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配管を流れる実在流体は、管壁との摩擦や、バルブ・エルボで生じる剥離と混合によって、力学的エネルギーを失います。この不可逆なエネルギー損失を圧力損失または損失水頭として表します。
圧力損失を計算できると、配管の入口に必要な圧力、出口で確保できる圧力、ポンプに必要な揚程などを求められます。化学プラントの配管設計では欠かせない計算です。
この記事では、直管の圧力損失を求めるDarcy–Weisbachの式、Darcy摩擦係数、層流と乱流での求め方、バルブやエルボの局所損失、配管全体の合計方法を例題で解説します。
この記事でわかること
- 圧力損失と単なる静圧低下の違い
- Darcy–Weisbachの式と各項の意味
- 損失水頭と圧力損失の換算
- 層流・乱流における管摩擦係数の求め方
- Darcy係数とFanning係数の違い
- バルブ・エルボなどの局所損失
- 直管と継手を含む配管の計算手順
配管の圧力損失とは
実在流体が配管を流れると、粘性によるせん断、壁面摩擦、流れの剥離、渦や混合によって、流体が持つ力学的エネルギーの一部が熱へ変わります。この不可逆な減少分が圧力損失です。
圧力損失には、大きく分けて次の2種類があります。
| 種類 | 発生場所 | 主な原因 |
|---|---|---|
| 直管損失 | 一定径の直管 | 管壁と流体の摩擦 |
| 局所損失 | 入口、出口、バルブ、エルボ、分岐、急拡大・急縮小 | 流れ方向・断面の変化、剥離、渦、混合 |
「直管損失」を主要損失、「局所損失」を副次損失やマイナー損失と呼ぶこともあります。ただし、短い配管にバルブや継手が多い場合、局所損失の方が大きくなることもあります。
圧力損失と圧力降下は同じではない
水平で管径が一定の直管では、上流と下流の静圧差がほぼ摩擦による圧力損失に対応します。しかし、一般の配管では静圧が下がった量と失われた力学的エネルギーは同じとは限りません。
- 管径が細くなれば、流速上昇のため静圧が下がる
- 配管が高い位置へ上がれば、位置エネルギー増加のため静圧が下がる
- 摩擦や混合があれば、力学的エネルギーそのものが失われる
NISTは、pressure dropを静圧の低下、pressure lossを不可逆な力学的エネルギーの損失として区別しています。管径変化や高さの影響を圧力損失へ重複して加えないことが重要です。
圧力・流速・高さの変換関係は、ベルヌーイの式の記事で解説しています。
Darcy–Weisbachの式
十分に発達した円管内流れの直管圧力損失は、Darcy–Weisbachの式で求めます。
\[
\boxed{
\Delta p_{\mathrm{f}}
=
f_{\mathrm{D}}
\frac{L}{D}
\frac{\rho \bar{v}^{2}}{2}
}
\]
| 記号 | 意味 | SI単位 |
|---|---|---|
| \(\Delta p_{\mathrm{f}}\) | 直管の圧力損失 | \(\mathrm{Pa}\) |
| \(f_{\mathrm{D}}\) | Darcy摩擦係数 | 無次元 |
| \(L\) | 管長 | \(\mathrm{m}\) |
| \(D\) | 管内径 | \(\mathrm{m}\) |
| \(\rho\) | 流体密度 | \(\mathrm{kg/m^3}\) |
| \(\bar{v}\) | 断面平均流速 | \(\mathrm{m/s}\) |
\(\rho \bar{v}^2/2\) は動圧、\(L/D\) は管長が内径の何倍あるかを表す無次元量です。流量から平均流速を求める方法は、流量と流速の記事で確認できます。
損失水頭で表す形
圧力損失を流体の単位重量あたりのエネルギーへ換算した量を、損失水頭 \(h_{\mathrm{f}}\) と呼びます。
\[
\boxed{
h_{\mathrm{f}}
=
f_{\mathrm{D}}
\frac{L}{D}
\frac{\bar{v}^{2}}{2g}
}
\]
単位はメートルです。圧力損失との関係は、
\[
\boxed{
\Delta p_{\mathrm{f}}
=
\rho g h_{\mathrm{f}}
}
\]
です。損失水頭は、その流体を何m持ち上げるエネルギーに相当するかを表します。
同じ損失水頭でも圧力損失は密度で変わる
\(\Delta p=\rho gh\) なので、同じ損失水頭なら密度の大きい流体ほど圧力損失は大きくなります。一方、同じ配管・同じ流速・同じ摩擦係数なら、Darcy–Weisbach式の損失水頭には密度が直接現れません。
圧力損失を左右する要素
Darcy–Weisbachの式から、直管損失に影響する要素を読み取れます。
- 管長 \(L\):長いほど損失は比例して増える
- 流速 \(\bar{v}\):摩擦係数が同じなら損失は流速の二乗に比例する
- 管内径 \(D\):小さいほど \(L/D\) が大きくなり、流量一定なら流速も増える
- 密度 \(\rho\):圧力単位で表す損失へ直接影響する
- 粘度 \(\mu\):レイノルズ数を通じて摩擦係数へ影響する
- 管壁粗さ \(\varepsilon\):乱流域の摩擦係数へ影響する
管径の影響は \(1/D\) だけではない
体積流量が一定なら、\(\bar{v}=4Q/(\pi D^2)\) です。流速の二乗まで含めると、摩擦係数を一定とした場合の圧力損失は概略 \(1/D^5\) に比例します。管径を少し細くするだけでも損失が大きく増える理由です。
管摩擦係数はレイノルズ数で決まる
Darcy摩擦係数 \(f_{\mathrm{D}}\) は、流動状態によって求め方が異なります。まずレイノルズ数の記事の方法で、層流・遷移流・乱流を判定します。
層流:\(f_{\mathrm{D}}=64/\mathrm{Re}_D\)
十分に発達した円管内層流では、Darcy摩擦係数は理論的に、
\[
\boxed{
f_{\mathrm{D}}
=
\frac{64}{\mathrm{Re}_D}
}
\]
となります。層流では摩擦係数はレイノルズ数だけで決まり、管壁粗さには依存しません。
乱流:レイノルズ数と相対粗さが必要
乱流では、摩擦係数はレイノルズ数 \(\mathrm{Re}_D\) と相対粗さ \(\varepsilon/D\) に依存します。代表的な関係式がColebrook–Whiteの式です。
\[
\boxed{
\frac{1}{\sqrt{f_{\mathrm{D}}}}
=
-2\log_{10}
\left(
\frac{\varepsilon}{3.7D}
+
\frac{2.51}{
\mathrm{Re}_D\sqrt{f_{\mathrm{D}}}
}
\right)
}
\]
摩擦係数が式の両辺に含まれるため、反復計算や表計算ソフトを使って解きます。また、Moody線図を使えば、レイノルズ数と相対粗さから摩擦係数を図上で読み取れます。
滑らかな管の近似:Blasiusの式
滑らかな円管の乱流で、レイノルズ数がおよそ \(4\times10^3\) から \(10^5\) の範囲では、次の近似式がよく使われます。
\[
\boxed{
f_{\mathrm{D}}
=
0.3164\,
\mathrm{Re}_D^{-0.25}
}
\]
適用範囲外や粗い管へ無条件に使わないことが重要です。
Darcy摩擦係数とFanning摩擦係数
化学工学の教科書や相関式では、Darcy摩擦係数ではなくFanning摩擦係数 \(f_{\mathrm{F}}\) を使うことがあります。両者の関係は、
\[
\boxed{
f_{\mathrm{D}}=4f_{\mathrm{F}}
}
\]
です。したがって、円管内層流では、
\[
f_{\mathrm{D}}=\frac{64}{\mathrm{Re}_D}
\qquad
f_{\mathrm{F}}=\frac{16}{\mathrm{Re}_D}
\]
となります。
係数の名前と式をセットで確認する
Darcy係数とFanning係数を取り違えると、圧力損失が4倍または4分の1になります。本記事のDarcy–Weisbach式では、すべてDarcy摩擦係数 \(f_{\mathrm{D}}\) を使います。
局所損失の計算
バルブ、エルボ、入口、出口、急拡大、急縮小などの損失は、局所損失係数 \(K\) を使って表します。
\[
\boxed{
\Delta p_{\mathrm{m}}
=
K\frac{\rho \bar{v}^{2}}{2}
}
\]
損失水頭で表すと、
\[
\boxed{
h_{\mathrm{m}}
=
K\frac{\bar{v}^{2}}{2g}
}
\]
複数の継手がある場合は、各損失係数を足し合わせます。
\[
\Delta p_{\mathrm{m,total}}
=
\left(\sum_i K_i\right)
\frac{\rho \bar{v}^{2}}{2}
\]
\(K\) は部品の形状、開度、レイノルズ数、接続条件などに依存します。設計ではメーカー資料、規格、信頼できる実験データを使います。
局所損失を相当管長で表す
継手の局所損失を、同じ損失を生じる直管長さ \(L_{\mathrm{eq}}\) へ置き換えることもできます。
\[
K\frac{\bar{v}^{2}}{2g}
=
f_{\mathrm{D}}
\frac{L_{\mathrm{eq}}}{D}
\frac{\bar{v}^{2}}{2g}
\]
したがって、
\[
\boxed{
L_{\mathrm{eq}}
=
\frac{KD}{f_{\mathrm{D}}}
}
\]
です。NISTの配管継手研究でも、局所損失係数から相当管長へ換算する関係が用いられています。
直管と局所損失を合計する
同じ内径・同じ平均流速の配管に直管と複数の継手がある場合、総圧力損失は、
\[
\boxed{
\Delta p_{\mathrm{L,total}}
=
\left(
f_{\mathrm{D}}\frac{L}{D}
+
\sum_i K_i
\right)
\frac{\rho \bar{v}^{2}}{2}
}
\]
となります。内径が変わる場合は、区間ごとに流速・レイノルズ数・摩擦係数を計算し、それぞれの損失を合計します。
圧力損失の計算手順
- 配管を区間に分ける:管径、流量、流体物性が同じ区間ごとに整理する
- 平均流速を求める:\(\bar{v}=Q/A\) を使う
- レイノルズ数を求める:\(\mathrm{Re}_D=\rho \bar{v}D/\mu\) を使う
- 摩擦係数を求める:層流は \(64/\mathrm{Re}_D\)、乱流はMoody線図や相関式を使う
- 直管損失を求める:Darcy–Weisbachの式へ代入する
- 局所損失を求める:各部品の \(K\) を合計する
- 全区間を合計する:必要に応じて損失水頭から圧力へ換算する
- 拡張ベルヌーイ式へ組み込む:高さ、速度変化、出口圧力、ポンプ揚程と合わせる
例題1:水が流れる直管の圧力損失
長さ30 m、内径50 mmの滑らかな水平円管を、20℃の水が平均流速1.5 m/sで流れています。密度を \(998\,\mathrm{kg/m^3}\)、粘度を \(1.00\times10^{-3}\,\mathrm{Pa\,s}\) とします。
1. レイノルズ数を求める
\[
\begin{aligned}
\mathrm{Re}_D
&=\frac{\rho \bar{v}D}{\mu} \\
&=\frac{(998)(1.5)(0.050)}
{1.00\times10^{-3}} \\
&=7.49\times10^4
\end{aligned}
\]
乱流なので、滑らかな管に対するBlasiusの式を使います。
2. Darcy摩擦係数を求める
\[
\begin{aligned}
f_{\mathrm{D}}
&=0.3164\,
\mathrm{Re}_D^{-0.25} \\
&=0.3164
\left(7.49\times10^4\right)^{-0.25} \\
&=0.0191
\end{aligned}
\]
3. 圧力損失を求める
\[
\begin{aligned}
\Delta p_{\mathrm{f}}
&=
f_{\mathrm{D}}
\frac{L}{D}
\frac{\rho \bar{v}^2}{2} \\
&=(0.0191)
\frac{30}{0.050}
\frac{(998)(1.5)^2}{2} \\
&=1.29\times10^4\,\mathrm{Pa} \\
&=12.9\,\mathrm{kPa}
\end{aligned}
\]
直管の圧力損失は12.9 kPaです。損失水頭は、
\[
h_{\mathrm{f}}
=
\frac{\Delta p_{\mathrm{f}}}{\rho g}
=
\frac{1.29\times10^4}{(998)(9.81)}
=
1.32\,\mathrm{m}
\]
となります。
例題2:高粘度油の層流圧力損失
密度 \(900\,\mathrm{kg/m^3}\)、粘度 \(0.020\,\mathrm{Pa\,s}\) の油が、長さ5.0 m、内径10 mmの円管を平均流速0.10 m/sで流れています。
1. レイノルズ数と摩擦係数
\[
\begin{aligned}
\mathrm{Re}_D
&=\frac{(900)(0.10)(0.010)}{0.020} \\
&=45
\end{aligned}
\]
十分に小さいため層流です。
\[
f_{\mathrm{D}}
=
\frac{64}{45}
=
1.42
\]
2. 圧力損失
\[
\begin{aligned}
\Delta p_{\mathrm{f}}
&=(1.42)
\frac{5.0}{0.010}
\frac{(900)(0.10)^2}{2} \\
&=3.20\times10^3\,\mathrm{Pa} \\
&=3.20\,\mathrm{kPa}
\end{aligned}
\]
圧力損失は3.20 kPaです。摩擦係数が1を超えても誤りではありません。摩擦係数は確率ではなく無次元の比例係数で、低レイノルズ数では \(64/\mathrm{Re}_D\) が大きな値になります。
例題3:直管とバルブ・エルボの総圧力損失
長さ20 m、内径40 mmの水平配管を、水が平均流速2.0 m/sで流れています。Darcy摩擦係数を0.025、配管中のバルブとエルボの局所損失係数の合計を \(\sum K=3.2\)、水の密度を \(1000\,\mathrm{kg/m^3}\) とします。
\[
\begin{aligned}
\Delta p_{\mathrm{L,total}}
&=
\left(
f_{\mathrm{D}}\frac{L}{D}
+\sum K
\right)
\frac{\rho \bar{v}^2}{2} \\
&=
\left(
0.025\frac{20}{0.040}
+3.2
\right)
\frac{(1000)(2.0)^2}{2} \\
&=(12.5+3.2)(2000) \\
&=3.14\times10^4\,\mathrm{Pa} \\
&=31.4\,\mathrm{kPa}
\end{aligned}
\]
総圧力損失は31.4 kPaです。内訳は、直管損失25.0 kPa、局所損失6.4 kPaです。
拡張ベルヌーイ式への組み込み
配管の入口1と出口2の間にポンプと損失がある場合、水頭形のエネルギー式は、
\[
\frac{p_1}{\rho g}
+\frac{\bar{v}_1^2}{2g}
+z_1
+h_{\mathrm{p}}
=
\frac{p_2}{\rho g}
+\frac{\bar{v}_2^2}{2g}
+z_2
+h_{\mathrm{L}}
\]
と表せます。ここで \(h_{\mathrm{L}}\) が直管損失と局所損失の合計です。出口圧力、高さ、流速、損失水頭がわかれば、必要なポンプ水頭 \(h_{\mathrm{p}}\) を求められます。
よくある間違い
1. Darcy係数とFanning係数を混同する
最も危険な間違いの一つです。相関式やMoody線図がどちらの係数を示しているか、圧力損失式の係数定義とセットで確認します。
2. 管の外径や呼び径を使う
流速、レイノルズ数、\(L/D\) の計算には実際の管内径を使います。肉厚によって内径は変わります。
3. 流量をそのまま流速の位置へ入れる
Darcy–Weisbach式に入れるのは断面平均流速です。体積流量が与えられた場合は \(\bar{v}=Q/A\) で変換します。
4. kPaとPa、mmとmを混ぜる
基本的にはPa、m、s、kgへそろえて計算します。特に内径をmmのまま \(L/D\) へ入れないよう注意します。
5. 局所損失を無条件に小さいと考える
短い配管、絞られたバルブ、複雑な継手、急拡大・急縮小では局所損失が支配的になる場合があります。
6. 管径変化や高さによる静圧変化を損失と呼ぶ
流速・高さ・圧力の間で可逆的に変換されたエネルギーと、摩擦などで不可逆に失われたエネルギーを区別します。
7. 乱流摩擦係数で管壁粗さを無視する
高レイノルズ数の乱流では、相対粗さが摩擦係数へ強く影響します。古い配管では腐食や付着物によって有効粗さや内径が変わることにも注意が必要です。
次に学ぶ内容とのつながり
圧力損失を計算できるようになると、次の内容へ進めます。
- Moody線図とColebrook–White式の詳しい使い方
- バルブ・エルボ・急拡大・急縮小の局所損失係数
- 配管システム曲線
- ポンプ揚程と運転点
- 並列配管・直列配管の流量分配
これらを組み合わせることで、流量を確保するために必要な配管径やポンプ能力を評価できます。
まとめ
- 圧力損失は、摩擦・剥離・混合による不可逆な力学的エネルギーの減少
- 直管損失はDarcy–Weisbachの式 \(\Delta p=f_{\mathrm{D}}(L/D)\rho \bar{v}^2/2\) で求める
- 層流のDarcy摩擦係数は \(f_{\mathrm{D}}=64/\mathrm{Re}_D\)
- 乱流の摩擦係数はレイノルズ数と相対粗さに依存する
- Darcy係数はFanning係数の4倍
- 局所損失は \(\Delta p=K\rho \bar{v}^2/2\) で求める
- 配管全体では直管損失とすべての局所損失を合計する
- 静圧低下のすべてがエネルギー損失ではない
圧力損失計算では、公式へ数字を入れる前に、流動状態、摩擦係数の定義、管内径、局所損失、単位を一つずつ確認することが重要です。

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