「冷却が速い」という意味ではない

Biot数が小さいことは、物体内部の温度差が小さいことを表します。冷却や加熱の絶対的な速さは、後述する時定数 \(\tau\) で決まります。

たとえば、熱伝達係数 \(h\) が非常に小さい空気中ではBiot数は小さくなりやすい一方、表面から熱が逃げにくいため、冷却には長い時間がかかることがあります。

集中熱容量法とは

集中熱容量法は、物体内部の温度を位置によらず一様な \(T(t)\) とみなし、物体全体を一つの熱容量として扱う方法です。英語ではlumped capacitance method、lumped thermal capacity methodと呼ばれ、集中定数法、集中容量法と表記されることもあります。

「温度が一様」の意味
ある瞬間には中心も表面も同じ温度と近似しますが、その温度は時間とともに変化します。「空間的に一様」であって、「時間的に一定」ではありません。

基本となる仮定は次のとおりです。

  • 物体内部の温度差を無視できる
  • 周囲流体温度 \(T_\infty\) が一定である
  • 熱伝達係数 \(h\) が一定である
  • 密度 \(\rho\)、比熱 \(c_p\)、熱伝導率 \(k_s\) を一定とみなせる
  • 内部発熱、化学反応、相変化がない
  • 放射伝熱を無視できるか、一定の有効熱伝達係数へ線形化できる

エネルギー収支から温度変化を導く

温度 \(T(t)\) の物体が、一定温度 \(T_\infty\) の流体中で冷却される場合を考えます。Newtonの冷却則による、物体から周囲へ出る伝熱速度は、

\[
\dot Q_{\mathrm{out}}
=hA_s\left(T-T_\infty\right)
\]

です。

物体の顕熱の減少速度は、物性一定なら、

\[
-\frac{dU}{dt}
=-\rho c_pV\frac{dT}{dt}
\]

です。物体全体のエネルギー収支、

物体内エネルギーの減少速度 = 表面から出る伝熱速度

より、

\[
\boxed{
\rho c_pV\frac{dT}{dt}
=-hA_s\left(T-T_\infty\right)
}
\]

を得ます。これは温度に関する一次の常微分方程式です。

周囲との温度差を、

\[
\theta=T-T_\infty
\]

と置くと、\(T_\infty\) 一定なので、

\[
\frac{d\theta}{dt}
=-\frac{hA_s}{\rho c_pV}\theta
\]

となります。初期条件 \(T(0)=T_i\) を使って積分すると、

\[
\boxed{
\frac{T(t)-T_\infty}{T_i-T_\infty}
=\exp\left(
-\frac{hA_st}{\rho c_pV}
\right)
}
\]

を得ます。

加熱でも冷却でも同じ式を使える

冷却では \(T_i>T_\infty\) なので温度差は正です。加熱では \(T_i<T_\infty\) なので、分子と分母はともに負になります。比は正のままなので、同じ式を使えます。

温度を直接求める形にすると、

\[
\boxed{
T(t)=T_\infty+\left(T_i-T_\infty\right)e^{-t/\tau}
}
\]

です。

時定数とは

指数部に現れる時間を、時定数 \(\tau\) と定義します。

\[
\boxed{
\tau
=\frac{\rho c_pV}{hA_s}
=\frac{mc_p}{hA_s}
=\frac{\rho c_pL_c}{h}
}
\]

この式を使うと、温度応答は、

\[
\boxed{
\frac{T(t)-T_\infty}{T_i-T_\infty}
=e^{-t/\tau}
}
\]

と簡潔に表せます。

熱容量を \(C_{\mathrm{th}}=\rho c_pV\)、対流熱抵抗を \(R_{\mathrm{conv}}=1/(hA_s)\) とすれば、

\[
\boxed{
\tau=R_{\mathrm{conv}}C_{\mathrm{th}}
}
\]

です。電気回路のRC時定数と同じ形になっています。

この指数応答は、プロセス制御で扱う一次遅れ系と同じ数学的構造です。一次遅れと時定数の制御上の意味は、フィードバック制御とPID制御の基礎でも確認できます。

経過時間 残っている初期温度差 最終温度までの変化達成率
\(t=\tau\) \(e^{-1}=36.8\%\) 63.2%
\(t=2\tau\) \(e^{-2}=13.5\%\) 86.5%
\(t=3\tau\) \(e^{-3}=4.98\%\) 95.0%
\(t=4.605\tau\) 1.00% 99.0%
\(t=5\tau\) 0.674% 99.3%
3時定数で完全に平衡になるわけではない
\(3\tau\) では最終変化量の約95%、\(5\tau\) では約99.3%へ到達します。指数関数は周囲温度へ漸近するため、理想式の上では有限時間で完全に一致しません。

温度センサーの応答遅れも、センサーを集中熱容量系とみなすことで一次遅れとして近似できます。実際の測温への応用は、熱電対・測温抵抗体・放射温度計の原理と選び方で解説しています。

目標温度へ達する時間を求める

目標温度を \(T_{\mathrm{target}}\) とすると、指数解を時間について解き、

\[
\boxed{
t
=-\tau\ln\left(
\frac{T_{\mathrm{target}}-T_\infty}
{T_i-T_\infty}
\right)
}
\]

を得ます。目標温度が初期温度と周囲温度の間にあれば、分子と分母は同符号で、その比は0から1の間になります。

目標温度を周囲温度と完全に同じ値へ設定すると、対数の中が0になり、理想式では必要時間が無限大になります。実際の設計では、「周囲温度との差が1 K以下」「最終変化量の99%」のように許容差を決めます。

計算例1:アルミニウム球の加熱時間

初期温度 \(T_i=20\ ^{\circ}\mathrm{C}\) のアルミニウム球を、温度 \(T_\infty=100\ ^{\circ}\mathrm{C}\) の流体中で加熱します。次の代表値を使い、球が \(80\ ^{\circ}\mathrm{C}\) へ達する時間を求めます。

  • 半径:\(R=15.0\ \mathrm{mm}=0.0150\ \mathrm{m}\)
  • 熱伝達係数:\(h=60.0\ \mathrm{W/(m^2\,K)}\)
  • アルミニウムの熱伝導率:\(k_s=205\ \mathrm{W/(m\,K)}\)
  • 密度:\(\rho=2700\ \mathrm{kg/m^3}\)
  • 比熱:\(c_p=900\ \mathrm{J/(kg\,K)}\)

手順1:代表長さを求める

球の代表長さは、

\[
L_c=\frac{V}{A_s}=\frac{R}{3}
=\frac{0.0150}{3}
=0.00500\ \mathrm{m}
\]

です。

手順2:Biot数で適用可否を確認する

\[
\begin{aligned}
\mathrm{Bi}
&=\frac{hL_c}{k_s}\\
&=\frac{(60.0)(0.00500)}{205}\\
&=1.46\times10^{-3}
\end{aligned}
\]

\(\mathrm{Bi}<0.1\) なので、集中熱容量法を適用できます。

手順3:時定数を求める

\[
\begin{aligned}
\tau
&=\frac{\rho c_pL_c}{h}\\
&=\frac{(2700)(900)(0.00500)}{60.0}\\
&=202.5\ \mathrm{s}
\end{aligned}
\]

手順4:目標温度までの時間を求める

無次元温度差は、

\[
\frac{T_{\mathrm{target}}-T_\infty}{T_i-T_\infty}
=\frac{80-100}{20-100}
=0.250
\]

です。したがって、

\[
\begin{aligned}
t
&=-\tau\ln(0.250)\\
&=-(202.5)\ln(0.250)\\
&=280.7\ \mathrm{s}\\
&=4.68\ \mathrm{min}
\end{aligned}
\]

\[
\boxed{
t=281\ \mathrm{s}\approx4.68\ \mathrm{min}
}
\]

確認として、300秒後の温度は、

\[
T(300)
=100+(20-100)e^{-300/202.5}
=81.8\ ^{\circ}\mathrm{C}
\]

となり、目標温度80 ℃へ達する時刻が300秒より少し前であることと整合します。

計算例2:鋼球の冷却時間

初期温度 \(200\ ^{\circ}\mathrm{C}\)、半径 \(R=10.0\ \mathrm{mm}\) の鋼球を、\(20\ ^{\circ}\mathrm{C}\) の流体中で冷却します。\(60\ ^{\circ}\mathrm{C}\) へ達する時間を求めます。

\[
h=100\ \mathrm{W/(m^2\,K)},\quad
k_s=45\ \mathrm{W/(m\,K)},\quad
\rho=7800\ \mathrm{kg/m^3},\quad
c_p=460\ \mathrm{J/(kg\,K)}
\]

球の代表長さは、

\[
L_c=\frac{R}{3}
=\frac{0.0100}{3}
=3.333\times10^{-3}\ \mathrm{m}
\]

です。Biot数は、

\[
\mathrm{Bi}
=\frac{(100)(3.333\times10^{-3})}{45}
=7.41\times10^{-3}
\]

なので、集中熱容量法を使えます。

時定数は、

\[
\begin{aligned}
\tau
&=\frac{\rho c_pL_c}{h}\\
&=\frac{(7800)(460)(3.333\times10^{-3})}{100}\\
&=119.6\ \mathrm{s}
\end{aligned}
\]

です。目標温度での温度差比は、

\[
\frac{60-20}{200-20}
=\frac{40}{180}
=0.2222
\]

なので、

\[
\begin{aligned}
t
&=-(119.6)\ln(0.2222)\\
&=179.9\ \mathrm{s}\\
&\approx3.00\ \mathrm{min}
\end{aligned}
\]

\[
\boxed{
t\approx180\ \mathrm{s}=3.00\ \mathrm{min}
}
\]

Biot数が大きい場合:食品球と金属球の比較

半径 \(R=30\ \mathrm{mm}\)、熱伝達係数 \(h=25\ \mathrm{W/(m^2\,K)}\) の球を考えます。代表長さは \(L_c=R/3=0.010\ \mathrm{m}\) です。

アルミニウムを \(k_s=205\ \mathrm{W/(m\,K)}\) とすると、

\[
\mathrm{Bi}_{\mathrm{Al}}
=\frac{(25)(0.010)}{205}
=1.22\times10^{-3}
\]

で、集中熱容量法を使えます。

一方、食品の代表的な熱伝導率として \(k_s=0.50\ \mathrm{W/(m\,K)}\) を仮定すると、

\[
\mathrm{Bi}_{\mathrm{food}}
=\frac{(25)(0.010)}{0.50}
=0.50
\]

となり、\(0.1\) を大きく上回ります。この食品球では表面が先に冷却または加熱され、中心温度が遅れて変化します。集中熱容量法による平均温度だけで安全性や加熱完了を判断することはできません。

同じ大きさ・同じ周囲条件でも材料で判定が変わる
金属のように熱伝導率が大きい物体は内部温度がそろいやすく、食品、樹脂、断熱材のように熱伝導率が小さい物体は内部温度分布が生じやすくなります。

Biot数とFourier数の関係

熱拡散率を、

\[
\alpha=\frac{k_s}{\rho c_p}
\]

とすると、代表長さ \(L_c\) に基づくFourier数は、

\[
\mathrm{Fo}=\frac{\alpha t}{L_c^2}
\]

です。Biot数と掛け合わせると、

\[
\begin{aligned}
\mathrm{Bi}\,\mathrm{Fo}
&=\frac{hL_c}{k_s}
\frac{\alpha t}{L_c^2}\\
&=\frac{hL_c}{k_s}
\frac{k_st}{\rho c_pL_c^2}\\
&=\frac{ht}{\rho c_pL_c}\\
&=\frac{t}{\tau}
\end{aligned}
\]

となります。したがって、集中熱容量法の温度解は、

\[
\boxed{
\frac{T(t)-T_\infty}{T_i-T_\infty}
=\exp\left(-\mathrm{Bi}\,\mathrm{Fo}\right)
}
\]

とも表せます。

Biot数とFourier数で同じ代表長さを使う
上の \(\mathrm{Bi}\,\mathrm{Fo}=t/\tau\) は、両方に \(L_c=V/A_s\) を使った場合の関係です。半径基準や半厚さ基準のBiot数・Fourier数を混ぜると、形状係数が不足します。

Biot数とNusselt数を混同しない

Biot数とNusselt数は、どちらも \(hL/k\) の形を持ちますが、分母の熱伝導率と用途が異なります。

無次元数 定義 分母の熱伝導率 主な用途
Biot数 \(\mathrm{Bi}=hL_c/k_s\) 物体・固体側の \(k_s\) 物体内部の温度を一様とみなせるか
Nusselt数 \(\mathrm{Nu}=hL/k_f\) 流体側の \(k_f\) 対流熱伝達係数 \(h\) を求める

実際の計算では、まずReynolds数・Prandtl数・Nusselt数の相関式から \(h\) を求め、その \(h\) をBiot数へ使う流れになります。対流伝熱の無次元相関は、Nusselt数・Prandtl数と対流熱伝達で解説しています。

冷却曲線から熱伝達係数を推定する

集中熱容量法の指数解の両辺で自然対数を取ると、

\[
\ln\left(
\frac{T(t)-T_\infty}{T_i-T_\infty}
\right)
=-\frac{hA_s}{\rho c_pV}t
=-\frac{t}{\tau}
\]

です。縦軸に対数温度差、横軸に時間を取ると、仮定が成り立つ範囲では直線になります。傾きを \(s\) とすれば、

\[
s=-\frac{hA_s}{\rho c_pV}
\]

なので、

\[
\boxed{
h=-s\frac{\rho c_pV}{A_s}
=-s\rho c_pL_c
}
\]

として熱伝達係数を推定できます。

ただし、温度によって \(h\) や物性値が変わる、放射が大きい、温度センサーの応答遅れがある、といった場合には直線から外れます。測定値から \(h\) を逆算する前にもBiot数を確認してください。

仮定を拡張する場合

複数の面で熱伝達係数が異なる場合

同じ周囲温度 \(T_\infty\) に対し、面ごとに \(h_i\) と面積 \(A_i\) が異なるなら、

\[
\rho c_pV\frac{dT}{dt}
=-\sum_i h_iA_i\left(T-T_\infty\right)
\]

とし、\(hA_s\) を \(\sum_i h_iA_i\) へ置き換えます。

周囲温度も面ごとに異なる場合は、

\[
\rho c_pV\frac{dT}{dt}
=-\sum_i h_iA_i\left(T-T_{\infty,i}\right)
\]

とします。

内部発熱がある場合

物体内部で総発熱速度 \(\dot Q_{\mathrm{gen}}\) が生じる場合は、

\[
\rho c_pV\frac{dT}{dt}
=\dot Q_{\mathrm{gen}}
-hA_s\left(T-T_\infty\right)
\]

です。定常温度は、物性と \(h\) が一定なら、

\[
T_{\mathrm{ss}}
=T_\infty+\frac{\dot Q_{\mathrm{gen}}}{hA_s}
\]

となります。体積発熱速度 \(\dot q”’\) が一様なら、\(\dot Q_{\mathrm{gen}}=\dot q”’V\) です。

放射伝熱が重要な場合

放射伝熱は絶対温度の4乗を含むため、一般には単純な指数応答になりません。狭い温度範囲で放射を線形化でき、放射周囲温度を流体温度と同じとみなせる場合は、放射熱伝達係数 \(h_r\) を使い、対流と放射の有効係数を \(h_{\mathrm{eff}}=h+h_r\) として近似できることがあります。

集中熱容量法を使う手順

  1. 熱交換する表面を決める
    体積 \(V\) と実際の伝熱面積 \(A_s\) を求めます。
  2. 代表長さを求める
    \(L_c=V/A_s\) を計算します。
  3. 物性値と熱伝達係数を選ぶ
    物体側の \(k_s\)、\(\rho\)、\(c_p\) と、周囲流体との \(h\) を選びます。
  4. Biot数を計算する
    \(\mathrm{Bi}=hL_c/k_s\) を求め、集中熱容量法の適用可否を判定します。
  5. 時定数を求める
    \(\tau=\rho c_pL_c/h\) を計算します。
  6. 温度または時間を求める
    指数解へ時刻または目標温度を代入します。
  7. 仮定を再確認する
    周囲温度、\(h\)、物性値、放射、発熱、相変化が無視できるか確認します。

よくある間違い

間違い 正しい考え方
Biot数を確認せず指数解を使う 最初に \(\mathrm{Bi}=hL_c/k_s\) を計算する
球の代表長さを常に半径 \(R\) とする 集中熱容量法では、全面伝熱する球なら \(L_c=R/3\)
断熱面も \(A_s\) に含める 周囲と熱交換する表面だけを数える
Biot数の分母に流体の熱伝導率を使う Biot数では物体側 \(k_s\)。流体側を使うのはNusselt数
\(\mathrm{Bi}<0.1\) なら必ず冷却が速いと思う Biは内部一様性。速さは時定数 \(\tau\) で判断する
3時定数で周囲温度へ完全に一致すると考える \(3\tau\) は約95%到達。温度差は指数的に減少する
加熱では別の式が必要だと思う 温度差に符号を含めれば、加熱・冷却で同じ式を使える
温度が大きく変わっても \(h\) と物性を一定にする 必要に応じて温度依存性、放射、相変化を考慮する
BiとFoで異なる代表長さを使う 使用する関係式と同じ代表長さの定義で統一する

確認問題

3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。

QUICK CHECK

1 / 3

伝熱工学・初級

このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。

まとめ

  • Biot数 \(\mathrm{Bi}=hL_c/k_s\) は、物体内部の熱伝導抵抗と外部の対流伝熱抵抗の比を表す
  • 集中熱容量法では、代表長さを \(L_c=V/A_s\) で求める
  • \(\mathrm{Bi}<0.1\) は、物体内部を一様温度とみなす工学的な目安である
  • 集中熱容量法の温度応答は \((T-T_\infty)/(T_i-T_\infty)=e^{-t/\tau}\) で表される
  • 時定数は \(\tau=\rho c_pV/(hA_s)=\rho c_pL_c/h\) である
  • 加熱と冷却は、温度差の符号を含めれば同じ式で計算できる
  • 同じ代表長さを使えば、\(\mathrm{Bi}\,\mathrm{Fo}=t/\tau\) となる
  • Biot数が大きい場合は、熱伝導方程式、Heisler線図、解析解、数値計算を使う
  • Biot数の分母は物体側の熱伝導率であり、流体側の熱伝導率を使うNusselt数と区別する

Biot数は、複雑な非定常熱伝導問題を、簡単な一次遅れモデルへ置き換えてよいかを判断する入口です。まず適用可否を確認し、使える場合だけ指数解を使う、という順番を守ることが重要です。

理解できたら、問題で確かめよう
かこまるの化工演習室では、化学工学の基礎を分野別の確認テストで復習できます。学習履歴も残せるので、記事を読んだ後のアウトプットに使ってください。
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参考資料

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