強制対流熱伝達とは?平板・円柱まわりの計算を例題で解説

平板と円柱まわりの強制対流熱伝達を示す図解 伝熱工学
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風が熱い板の上を流れる、空冷ファンが機器へ風を当てる、配管の外側を空気が横切る。このように、ファン・ブロワ・ポンプなどで流れを与えて熱を移動させる現象を強制対流熱伝達と呼びます。

強制対流の計算で難しいのは、熱伝達係数 \(h\) が物性値のような一定値ではないことです。流速、形状、代表長さ、層流・乱流、表面温度条件によって変わるため、条件に合ったNusselt数相関式から求めます。

この記事では、既存記事で扱った管内流ではなく、平板や円柱の外側を流体が流れる外部流れに焦点を当てます。Reynolds数・Prandtl数・Nusselt数の意味から、平板と円柱まわりの熱伝達係数・伝熱速度の求め方まで例題で解説します。

この記事でわかること

  • 強制対流と自然対流、内部流れと外部流れの違い
  • 外部流れで \(\mathrm{Nu}=f(\mathrm{Re},\mathrm{Pr})\) となる理由
  • 平板の局所熱伝達係数と平均熱伝達係数の違い
  • 層流・乱流に応じた平板相関式の選び方
  • 円柱直交流のChurchill–Bernstein相関式
  • 膜温度・代表長さ・適用範囲の確認方法

対流の基本式は熱伝導・対流・放射の違い、管内強制対流はNusselt数・Prandtl数と対流熱伝達で解説しています。

図解|外部流れの強制対流熱伝達
外部流れの強制対流熱伝達平板と円柱の表面に生じる境界層から熱伝達係数を求める流れを示す。外部流れの強制対流熱伝達平板と円柱の表面に生じる境界層から熱伝達係数を求める流れを示す。1外部流れ主流速度 U∞平板・円柱へ流入2境界層速度・温度分布Reで状態を判定3熱伝達相関式でNuを計算h = Nu k / LPOINT形状と流れに合う相関式を選ぶRe → Nu → h の順に計算する式・図の記号は記事本文の定義と対応しています
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強制対流熱伝達とは

強制対流熱伝達とは、外部から与えられた流れによって、固体表面と流体の間で熱が移動する現象です。

代表例は次のとおりです。

  • ファンで電子機器やモーターを空冷する
  • 走行風で車体表面が冷却される
  • 配管や伝熱管の外側を流体が横切る
  • ブロワで乾燥対象へ温風を当てる

表面から流体への対流伝熱速度は、Newtonの冷却則で表します。

\[
\boxed{
\dot Q_{\mathrm{conv}}
=
\bar h A_s
\left(T_s-T_\infty\right)
}
\]

ここで \(\bar h\) は表面全体の平均熱伝達係数、\(A_s\) は伝熱面積、\(T_s\) は表面温度、\(T_\infty\) は境界層の外側にある主流温度です。温度差はKでも℃でも同じ数値になります。

自然対流との違い

項目 強制対流 自然対流
流れの原因 ファン、ブロワ、ポンプ、走行風など 温度差による密度差と浮力
主な無次元数 Reynolds数、Prandtl数 Grashof数、Rayleigh数、Prandtl数
代表的な整理 \(\mathrm{Nu}=f(\mathrm{Re},\mathrm{Pr})\) \(\mathrm{Nu}=f(\mathrm{Ra},\mathrm{Pr})\)
流速 装置条件として与えられる 温度差と物性から結果として生じる

自然対流の計算は、Rayleigh数・Grashof数と自然対流熱伝達を参照してください。自然対流と強制対流が同程度になる場合は混合対流となり、単純にどちらか一方の相関式だけを使えないことがあります。

内部流れと外部流れを区別する

強制対流は、流れが壁で囲まれているかどうかで大きく分かれます。

  • 内部流れ:管やダクトの中を流れる。水力直径、入口長さ、十分発達した流れが重要
  • 外部流れ:平板、円柱、球などの外側を流れる。前縁からの境界層発達や剥離が重要

同じ流体、流速、Reynolds数でも、管内流と平板外部流れではNusselt数相関式が異なります。相関式を選ぶ前に、形状と流れ方を図で確認することが最初の手順です。

強制対流を支配する3つの無次元数

物性変化や粘性散逸が大きくない一般的な強制対流では、熱伝達を次の形で整理します。

\[
\boxed{
\mathrm{Nu}=f\left(\mathrm{Re},\mathrm{Pr}\right)
}
\]

Reynolds数:慣性力と粘性力の比

\[
\mathrm{Re}_{L_c}
=
\frac{U_\infty L_c}{\nu}
=
\frac{\rho U_\infty L_c}{\mu}
\]

Reynolds数が大きいほど慣性の影響が強く、境界層は不安定になりやすくなります。ただし、遷移するReynolds数は表面粗さ、主流の乱れ、圧力勾配などにも左右されます。詳細はReynolds数と層流・乱流を参照してください。

Prandtl数:運動量拡散と熱拡散の比

\[
\mathrm{Pr}
=
\frac{\nu}{\alpha}
=
\frac{\mu c_p}{k}
\]

Prandtl数は、速度境界層と温度境界層の相対的な厚さに関係します。一般に \(\mathrm{Pr}>1\) では温度境界層が速度境界層より薄くなりやすく、\(\mathrm{Pr}<1\) では厚くなりやすいと考えられます。

Nusselt数:対流を含む熱移動と熱伝導の比

\[
\mathrm{Nu}_{L_c}
=
\frac{hL_c}{k}
\]

相関式からNusselt数を求めれば、熱伝達係数は、

\[
\boxed{
h
=
\frac{\mathrm{Nu}_{L_c}k}{L_c}
}
\]

として得られます。ここで \(k\) は流体の熱伝導率です。固体側の熱伝導率を使うBiot数と混同しないようにしましょう。

なぜ平板の先端ほど熱伝達係数が大きいのか

流体が平板の前縁へ到達した直後は、温度境界層が薄く、壁面近くの温度勾配が大きくなります。そのため、局所熱流束と局所熱伝達係数は大きくなります。

下流へ進むと温度境界層が厚くなり、壁面温度勾配が緩やかになるため、層流域の局所熱伝達係数は小さくなっていきます。境界層の物理像は速度・温度・濃度境界層で詳しく説明しています。

局所値と平均値を区別する
位置 \(x\) における局所熱伝達係数を \(h_x\)、前縁から長さ \(L\) までの平均を \(\bar h_L\) とします。装置全体の伝熱速度には通常 \(\bar h_L\) を使います。

平板上の層流強制対流

一様な主流が、流れと平行に置かれた等温平板へ当たる場合を考えます。流れ方向の位置 \(x\) を使った局所Reynolds数は、

\[
\mathrm{Re}_x
=
\frac{U_\infty x}{\nu}
\]

です。

一定表面温度、層流、物性一定、圧力勾配が小さい条件では、代表的な局所Nusselt数は、

\[
\boxed{
\mathrm{Nu}_x
=
0.332\,\mathrm{Re}_x^{1/2}\mathrm{Pr}^{1/3}
}
\]

前縁から長さ \(L\) までの平均Nusselt数は、

\[
\boxed{
\overline{\mathrm{Nu}}_L
=
0.664\,\mathrm{Re}_L^{1/2}\mathrm{Pr}^{1/3}
}
\]

です。したがって同じ位置 \(L\) では、層流の平均熱伝達係数は終端の局所熱伝達係数の2倍になります。

表面条件で係数が変わる
上式は一定表面温度の代表式です。一定熱流束では係数が異なります。また、一般的な適用目安は \(\mathrm{Re}_L\lesssim5\times10^5\)、おおむね \(0.6\lesssim\mathrm{Pr}\lesssim50\) ですが、遷移位置は外乱や表面状態でも変わります。

例題1:平板から空気への放熱

流れ方向長さ \(L=0.50\ \mathrm{m}\)、幅 \(W=0.30\ \mathrm{m}\) の等温平板に、速度 \(U_\infty=5.0\ \mathrm{m/s}\) の空気が平行に流れています。表面温度は \(80\ ^\circ\mathrm{C}\)、主流温度は \(20\ ^\circ\mathrm{C}\) です。

膜温度における空気の物性値を、

  • \(k=0.0280\ \mathrm{W/(m\,K)}\)
  • \(\nu=1.80\times10^{-5}\ \mathrm{m^2/s}\)
  • \(\mathrm{Pr}=0.700\)

とします。片面からの対流伝熱速度を求めます。

1. Reynolds数と流れの確認

\[
\mathrm{Re}_L
=
\frac{(5.0)(0.50)}{1.80\times10^{-5}}
=
1.39\times10^5
\]

\(5\times10^5\) より小さいため、この例では前縁から層流とみなします。

2. 平均Nusselt数

\[
\overline{\mathrm{Nu}}_L
=
0.664(1.39\times10^5)^{1/2}(0.700)^{1/3}
=
2.20\times10^2
\]

3. 平均熱伝達係数

\[
\bar h_L
=
\frac{(219.7)(0.0280)}{0.50}
=
12.3\ \mathrm{W/(m^2\,K)}
\]

4. 対流伝熱速度

片面の面積は \(A_s=LW=(0.50)(0.30)=0.150\ \mathrm{m^2}\) です。

\[
\dot Q_{\mathrm{conv}}
=
(12.3)(0.150)(80-20)
=
1.11\times10^2\ \mathrm{W}
\]

答え:平均熱伝達係数は約 \(12.3\ \mathrm{W/(m^2\,K)}\)、片面からの伝熱速度は約 \(111\ \mathrm{W}\) です。

平板で乱流を含む場合

平板前縁から層流で始まり、\(\mathrm{Re}_x\approx5\times10^5\) 付近で乱流へ遷移すると仮定した代表的な平均相関式は、

\[
\boxed{
\overline{\mathrm{Nu}}_L
=
\left(0.037\,\mathrm{Re}_L^{4/5}-871\right)
\mathrm{Pr}^{1/3}
}
\]

です。代表的には \(5\times10^5\lesssim\mathrm{Re}_L\lesssim10^7\)、\(0.6\lesssim\mathrm{Pr}\lesssim60\) で用いられます。定数871は、前縁側に存在する層流区間の影響を概算する補正です。

一方、前縁から乱流であると仮定した式ではこの補正項を使いません。同じ「乱流平板」でも、層流域を含むかどうかで式が変わる点に注意してください。

円柱まわりの強制対流

配管や伝熱管へ流れが直角に当たる場合、流れは円柱の前面で減速し、側面に沿って加速した後、境界層が剥離して後流を作ります。そのため、平板とは異なる相関式を使います。

代表長さは円柱外径 \(D\) です。

\[
\mathrm{Re}_D
=
\frac{U_\infty D}{\nu}
\]

単一円柱の平均Nusselt数を広い範囲で表すChurchill–Bernstein相関式は、

\[
\boxed{
\overline{\mathrm{Nu}}_D
=
0.3
+
\frac{
0.62\,\mathrm{Re}_D^{1/2}\mathrm{Pr}^{1/3}
}{
\left[1+(0.4/\mathrm{Pr})^{2/3}\right]^{1/4}
}
\left[
1+
\left(
\frac{\mathrm{Re}_D}{282000}
\right)^{5/8}
\right]^{4/5}
}
\]

一般に \(\mathrm{Re}_D\mathrm{Pr}>0.2\) が適用条件の一つです。流体物性は、相関式の指定に従い通常は膜温度で評価します。

例題2:水平円管へ空気が直角に当たる場合

外径 \(D=0.050\ \mathrm{m}\)、長さ \(L=1.0\ \mathrm{m}\) の円管へ、速度 \(U_\infty=8.0\ \mathrm{m/s}\) の空気が直角に当たります。円管表面温度は \(100\ ^\circ\mathrm{C}\)、主流温度は \(20\ ^\circ\mathrm{C}\) です。

空気物性を \(k=0.0290\ \mathrm{W/(m\,K)}\)、\(\nu=1.90\times10^{-5}\ \mathrm{m^2/s}\)、\(\mathrm{Pr}=0.700\) とします。

\[
\mathrm{Re}_D
=
\frac{(8.0)(0.050)}{1.90\times10^{-5}}
=
2.11\times10^4
\]

Churchill–Bernstein相関式へ代入すると、

\[
\overline{\mathrm{Nu}}_D
\approx
81.2
\]

したがって、

\[
\bar h_D
=
\frac{(81.2)(0.0290)}{0.050}
=
47.1\ \mathrm{W/(m^2\,K)}
\]

円管側面積は \(A_s=\pi DL=0.157\ \mathrm{m^2}\) なので、

\[
\dot Q_{\mathrm{conv}}
=
(47.1)(0.157)(100-20)
\approx
5.92\times10^2\ \mathrm{W}
\]

答え:平均熱伝達係数は約 \(47.1\ \mathrm{W/(m^2\,K)}\)、円管側面からの伝熱速度は約 \(592\ \mathrm{W}\) です。

物性値は何度で評価するか

外部流れでは、表面温度と主流温度の平均である膜温度を使うことがよくあります。

\[
\boxed{
T_f
=
\frac{T_s+T_\infty}{2}
}
\]

\(\rho\)、\(\mu\)、\(\nu\)、\(k\)、\(c_p\)、\(\mathrm{Pr}\) をこの温度で評価します。ただし、相関式によっては主流温度、バルク温度、壁温度、あるいは粘度比による補正を指定します。相関式に書かれた評価温度を優先するのが原則です。

物性値の意味は化学工学で使う代表的な物性値で整理しています。

強制対流の計算手順

  1. 形状と流れ方を確認:管内流、平板外部流れ、円柱直交流などを区別する
  2. 局所値か平均値か決める:ある位置の熱流束か、装置全体の伝熱速度かを確認する
  3. 代表長さを決める:平板は前縁からの距離または全長、円柱は外径を使う
  4. 物性値を評価:相関式で指定された温度を使う
  5. Reynolds数とPrandtl数を計算:流動状態と相関式の適用範囲を確認する
  6. Nusselt数を計算:形状、層流・乱流、表面条件に合う式を選ぶ
  7. 熱伝達係数へ換算:\(h=\mathrm{Nu}k/L_c\)
  8. 伝熱速度を求める:\(\dot Q=hA_s(T_s-T_\infty)\)

熱伝達を大きくする方法と代償

  • 流速を上げる:Reynolds数と熱伝達係数は増えやすいが、送風・送液動力や圧力損失も増える
  • 伝熱面積を増やす:フィンなどが有効だが、フィン効率と汚れを確認する
  • 乱れを促進する:熱伝達は向上しやすいが、圧力損失・振動・騒音が増えることがある
  • 流れの偏りを減らす:平均流速だけでなく、死水域やバイパス流を避ける

フィンの効果はフィン効率・フィン有効度も参考にしてください。なお、熱伝達を高めるために流速を上げるほど流動抵抗も増えるため、実設備では伝熱性能だけでなくファン・ブロワ・ポンプの動力も含めて最適化します。

よくある間違い

間違い 正しい考え方
管内流の相関式を平板や円柱へ使う 形状と流れ方に合う相関式を選ぶ
局所Nusselt数で面全体の伝熱速度を求める 全体計算では平均Nusselt数・平均熱伝達係数を使う
平板の幅をReynolds数の代表長さにする 流れ方向の前縁からの距離を使う
円柱直交流で長さを代表長さにする 外径 \(D\) を使う
Nusselt数の \(k\) に固体の熱伝導率を使う 流体の熱伝導率を使う
\(\mathrm{Re}_L<5\times10^5\) なら必ず層流と断定する 遷移は粗さや主流乱れにも依存するため目安として扱う
相関式の適用範囲を確認しない Re、Pr、形状、表面条件、物性評価温度を確認する

確認問題

3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。

QUICK CHECK

1 / 3

伝熱工学・初級

このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。

まとめ

  • 強制対流は、ファン・ブロワ・ポンプなどが作る流れによる熱移動である
  • 外部流れの熱伝達は、基本的に \(\mathrm{Nu}=f(\mathrm{Re},\mathrm{Pr})\) で整理する
  • 平板では流れ方向の距離、円柱直交流では外径を代表長さに使う
  • 平板の局所値と平均値を区別し、面全体の伝熱には平均熱伝達係数を使う
  • 層流・乱流、表面条件、相関式の適用範囲、物性評価温度を必ず確認する
  • Nusselt数から \(h=\mathrm{Nu}k/L_c\)、さらに \(\dot Q=hA_s(T_s-T_\infty)\) と計算する
  • 流速を上げると熱伝達は向上しやすいが、圧力損失や動力も増える

外部流れの強制対流では、流体が表面に沿って進むにつれて境界層が変化します。「前縁からどこまで進んだか」「どの形状へ、どの向きに流れが当たるか」を意識すると、Re・Pr・Nuと相関式の役割を整理しやすくなります。

参考資料

設計上の注意
この記事は基礎学習用です。実設備では、相関式の適用範囲、入口や端部、表面粗さ、主流乱れ、物性変化、放射、自然対流との共存、剥離、管群干渉、汚れ、圧力損失、振動などを確認し、信頼できる設計基準・実験データ・数値解析・専門家の検討を併用してください。

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