粉体の流動性とは?安息角・Carrの圧縮度・Hausner比を例題で解説

粉体の流動性を安息角・Carrの圧縮度・Hausner比から解説する記事のアイキャッチ画像 粉体特性・充填
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砂糖はさらさら流れるのに、片栗粉はスプーンや袋へ付着し、湿った粉は固まりやすくなります。同じ「固体の粒の集まり」でも、粉体によって流れ方は大きく異なります。

この流れやすさを表すのが粉体の流動性です。粉体の流動性は、ホッパーから安定して排出できるか、包装機へ一定量を供給できるか、混合物が偏析しないかといった操作へ直結します。

この記事では、粉体が流れる仕組み、安息角、Carrの圧縮度、Hausner比、漏斗流出時間、せん断試験の考え方を、計算例とともに解説します。

この記事の目標

  • 粉体の流動性が一つの物性値ではない理由を説明できる
  • 安息角を粉体層の高さと半径から計算できる
  • かさ密度とタップ密度からCarrの圧縮度・Hausner比を求められる
  • 簡便な流動性試験とせん断試験の使い分けを説明できる
  • 架橋・ラットホールなど、貯槽で起こる流動障害を理解する
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粉体の流動性とは

粉体の流動性とは、粉体が重力や外力を受けたときに、粒子どうしの位置を変えながら移動するしやすさです。

液体では分子間力より重力や圧力差の影響が大きく、容器形状に沿って連続的に流れます。一方、粉体は粒子どうしが接触しているため、次の力が流れを妨げます。

  • 摩擦力:粒子表面や壁面がこすれるときの抵抗
  • 付着力・凝集力:ファンデルワールス力、液架橋、静電気など
  • かみ合い:角ばった粒子や針状粒子が機械的に引っ掛かる作用
  • 圧密:上部の粉体重量や振動によって粒子が密に詰まる作用

粉体を動かす重力・外力が、これらの抵抗より十分大きければ流れます。抵抗が優勢になると、凝集や閉塞が起こります。

粉体の流動性は、材料だけで決まる固有の定数ではありません。
同じ粉体でも、圧密の程度、湿度、温度、流動速度、装置の材質や形状、試験方法によって結果が変わります。「どの条件で、どの操作に対する流動性を評価したか」を確認することが重要です。

粉体の流動性に影響する要因

要因 流動性が低下しやすい状態 主な理由
粒径 粒径が小さい 粒子重量に対して付着力の影響が相対的に大きくなる
粒子形状 角ばっている、針状である 摩擦や粒子どうしのかみ合いが増える
粒径分布 微粉が多い、凝集体を含む 付着・凝集や圧密が起こりやすい
表面状態 粗い、粘着性がある 接触部の摩擦・付着が大きくなる
含水率・湿度 粒子間に液架橋ができる 水分による凝集力が生じる
静電気 帯電しやすい微粉 粒子どうしや壁面への付着が増える
圧密・保管時間 深い貯槽で長時間保管する 粒子接触が増え、粉体層の強度が高くなる

粒径分布の考え方は「粒径分布とは?平均粒径・累積分布・D10・D50・D90を例題で解説」で解説しています。

図解|安息角と密度変化から、粉体の流動性を評価する

安息角と密度変化から、粉体の流動性を評価する粉体の円すい堆積から安息角を求め、ゆるみかさ密度とタップ密度からCarrの圧縮度とHausner比を計算する図。 θHR 安息角tanθ = H/R ゆるみかさ密度 ρbulk タップ後タップ密度 ρtap 同じ質量 Carr = (ρtap−ρbulk)/ρtap×100  HR = ρtap/ρbulk

一般に安息角、Carrの圧縮度、Hausner比が大きいほど流れにくい傾向です。ただし、測定法や粒子形状、湿度によって値は変わります。

粉体流動性の主な評価方法

評価方法 得られる指標 特徴
安息角 角度 \(\theta\) 簡便で直感的だが、堆積方法の影響を受ける
かさ密度・タップ密度 Carrの圧縮度、Hausner比 圧密されやすさを簡単に比較できる
漏斗流出試験 一定質量の流出時間、質量流量 自由流動性粉体の排出しやすさを比較できる
せん断試験 凝集力、内部摩擦、壁面摩擦、流動関数 ホッパー設計や架橋防止に使える
粉体レオメーター 動的流動エネルギー、通気性など 撹拌・供給・塗布などの動的条件を評価できる

一つの試験ですべての操作を評価することはできません。例えば、漏斗を通過する粉体でも、深いサイロで圧密されると架橋することがあります。

安息角とは

粉体を一定の位置から水平面へ落とすと、円すい状の山ができます。この山の斜面と水平面がつくる角度を安息角と呼びます。

円すいの高さを \(H\)、底面半径を \(R\)、安息角を \(\theta\) とすると、

\[
\tan\theta=\frac{H}{R}
\]

したがって、

\[
\boxed{\theta=\tan^{-1}\left(\frac{H}{R}\right)}
\]

です。

粉体の付着や摩擦が小さければ、粒子は斜面を滑り落ち、低く広い山になります。反対に、凝集力や摩擦が大きければ、急な斜面を保てるため安息角が大きくなります。

安息角は試料固有の唯一の値ではありません。
漏斗の高さ・出口径、供給速度、基板の粗さ、試料量、静的か動的かによって値が変わります。異なる装置や手順の測定値を、そのまま比較しないようにしましょう。

例題1:安息角を求める

例題
粉体を漏斗から堆積させたところ、高さ \(H=7.50\ \mathrm{cm}\)、底面半径 \(R=12.0\ \mathrm{cm}\) の円すい状の山ができました。安息角を求めてください。

\[
\tan\theta
=\frac{7.50}{12.0}
=0.625
\]

\[
\theta
=\tan^{-1}(0.625)
=32.0^\circ
\]

答え:安息角は \(32.0^\circ\) です。
この値だけで装置内の流れを断定せず、同一手順で測定した別試料との比較指標として使います。

Carrの圧縮度とは

粉体を容器へ自然に入れたときのゆるみかさ密度を \(\rho_{\mathrm{b}}\)、タッピング後の密度を \(\rho_{\mathrm{tap}}\) とします。

粉体が圧密によってどの程度体積を減らすかを表す指標が、Carrの圧縮度です。

\[
\boxed{
C
=\frac{\rho_{\mathrm{tap}}-\rho_{\mathrm{b}}}
{\rho_{\mathrm{tap}}}\times100
}
\]

タッピング前後の密度差が小さければ、粉体は最初から比較的安定して充填されています。密度差が大きければ、振動によって粒子が大きく再配列する、圧密されやすい粉体と考えられます。

Hausner比とは

Hausner比 \(H_{\mathrm{R}}\) は、タップ密度をゆるみかさ密度で割った値です。

\[
\boxed{
H_{\mathrm{R}}
=\frac{\rho_{\mathrm{tap}}}{\rho_{\mathrm{b}}}
}
\]

タッピングによる体積変化がほとんどなければ、Hausner比は1に近づきます。圧密による体積変化が大きいほど、Hausner比は大きくなります。

Carrの圧縮度とHausner比は、次の関係で結ばれています。

\[
C
=\left(1-\frac{1}{H_{\mathrm{R}}}\right)\times100
\]

ASTM D6393/D6393M-25では、安息角、ゆるみかさ密度、充填後のかさ密度、圧縮度などを含むCarr指標によって粉体・粒状体を評価します。

例題2:Carrの圧縮度とHausner比を求める

例題
ある粉体のゆるみかさ密度が \(620\ \mathrm{kg/m^3}\)、タップ密度が \(775\ \mathrm{kg/m^3}\) でした。Carrの圧縮度とHausner比を求めてください。

Carrの圧縮度

\[
C
=\frac{775-620}{775}\times100
=20.0\%
\]

Hausner比

\[
H_{\mathrm{R}}
=\frac{775}{620}
=1.25
\]

答え

  • Carrの圧縮度:\(20.0\%\)
  • Hausner比:\(1.25\)

この粉体はタッピングによって密度が25%増加しています。測定条件をそろえた比較では、圧密による構造変化が無視できない粉体と判断できます。

かさ密度・タップ密度・空隙率の関係は「粉体の密度と空隙率とは?真密度・粒子密度・かさ密度を例題で解説」で詳しく解説しています。

安息角・Carrの圧縮度・Hausner比の読み方

指標 流れやすい傾向 凝集・圧密しやすい傾向
安息角 小さい 大きい
Carrの圧縮度 小さい 大きい
Hausner比 1に近い 1より大きく離れる

教科書や業界資料には「良好」「不良」などの区分表が掲載されることがあります。ただし、境界値は測定手順・分野・粉体の種類によって異なります。

数値の大小より、同じ条件で測った相対比較を重視しましょう。
原料ロット間の比較、乾燥前後の比較、微粉除去前後の比較など、目的と条件をそろえると簡便な指標が役立ちます。

漏斗流出試験

漏斗流出試験では、規定形状の漏斗から一定質量の粉体が流れ出る時間を測ります。流出時間を \(t\)、試料質量を \(m\) とすると、平均質量流量は、

\[
\dot{m}=\frac{m}{t}
\]

です。

同じ装置・試料質量であれば、流出時間が短いほど大きな流量で排出されたことを表します。

ISO 4490:2018では、金属粉を校正済みのHall流量計用漏斗で評価する方法が示されています。ただし、規定の開口から自力で流れない粉体には適用できません。

流れなかった場合の解釈

「時間が無限大だった」と単純に扱うのではなく、次の可能性を検討します。

  • 粒子間の凝集力が大きい
  • 漏斗出口に架橋ができた
  • 粒径が出口径に対して大きい
  • 粒子形状によるかみ合いが起きた
  • 水分・静電気・壁面付着の影響がある

漏斗を通らない粉体について、漏斗をたたくなど規定外の操作を加えると、別の試験になってしまいます。目的に応じて、出口径の異なる規格やせん断試験を選びます。

せん断試験と流動関数

安息角やHausner比は簡便ですが、貯槽内で粉体が受ける圧密応力を直接再現するものではありません。ホッパーの出口寸法や壁面角度を検討するときには、せん断試験が使われます。

せん断セルでは、粉体へ垂直応力を加えて圧密し、その状態で粉体層を横方向へずらすために必要なせん断応力を測ります。これにより、次の値を評価できます。

  • 粉体の凝集力
  • 内部摩擦角
  • 壁面摩擦
  • 一軸崩壊応力
  • 流動関数

代表的な流動性指標の一つが、流動関数係数 \(ff_{\mathrm{c}}\) です。

\[
ff_{\mathrm{c}}
=\frac{\sigma_1}{\sigma_{\mathrm{c}}}
\]

ここで、\(\sigma_1\) は粉体を圧密した主応力、\(\sigma_{\mathrm{c}}\) は圧密後の粉体が自立状態で崩壊するときの一軸崩壊応力です。

\(ff_{\mathrm{c}}\) が大きいほど、圧密応力に対して粉体層の強度が小さく、流れやすい傾向を示します。

ASTM D6128-22ではJenikeせん断試験による凝集強度、内部摩擦、かさ密度、壁面摩擦などの測定が扱われ、ビンやホッパーの架橋・ラットホール防止へ利用されます。

ホッパー・貯槽で起こる流動障害

架橋(アーチング、ブリッジ)

出口の上に粉体がアーチ状の構造を作り、その構造が上部の粉体重量を支える現象です。出口が完全にふさがり、排出が停止します。

ラットホール

出口直上の粉体だけが流れ、周囲の粉体が壁のように残る現象です。中央に細い穴ができる様子がネズミの通り道に似るため、ラットホールと呼ばれます。

フラッシング・フラッディング

微粉体へ空気が入り、粉体層が流体のようになって、制御できない速さで噴き出す現象です。見かけ上「よく流れる」状態でも、安全で安定した定量供給とは限りません。

偏析

粒径や密度の異なる粒子が、流動中に分離する現象です。成分濃度が場所によって変わり、製品品質のばらつきにつながります。

粉体の流動性を改善する方法

対策 考え方 注意点
微粉を減らす・造粒する 付着力に対する粒子重量を大きくする 溶解性・反応性・製品仕様との両立が必要
含水率を管理する 液架橋やケーキングを抑える 乾燥しすぎると静電気が増える場合がある
流動化剤を添加する 粒子間接触や摩擦を変える 添加物の許容性と混合均一性を確認する
ホッパー出口を大きくする 安定な架橋が形成されにくくする 必要寸法はせん断試験と設計計算で決める
壁面を急勾配・低摩擦にする 壁際まで動くマスフローを促す 粉体と壁材の組み合わせで摩擦が変わる
振動・エアレーションを使う 架橋を崩し、粒子を動かす 振動が圧密や偏析を悪化させる場合がある
流動助剤や振動装置を先に選ぶのではなく、原因を特定してから対策を選びます。
架橋、ラットホール、壁面摩擦、空気巻き込み、偏析では有効な対策が異なります。

流動性を評価するときの手順

  1. 目的を決める:品質比較、定量供給、ホッパー設計、混合・偏析評価など
  2. 実工程の条件を整理する:圧密応力、保管時間、湿度、温度、流速、壁材
  3. 簡便試験で比較する:安息角、かさ密度、タップ密度、漏斗流出時間
  4. 流動障害の種類を観察する:架橋、ラットホール、フラッシング、偏析
  5. 必要ならせん断試験を行う:凝集力、壁面摩擦、流動関数を取得する
  6. 同一手順で再評価する:原料変更や対策前後の違いを確認する

よくある間違い

安息角だけでホッパーを設計する

安息角は自由表面の傾斜を表しますが、圧密された粉体の強度や壁面摩擦を直接表しません。ホッパー設計では、せん断試験を含む適切な設計データを使います。

Hausner比を材料固有の定数と考える

タップ回数、容器寸法、試料量、前処理によって値は変わります。試験条件を記録し、同じ条件で比較します。

漏斗を流れない粉体を「流量ゼロ」とだけ記録する

出口径と粒径の関係、架橋、凝集、壁面付着を確認します。流れないこと自体が重要な観察結果です。

振動を加えれば必ず改善すると考える

振動は一時的に架橋を崩す一方、粉体を圧密したり粒径偏析を促したりする場合があります。実工程に近い条件で検証します。

確認問題

3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。

QUICK CHECK

1 / 3

粉体工学・初級

このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。

まとめ

  • 粉体の流動性は、重力・外力と摩擦・凝集・かみ合い・圧密のバランスで決まる
  • 流動性は測定条件と操作条件に依存し、一つの固有値では表せない
  • 安息角は \(\theta=\tan^{-1}(H/R)\) で求める
  • Carrの圧縮度は、ゆるみかさ密度とタップ密度の差を表す
  • Hausner比は \(\rho_{\mathrm{tap}}/\rho_{\mathrm{b}}\) で、1に近いほど体積変化が小さい
  • 漏斗流出試験は自由流動性粉体の比較に使えるが、流れない粉体には適用できない
  • ホッパー設計や架橋・ラットホール対策には、凝集力と壁面摩擦を測るせん断試験が重要である

参考資料

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