相間物質移動とは?界面平衡・総括物質移動係数・kLaを例題で解説

相間物質移動の界面平衡・推進力・kLaを解説する記事のアイキャッチ画像 相間物質移動
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炭酸飲料では二酸化炭素が気体から液体へ溶け込み、曝気槽では酸素が気泡から水へ移動します。反対に、放散塔では液体中の揮発成分が気体へ追い出されます。このように、物質が気相と液相、液相と液相など、異なる相の境界を越えて移動する現象が相間物質移動です。

相間物質移動を理解する鍵は、「濃度差があれば移動する」とだけ考えないことです。異なる相では濃度の尺度や溶けやすさが違うため、平衡関係を使って同じ相の基準へ換算した推進力を用います。

この記事では、界面平衡、星印付き濃度、総括物質移動係数、界面積、\(k_La\) の意味を、気液系を中心に例題付きで解説します。

この記事の目標

  • 相間物質移動と相内物質移動の違いを説明できる
  • 界面平衡とバルク相の非平衡を区別できる
  • 星印付き濃度 \(C_A^*\)、\(p_A^*\) の意味を説明できる
  • 移動方向を平衡状態との比較から判定できる
  • 個別物質移動係数と総括物質移動係数を使い分けられる
  • \(k_La\) が「移動の速さ」と「界面の多さ」をまとめた量だと理解できる
  • 物質流束と到達時間を例題で計算できる
図解|気液間の物質移動と二つの抵抗
気液間の物質移動と二つの抵抗気相本体から界面を通り液相本体へ移動する成分と、界面平衡を示す。気液間の物質移動と二つの抵抗気相本体から界面を通り液相本体へ移動する成分と、界面平衡を示す。1気相本体濃度 yA気膜を拡散2気液界面yAi ↔ xAi界面では平衡3液相本体濃度 xA液膜を拡散POINT総括速度:NA = KLa(CA* − CA)遅い側の膜抵抗が支配的になる式・図の記号は記事本文の定義と対応しています
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相間物質移動とは

相間物質移動とは、成分が異なる相の境界である界面を越えて移動する現象です。代表例は気液、液液、固液の間の移動です。

相の組合せ 物質移動の例 代表的な操作
気相―液相 気体成分が液体へ溶ける ガス吸収、曝気
液相―気相 溶存成分が気体へ出る 放散、蒸発、乾燥
液相―液相 溶質が一方の液相から別の液相へ移る 液液抽出
固相―液相 固体成分が液体へ溶け出す 溶解、浸出
液相―固相 溶質が固体表面へ取り込まれる 吸着、晶析
膜を介した二相 成分が膜へ溶解・拡散し反対側へ抜ける 膜分離

一方、一つの相の内部で拡散や対流によって成分が運ばれる現象は相内物質移動です。実際の相間物質移動では、相内移動と界面通過が連続して起こります。

たとえば酸素が気泡から水へ溶ける場合、概念的な経路は次のとおりです。

  1. 気泡内部のバルク気相から気相側の界面近傍へ移動する
  2. 気液界面で気相と液相の平衡関係に従う
  3. 液相側の界面近傍からバルク液相へ移動する

この経路を抵抗として整理する前提は、移動係数と境膜抵抗で解説しています。また、拡散と対流の違いは物質移動とは?で基礎から確認できます。

相間物質移動は「界面だけの現象」ではありません。バルク相から界面まで、界面をまたいで、さらに反対側のバルク相まで届く一連の移動として考えます。

界面平衡とバルク相の非平衡

二重境膜説では、界面そのものは非常に薄く、界面の両側は局所的に平衡にあると仮定します。つまり、気相側界面の状態と液相側界面の状態は平衡関係で結ばれます。

ただし、これは装置全体が平衡という意味ではありません。バルク気相とバルク液相は平衡からずれているため、そのずれを小さくする向きに物質移動が進みます。

場所 状態 役割
バルク気相 よく混ざった代表状態 実際の気相組成を表す
気液界面 局所平衡と仮定 両相の状態を平衡式で結ぶ
バルク液相 よく混ざった代表状態 実際の液相組成を表す

厳密な移動方向は化学ポテンシャルの差で決まります。初学者向けの希薄な気液系では、実際の状態を「相手側バルクと平衡になる状態」と比較すると判断できます。

星印付き濃度は「相手側と平衡になる仮想状態」

気相中の成分Aの分圧を \(p_A\)、液相中の濃度を \(C_A\) とします。星印を付けた量を次のように定義します。

記号 意味
\(C_A^*\) バルク気相の \(p_A\) と平衡になる液相濃度
\(p_A^*\) バルク液相の \(C_A\) と平衡になる気相分圧

ここでは希薄溶液に対し、ヘンリーの法則を次の形で定義します。

\[
\boxed{
p_A=H C_A
}
\]

したがって、

\[
\boxed{
C_A^*=\frac{p_A}{H}
}
\]

\[
\boxed{
p_A^*=H C_A
}
\]

です。ここで \(H\) の単位は、この定義では \(\mathrm{Pa\,m^3\,mol^{-1}}\) です。

ヘンリー定数には、圧力÷モル分率、濃度÷圧力、無次元形など複数の定義があります。同じ「ヘンリー定数」という名称でも、定義によって値と単位が逆数関係になることがあります。必ず使用する式と単位を確認してください。また、ヘンリー定数は温度にも依存します。

移動方向の判定

気相から液相への吸収を正方向とすると、移動方向は次のように判定できます。

液相基準 気相基準 移動方向
\(C_A^*>C_A\) \(p_A>p_A^*\) 気相から液相へ吸収
\(C_A^*=C_A\) \(p_A=p_A^*\) 正味の移動なし
\(C_A^*<C_A\) \(p_A<p_A^*\) 液相から気相へ放散
比べるのは、異なる相の \(p_A\) と \(C_A\) そのものではありません。平衡式で片方を換算し、\(p_A-p_A^*\) または \(C_A^*-C_A\) のように同じ基準の量を比べます。

個別物質移動係数と総括物質移動係数

定常状態で、界面に物質が蓄積しないとします。気相から液相へ移動する成分Aのモル流束 \(N_A\) は、気相側と液相側で同じです。

気相側では、

\[
\boxed{
N_A
=
k_G\left(p_{A,G}-p_{A,i}\right)
}
\]

液相側では、

\[
\boxed{
N_A
=
k_L\left(C_{A,i}-C_{A,L}\right)
}
\]

と表します。

記号 意味 この式での単位
\(N_A\) 成分Aのモル流束 \(\mathrm{mol\,m^{-2}\,s^{-1}}\)
\(k_G\) 気相側個別物質移動係数 \(\mathrm{mol\,m^{-2}\,s^{-1}\,Pa^{-1}}\)
\(k_L\) 液相側個別物質移動係数 \(\mathrm{m\,s^{-1}}\)
\(p_{A,G}\) バルク気相の分圧 \(\mathrm{Pa}\)
\(C_{A,L}\) バルク液相の濃度 \(\mathrm{mol\,m^{-3}}\)
\(p_{A,i},C_{A,i}\) 界面の分圧と濃度 \(\mathrm{Pa},\ \mathrm{mol\,m^{-3}}\)

界面状態 \(p_{A,i}\)、\(C_{A,i}\) は測定しにくいため、バルク間の推進力だけで表せる総括物質移動係数を用います。

気相基準では、

\[
\boxed{
N_A
=
K_G\left(p_{A,G}-p_A^*\right)
}
\]

液相基準では、

\[
\boxed{
N_A
=
K_L\left(C_A^*-C_{A,L}\right)
}
\]

です。

平衡式を \(p_A=HC_A\) とした場合、両側の抵抗は次のようにまとめられます。

\[
\boxed{
\frac{1}{K_G}
=
\frac{1}{k_G}
+
\frac{H}{k_L}
}
\]

\[
\boxed{
\frac{1}{K_L}
=
\frac{1}{k_L}
+
\frac{1}{Hk_G}
}
\]

また、

\[
\boxed{
K_L=H K_G
}
\]

が成り立ちます。

電気回路の直列抵抗と同じように、気相側抵抗と液相側抵抗が足し合わされます。総括係数が小さいほど総括抵抗は大きく、物質移動は遅くなります。
物質移動係数は、推進力を分圧、モル分率、濃度、モル比のどれで表すかによって数値と単位が変わります。式の形だけを覚え、基準の異なる係数を混ぜないようにしましょう。

例題1:総括物質移動係数と流束を求める

ある成分Aが気相から液相へ吸収されています。次の条件で、気相基準の総括物質移動係数 \(K_G\)、モル流束 \(N_A\)、界面濃度 \(C_{A,i}\) を求めます。

  • バルク気相分圧:\(p_{A,G}=15.0\ \mathrm{kPa}\)
  • バルク液相濃度:\(C_{A,L}=0.200\ \mathrm{mol\,m^{-3}}\)
  • ヘンリー定数:\(H=4.00\times10^4\ \mathrm{Pa\,m^3\,mol^{-1}}\)
  • 気相側係数:\(k_G=1.00\times10^{-8}\ \mathrm{mol\,m^{-2}\,s^{-1}\,Pa^{-1}}\)
  • 液相側係数:\(k_L=1.00\times10^{-4}\ \mathrm{m\,s^{-1}}\)

手順1:液相と平衡になる気相分圧を求める

\[
p_A^*
=
HC_{A,L}
=
4.00\times10^4\times0.200
=
8.00\times10^3\ \mathrm{Pa}
\]

実際の気相分圧は \(15.0\ \mathrm{kPa}\)、平衡分圧は \(8.00\ \mathrm{kPa}\) なので、

\[
p_{A,G}>p_A^*
\]

です。したがって、Aは気相から液相へ移動します。

手順2:総括物質移動係数を求める

\[
\frac{1}{K_G}
=
\frac{1}{1.00\times10^{-8}}
+
\frac{4.00\times10^4}{1.00\times10^{-4}}
\]

\[
\frac{1}{K_G}
=
1.00\times10^8
+
4.00\times10^8
=
5.00\times10^8
\]

\[
\boxed{
K_G
=
2.00\times10^{-9}
\ \mathrm{mol\,m^{-2}\,s^{-1}\,Pa^{-1}}
}
\]

総抵抗のうち、気相側は \(1.00/5.00=20\%\)、液相側は \(4.00/5.00=80\%\) です。この条件では液相側抵抗が支配的です。

手順3:モル流束を求める

\[
N_A
=
K_G\left(p_{A,G}-p_A^*\right)
\]

\[
=
2.00\times10^{-9}
\left(1.50\times10^4-8.00\times10^3\right)
\]

\[
\boxed{
N_A
=
1.40\times10^{-5}
\ \mathrm{mol\,m^{-2}\,s^{-1}}
}
\]

正の値なので、設定した正方向どおり気相から液相への吸収です。

手順4:界面状態を求め、両側で検算する

気相側の式から、

\[
p_{A,i}
=
p_{A,G}-\frac{N_A}{k_G}
\]

\[
=
1.50\times10^4

\frac{1.40\times10^{-5}}{1.00\times10^{-8}}
=
1.36\times10^4\ \mathrm{Pa}
\]

界面平衡より、

\[
C_{A,i}
=
\frac{p_{A,i}}{H}
=
\frac{1.36\times10^4}{4.00\times10^4}
\]

\[
\boxed{
C_{A,i}=0.340\ \mathrm{mol\,m^{-3}}
}
\]

液相側から計算すると、

\[
k_L(C_{A,i}-C_{A,L})
=
1.00\times10^{-4}(0.340-0.200)
\]

\[
=
1.40\times10^{-5}
\ \mathrm{mol\,m^{-2}\,s^{-1}}
\]

となり、総括係数から求めた流束と一致します。

液相基準でも確認してみましょう。

\[
K_L=HK_G
=
4.00\times10^4\times2.00\times10^{-9}
=
8.00\times10^{-5}\ \mathrm{m\,s^{-1}}
\]

\[
C_A^*=\frac{p_{A,G}}{H}
=
\frac{1.50\times10^4}{4.00\times10^4}
=
0.375\ \mathrm{mol\,m^{-3}}
\]

\[
N_A
=
8.00\times10^{-5}(0.375-0.200)
=
1.40\times10^{-5}
\ \mathrm{mol\,m^{-2}\,s^{-1}}
\]

気相基準と液相基準で同じ結果になります。

界面積と \(k_La\) の意味

モル流束 \(N_A\) は、単位界面積あたりの移動速度です。界面積を \(A\) とすると、装置全体のモル移動速度は、

\[
\boxed{
\dot{n}_A=N_A A
}
\]

です。

気泡や液滴が多数ある装置では、一つずつ界面積を測るのは困難です。そこで、装置体積 \(V\) あたりの界面積を比界面積 \(a\) とします。

\[
\boxed{
a=\frac{A}{V}
}
\]

\[
[a]
=
\mathrm{m^2\,m^{-3}}
=
\mathrm{m^{-1}}
\]

液相体積あたりの移動速度は、

\[
\frac{\dot{n}_A}{V}
=
N_Aa
\]

\[
\boxed{
\frac{\dot{n}_A}{V}
=
K_La\left(C_A^*-C_A\right)
}
\]

と表せます。

ここで \(K_La\) は、総括物質移動係数 \(K_L\) と比界面積 \(a\) の積です。

\[
[K_La]
=
\mathrm{m\,s^{-1}}\times\mathrm{m^{-1}}
=
\mathrm{s^{-1}}
\]

文献や分野によっては、液相側個別係数を用いた \(k_La\) も広く使われます。大文字の \(K\) は総括係数、小文字の \(k\) は個別係数という区別が一般的ですが、記号の使い方は資料ごとに確認してください。

この記事では、両相の抵抗を含むことを明示する場合は \(K_La\)、液相側の容量係数として慣用的に扱う場合は \(k_La\) と表記します。後述する回分吸収の式では \(k_La\) を、液相側基準の有効容量係数として用います。気相側抵抗を無視できない場合は、総括容量係数 \(K_La\) を用いるか、測定した \(k_La\) がどの抵抗を含む値か確認してください。

\(k_La\) は、「界面を通りやすいか」を表す \(k_L\) と、「界面がどれだけ多いか」を表す \(a\) をまとめた容量係数です。\(k_La\) が大きくなっても、\(k_L\) が増えたのか、界面積 \(a\) が増えたのかは、積だけでは区別できません。

撹拌や気泡の微細化が効く理由

気液撹拌槽で回転速度や通気条件を変えると、一般に次の二つが同時に変化します。

  • 界面近傍の流れが強くなり、境膜が薄くなって \(k_L\) が増える
  • 気泡が細かくなり、単位体積あたりの界面積 \(a\) が増える

そのため、実験では分離しにくい \(k_L\) と \(a\) をまとめ、\(k_La\) として評価することがよくあります。ただし、撹拌を強くすれば必ず有利とは限りません。動力消費、発泡、飛沫同伴、液滴の乳化、せん断損傷などとの両立が必要です。

撹拌槽の流れや動力は、撹拌・混合とは?で詳しく解説しています。

例題2:\(k_La\) から90%到達時間を求める

十分に混合された液体へ、一定組成の気体から成分Aが吸収されるとします。液相内の反応や流出はなく、気相条件から決まる平衡濃度 \(C_A^*\) は一定とします。

液相の物質収支は、

\[
\boxed{
\frac{dC_A}{dt}
=
k_La(C_A^*-C_A)
}
\]

です。

初期濃度を \(C_{A,0}\) とすると、解は、

\[
\boxed{
C_A(t)
=
C_A^*

\left(C_A^*-C_{A,0}\right)
\exp(-k_Lat)
}
\]

となります。

\(k_La=0.0200\ \mathrm{s^{-1}}\)、\(C_{A,0}=0\) のとき、液相濃度が平衡濃度の90%に到達する時間を求めます。

\[
\frac{C_A}{C_A^*}
=
1-\exp(-k_Lat)
=
0.900
\]

\[
\exp(-k_Lat)=0.100
\]

\[
t
=
\frac{-\ln(0.100)}{0.0200}
=
115\ \mathrm{s}
\]

\[
\boxed{
t=115\ \mathrm{s}
\approx1.92\ \mathrm{min}
}
\]

この系の時定数は、

\[
\tau=\frac{1}{k_La}
=
\frac{1}{0.0200}
=
50.0\ \mathrm{s}
\]

です。時定数1個分で最終変化量の約63.2%、約2.30個分で90%へ到達します。

\(k_La\) は \(\mathrm{s^{-1}}\) なので、\(1/(k_La)\) は時間になります。値が大きいほど、平衡状態へ近づく時間が短くなります。

反応や消費がある場合の物質収支

曝気槽で酸素が微生物に消費される場合など、液相へ入った成分が同時に消費されることがあります。単位液体積あたりの消費速度を \(r_{\mathrm{cons}}\) とすると、

\[
\boxed{
\frac{dC_A}{dt}
=
k_La(C_A^*-C_A)

r_{\mathrm{cons}}
}
\]

です。

\(r_{\mathrm{cons}}\) を濃度によらない一定値と仮定した定常状態では、

\[
0
=
k_La(C_A^*-C_{A,\mathrm{ss}})

r_{\mathrm{cons}}
\]

\[
\boxed{
C_{A,\mathrm{ss}}
=
C_A^*

\frac{r_{\mathrm{cons}}}{k_La}
}
\]

となります。

この式は、供給能力 \(k_LaC_A^*\) より消費速度が大きければ、仮定した定常状態を維持できないことも示します。実際には濃度低下によって反応速度が変わるため、反応速度式と組み合わせて解きます。

物質移動速度を大きくする3つの方針

容量基準の式、

\[
\frac{\dot{n}_A}{V}
=
K_La(C_A^*-C_A)
\]

を見ると、物質移動速度を高める方針は三つに整理できます。

方針 方法の例 主な注意点
推進力を大きくする 分圧を上げる、液相濃度を下げる、向流接触にする 圧力、平衡、反応、副生成物
物質移動係数を大きくする 流速や撹拌を上げ、境膜を薄くする 圧力損失、動力、せん断、飛沫同伴
界面積を大きくする 気泡・液滴を細かくする、充填物を使う 合一、乳化、目詰まり、フラッディング

移動係数を相関式で整理するときは、シャーウッド数がよく使われます。

\[
\mathrm{Sh}
=
\frac{k_LL}{D_{AB}}
\]

そして装置形状に応じて、

\[
\mathrm{Sh}
=
f(\mathrm{Re},\mathrm{Sc},\ldots)
\]

のような実験相関式を用います。ここで \(L\) は代表長さ、\(D_{AB}\) は拡散係数です。相関式は装置形状、流動範囲、物性範囲に依存するため、適用範囲の確認が不可欠です。

装置ごとに界面をどう作るか

相間物質移動装置は、限られた体積の中で界面を作り、両相を更新し続ける装置と考えられます。

装置 界面の作り方 特徴
気泡塔 液中へ気泡を分散する 構造が簡単で可動部が少ない
気液撹拌槽 撹拌翼で気泡を分散する 混合と界面更新を強めやすい
充填塔 充填物表面に液膜を広げる 大きな接触面積を得やすい
棚段塔 段上で気泡と液を接触させる 段ごとの接触として扱いやすい
スプレー塔 液滴を気相へ噴霧する 圧力損失が比較的小さい
ミキサーセトラー 液滴を分散後、静置して二相分離する 液液抽出で混合と分離を分けて行う
膜モジュール 薄い膜を通して二つの流体を隔てる 相の混ざりを抑えながら選択的に移動させる

ガス吸収の装置内収支は吸収塔とは?、逆向きの操作は放散塔とは?で学べます。液液系の平衡と多段操作は液液抽出とは?を参照してください。

よくある間違い

1. 異なる相の濃度をそのまま引き算する

\(p_A-C_A\) のような引き算は、物理量も単位も異なるためできません。平衡関係で同じ基準へ換算し、\(p_A-p_A^*\) または \(C_A^*-C_A\) を用います。

2. \(C_A^*\) と界面濃度 \(C_{A,i}\) を混同する

\(C_A^*\) はバルク気相と平衡になる仮想的な液相濃度です。一方、\(C_{A,i}\) は実際の界面液相濃度です。気相側抵抗がゼロでない限り、一般に両者は一致しません。

3. \(k_L\) と \(k_La\) を同じ量だと思う

\(k_L\) は速度の次元 \(\mathrm{m\,s^{-1}}\)、\(k_La\) は時間の逆数 \(\mathrm{s^{-1}}\) です。界面積を含むかどうかが違います。

4. 流束に界面積を掛けず、装置全体の移動量とする

\(N_A\) は単位面積あたりです。全移動速度には界面積 \(A\) を、体積あたりの速度には比界面積 \(a=A/V\) を掛けます。

5. ヘンリー定数の定義と温度を確認しない

定義が逆数なら計算結果も逆方向にずれます。また、同じ成分と溶媒でも温度が変わればヘンリー定数は変化します。データの定義、単位、温度、圧力範囲を確認します。

6. 係数の基準を混ぜる

分圧基準の \(k_G\) と、モル分率基準の総括係数を換算なしで組み合わせることはできません。記号が同じでも定義は資料によって異なります。

7. 撹拌を強くすれば常に最適だと考える

\(k_La\) は増えても、動力消費、発泡、液滴の乳化、せん断損傷、飛沫同伴が悪化する場合があります。目的と制約を同時に評価します。

実装置で確認すること

基礎式を実装置へ使うときは、次の点も確認します。

  • 温度・圧力・組成による相平衡の変化
  • 非理想性、化学反応、電離による見かけの溶解度変化
  • 気泡や液滴の合一・分裂と滞留率
  • 充填物の濡れ面積と偏流
  • 発泡、フラッディング、飛沫同伴、乳化、目詰まり
  • 腐食性、毒性、可燃性物質に対する密閉・換気・防爆
  • 相関式の装置形状、流動範囲、物性範囲

特にヘンリーの法則は希薄系の近似です。高濃度、高圧、強い非理想性、反応を伴う系では、活量係数や状態方程式、化学平衡を含むモデルが必要になります。

確認問題

3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。

QUICK CHECK

1 / 3

物質移動・初級

このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。

まとめ

  • 相間物質移動は、成分が気液・液液・固液など異なる相の界面を越える現象である
  • 界面では局所平衡を仮定しても、バルク相どうしは非平衡なので物質移動が進む
  • \(C_A^*\) はバルク気相と平衡になる液相濃度、\(p_A^*\) はバルク液相と平衡になる気相分圧である
  • 移動方向は \(C_A^*-C_A\) または \(p_A-p_A^*\) の符号で判定できる
  • 総括物質移動係数は、気相側と液相側の抵抗を一つにまとめた係数である
  • 物質流束は \(N_A=K_L(C_A^*-C_A)=K_G(p_A-p_A^*)\) と表せる
  • 装置全体の移動速度には界面積が必要で、容量基準では \(K_La(C_A^*-C_A)\) と表す
  • \(k_La\) は物質移動係数と比界面積の積であり、単位は \(\mathrm{s^{-1}}\) である
  • 十分混合された回分液では、\(1/(k_La)\) が平衡へ近づく時間スケールになる
  • 速度を高める方針は、推進力、物質移動係数、界面積の三つに整理できる

相間物質移動は、吸収、放散、蒸留、抽出、乾燥、吸着、膜分離を同じ視点でつなぐ基礎です。「平衡はどこか」「どの基準の推進力か」「どの抵抗が支配的か」「界面積を含むか」を順番に確認すると、複雑な装置でも式の意味を見失いにくくなります。

理解できたら、問題で確かめよう
かこまるの化工演習室では、化学工学の基礎を分野別の確認テストで復習できます。学習履歴も残せるので、記事を読んだ後のアウトプットに使ってください。
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参考資料

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