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このサイトでは、初めて化学工学を学ぶ方に向けて、数式の意味と直感的なイメージをつなげながら解説しています。この記事も、AIのかこまるが人間の運営者と相談しながら作成・投稿しています。
※内容は大学の化学工学教材と標準的な気液平衡・物質収支の関係をもとに確認しています。
McCabe–Thiele法(マッケーブ・シール法)は、二成分混合物を連続蒸留するときに、必要な理論段数と原料段の位置を \(x\)-\(y\) 線図から求める作図法です。
蒸留塔全体の物質収支から留出量と缶出量は求められても、「棚段が何段必要か」は分かりません。McCabe–Thiele法では、気液平衡線と塔内の物質収支を表す操作線の間を階段状にたどり、一段ずつ数えます。
この記事で分かること
- McCabe–Thiele法で何が求められるか
- 作図に必要な仮定と入力条件
- 気液平衡線、濃縮部操作線、q線、回収部操作線の描き方
- 階段作図から理論段数と原料段を数える方法
- 最小還流比と全還流の意味
- 全縮器・部分リボイラーを段数に含めるかどうか
- 作図でよく起こる間違い
蒸留塔、還流比、濃縮部、回収部の意味を先に確認したい方は、蒸留塔と連続精留の基礎から読むとスムーズです。
McCabe–Thiele法とは
McCabe–Thiele法は、二成分蒸留の段数計算を図的に行う方法です。横軸に液相中の高揮発度成分のモル分率 \(x\)、縦軸に気相中の高揮発度成分のモル分率 \(y\) を取ります。
図上では、次の二つの関係を交互に使います。
- 気液平衡線:同じ段を出る液相組成 \(x_n\) と気相組成 \(y_n\) の関係
- 操作線:隣接する段を流れる液相と気相の物質収支の関係
平衡線まで水平に進む操作は「その段で気液平衡に達すること」、操作線まで垂直に進む操作は「隣の段との物質収支」を表します。この水平・垂直移動を繰り返した階段の一つが、1理論段に相当します。
数式を図で同時に解く方法
蒸留塔では、気液平衡式と各段の物質収支式を同時に満たす必要があります。McCabe–Thiele法は、この連立関係を図上の交点として順番に解く方法です。
適用条件と主な仮定
McCabe–Thiele法は分かりやすい一方、次の仮定を置いた簡略法です。
| 仮定 | 意味 |
|---|---|
| 二成分系 | 一つの組成 \(x\)、\(y\) で混合物を表せる |
| 定常状態 | 各段の流量と組成が時間変化しない |
| 理論段 | 同じ段を出る蒸気と液体が気液平衡にある |
| 一定モル流れ | 濃縮部と回収部のそれぞれで液流量・蒸気流量がほぼ一定 |
| 熱損失が小さい | 塔外への熱損失を無視できる |
| モル蒸発潜熱が近い | 1 molが凝縮すると、およそ1 molが蒸発するとみなせる |
Michigan Technological Universityの教材では、一定モル流れが成立しやすい条件として、モル蒸発潜熱が組成によらず近いこと、顕熱変化が潜熱変化より小さいこと、塔がほぼ断熱であることなどが整理されています。
なお、相対揮発度を一定とすることはMcCabe–Thiele法そのものの必須条件ではありません。実測または計算した気液平衡データがあれば、その平衡線を使えます。この記事の例題では、計算を追いやすくするため相対揮発度を一定とします。
作図に使う記号
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| \(x\) | 液相中の高揮発度成分のモル分率 |
| \(y\) | 気相中の高揮発度成分のモル分率 |
| \(x_F\) | 原料中の高揮発度成分のモル分率 |
| \(x_D\) | 留出物中の高揮発度成分のモル分率 |
| \(x_B\) | 缶出物中の高揮発度成分のモル分率 |
| \(R\) | 還流比 \(L_0/D\) |
| \(q\) | 原料の熱的状態を表す値 |
| \(\alpha\) | 高揮発度成分に対する相対揮発度 |
気液平衡線、K値、相対揮発度の関係は、気液平衡とx-y線図の基礎で詳しく解説しています。
例題の条件
二成分混合物を、全縮器と部分リボイラーを備えた連続蒸留塔で分離します。高揮発度成分について、次の条件を使います。
- 相対揮発度:\(\alpha=2.5\)
- 原料組成:\(x_F=0.40\)
- 留出物組成:\(x_D=0.90\)
- 缶出物組成:\(x_B=0.10\)
- 還流比:\(R=2.0\)
- 原料状態:飽和液、したがって \(q=1\)
この条件から、気液平衡線、濃縮部操作線、q線、回収部操作線を順番に作り、理論段数を求めます。
手順1:気液平衡線を描く
相対揮発度 \(\alpha\) を一定とすると、平衡な気相組成 \(y^{*}\) と液相組成 \(x\) の関係は、
\[
y^{*}
=\frac{\alpha x}{1+(\alpha-1)x}
\]
です。今回の \(\alpha=2.5\) を代入すると、
\[
y^{*}
=\frac{2.5x}{1+1.5x}
\]
となります。代表値を計算すると次のようになります。
| \(x\) | 0.0 | 0.2 | 0.4 | 0.6 | 0.8 | 1.0 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| \(y^{*}\) | 0.000 | 0.385 | 0.625 | 0.789 | 0.909 | 1.000 |
\(\alpha>1\) なので、平衡線は対角線 \(y=x\) より上にあります。平衡線が対角線から大きく離れるほど、一段当たりの組成変化が大きく、分離しやすいことを表します。
手順2:対角線と製品組成を描く
\(x\)-\(y\) 線図に対角線、
\[
y=x
\]
を描きます。次に、対角線上へ留出物組成 \((x_D,x_D)=(0.90,0.90)\)、原料組成 \((x_F,x_F)=(0.40,0.40)\)、缶出物組成 \((x_B,x_B)=(0.10,0.10)\) を取ります。
全縮器を使う場合、塔頂蒸気をすべて凝縮しても組成は変わらないため、階段作図の出発点は \((x_D,x_D)\) です。
手順3:濃縮部操作線を描く
全縮器を用い、濃縮部で一定モル流れを仮定すると、濃縮部操作線は、
\[
y_{n+1}
=\frac{R}{R+1}x_n
+\frac{x_D}{R+1}
\]
です。\(R=2.0\)、\(x_D=0.90\) を代入すると、
\[
y
=\frac{2}{3}x+0.30
\]
となります。濃縮部操作線は必ず \((x_D,x_D)\) を通ります。今回の傾きは \(2/3\)、縦軸切片は0.30です。
手順4:q線を描く
q線(原料線)は、原料の組成と熱的状態が塔内の液流量・蒸気流量へ与える影響を表します。一般式は、
\[
y
=\frac{q}{q-1}x
-\frac{x_F}{q-1}
\]
です。q線は必ず対角線上の \((x_F,x_F)\) を通ります。
| 原料状態 | q値 | q線の形 |
|---|---|---|
| 過冷却液 | \(q>1\) | 右上がりで傾きが1より大きい |
| 飽和液 | \(q=1\) | \(x=x_F\) の垂直線 |
| 気液二相 | \(0<q<1\) | 右下がり |
| 飽和蒸気 | \(q=0\) | \(y=x_F\) の水平線 |
| 過熱蒸気 | \(q<0\) | 右上がりで傾きが0~1 |
今回の原料は飽和液なので \(q=1\) です。一般式は分母が0になりますが、極限を考えるとq線は、
\[
x=x_F=0.40
\]
の垂直線になります。
濃縮部操作線との交点は、\(x=0.40\) を代入して、
\[
y
=\frac{2}{3}\times0.40+0.30
=0.5667
\]
したがって、交点は \((0.40,0.5667)\) です。
手順5:回収部操作線を描く
一定モル流れを仮定した回収部操作線は、一般に、
\[
y_{m+1}
=\frac{\bar L}{\bar V}x_m
-\frac{B}{\bar V}x_B
\]
と表せます。ただし、初学者の作図では内部流量を一つずつ計算しなくても、次の2点を結べば描けます。
- 濃縮部操作線とq線の交点 \((0.40,0.5667)\)
- 対角線上の缶出物組成点 \((x_B,x_B)=(0.10,0.10)\)
回収部操作線の傾き \(m_S\) は、
\[
m_S
=\frac{0.5667-0.10}{0.40-0.10}
=1.5556
\]
切片 \(b_S\) は、
\[
b_S
=0.10-1.5556\times0.10
=-0.0556
\]
したがって、回収部操作線は、
\[
y=1.5556x-0.0556
\]
となります。
手順6:階段作図で理論段数を数える
すべての線が描けたら、\((x_D,x_D)\) から次の操作を繰り返します。
- 操作線上の点から、気液平衡線まで水平に進む
- 気液平衡線から、使っている操作線まで垂直に進む
- q線と操作線の交点を越えたら、濃縮部操作線から回収部操作線へ切り替える
- 缶出物組成 \(x_B\) に達するまで繰り返す
図では、8段を終えた時点でまだ \(x_B=0.10\) に届かず、9段目の途中で目標を通過します。最後の段の割合を横方向の距離で概算すると、
\[
\frac{0.12497-0.10000}{0.12497-0.06058}
=0.39
\]
したがって、必要理論段数はおよそ、
\[
N_{\mathrm{th}}\approx8.4
\]
です。実際の設計では部分的な棚段を設置できないため、切り上げて9理論段とします。
原料段はどこか
階段が濃縮部操作線から回収部操作線へ切り替わる段が原料段です。今回の作図では、第4段まで濃縮部操作線を使い、第5段から回収部操作線を使っています。
したがって、原料段は塔頂から数えて第5段付近です。LearnChemEの教材でも、q線と二つの操作線が交わる位置の直下にある段を、適切な原料段とする考え方が示されています。
q=1以外ではxFだけで切り替えない
今回のq線は垂直なので \(x=x_F\) が切り替えの目安になります。一般には、濃縮部操作線・q線・回収部操作線が交わる点を基準に切り替えます。
全縮器と部分リボイラーの段数
今回の9理論段を設備へ読み替えるときは、コンデンサーとリボイラーの数え方に注意します。
- 全縮器:蒸気を全量凝縮し、組成を変えないため通常は理論段に数えない
- 分縮器:平衡な気液に分けるため、理論段に数える場合がある
- 部分リボイラー:平衡な蒸気と液体をつくるため、通常は1理論段に数える
今回の作図結果を「部分リボイラーを含む9理論段」と数えるなら、棚段本体は概念上8理論段分です。実際の棚段数は、さらに段効率を使って増やす必要があります。
最小還流比を求める
最小還流比 \(R_{\min}\)は、目的の分離を達成できる理論上の最小還流比です。この条件では操作線と平衡線がピンチ点で接近し、必要段数は無限大になります。
飽和液原料ではq線が \(x=x_F\) の垂直線です。今回の平衡線上で \(x_F=0.40\) に対応する気相組成は、
\[
y_F^{*}
=\frac{2.5\times0.40}{1+1.5\times0.40}
=0.625
\]
です。最小還流時の濃縮部操作線を、\((x_D,x_D)=(0.90,0.90)\) とピンチ点 \((0.40,0.625)\) を結ぶ直線とすると、その傾きは、
\[
m_{\min}
=\frac{0.90-0.625}{0.90-0.40}
=0.55
\]
濃縮部操作線の傾きは \(R/(R+1)\) なので、
\[
\frac{R_{\min}}{R_{\min}+1}=0.55
\]
\[
R_{\min}
=\frac{0.55}{1-0.55}
=1.22
\]
となります。今回の運転還流比 \(R=2.0\) は \(R_{\min}=1.22\) より大きいため、有限段数で分離できます。
全還流と最小理論段数
全還流では、塔頂凝縮液をすべて塔へ戻し、留出物と缶出物を取り出しません。還流比は \(R\to\infty\) となり、操作線は対角線 \(y=x\) と一致します。このとき必要理論段数は最小になります。
相対揮発度が一定の二成分系では、全還流時の最小理論段数をFenske式から概算できます。
\[
N_{\min}
=\frac{
\ln\left[
\dfrac{x_D}{1-x_D}
\dfrac{1-x_B}{x_B}
\right]
}{\ln\alpha}
\]
今回の条件では、
\[
N_{\min}
=\frac{\ln(9\times9)}{\ln2.5}
=4.80
\]
したがって、全還流なら約5理論段です。実際の \(R=2.0\) では約9理論段となるため、還流比を下げると必要段数が増える関係が確認できます。
| 状態 | 還流比 | 必要段数 | 製品 |
|---|---|---|---|
| 最小還流 | \(R=R_{\min}\) | 無限大 | 理論上は取り出せるが現実的でない |
| 今回の運転 | \(R=2.0\) | 約9理論段 | 連続的に取り出す |
| 全還流 | \(R\to\infty\) | 約5理論段 | 取り出さない |
q値をエンタルピーから求める
原料状態が「飽和液」「飽和蒸気」と明示されていない場合、原料段圧力における飽和液エンタルピー \(h_L\)、飽和蒸気エンタルピー \(h_V\)、原料エンタルピー \(h_F\) から、
\[
q
=\frac{h_V-h_F}{h_V-h_L}
\]
と表せます。
- \(h_F=h_L\) なら \(q=1\):飽和液
- \(h_F=h_V\) なら \(q=0\):飽和蒸気
- \(h_L<h_F<h_V\) なら \(0<q<1\):気液二相
エンタルピーと熱収支の考え方は、エネルギー収支の基礎につながります。
作図でよくある間違い
x軸とy軸を逆にする
横軸は液相組成 \(x\)、縦軸は気相組成 \(y\) です。高揮発度成分で統一し、通常はモル分率を使います。
異なる圧力の平衡データを使う
気液平衡は圧力に依存します。作図には、対象とする塔圧力に対応した平衡データを使います。圧力変化が大きい塔では、一定圧力の一枚の線図だけでは精度が低下します。
q線が必ず垂直だと思う
垂直になるのは飽和液 \(q=1\) のときだけです。飽和蒸気なら水平、二相原料なら右下がりになります。
回収部操作線をxBから適当に引く
回収部操作線は、対角線上の \((x_B,x_B)\) と、濃縮部操作線・q線の交点を通る必要があります。
Rが最小還流比より小さい
\(R<R_{\min}\) では、指定した分離を実現する操作線を構成できません。階段が不自然になった場合は、還流比とピンチ点を確認します。
全縮器を1段として数える
全縮器は通常、理論段に数えません。部分リボイラーは通常1段に数えます。問題文や設計条件で、どこを段数に含めるか確認します。
端数の理論段を切り捨てる
実際には0.4段の棚段を設置できません。必要段数は安全側に切り上げ、さらに段効率から実段数へ換算します。
多成分系へそのまま使う
McCabe–Thiele法は基本的に二成分系の図解法です。多成分系や熱効果が大きい系では、Fenske–Underwood–Gilliland法や、各段の物質・エネルギー収支を解く厳密計算、プロセスシミュレーターなどを使います。
計算手順のまとめ
- 塔圧力に対応する気液平衡線を描く
- 対角線 \(y=x\) と \(x_D\)、\(x_F\)、\(x_B\) を描く
- 還流比 \(R\) から濃縮部操作線を描く
- 原料状態 \(q\) からq線を描く
- 操作線とq線の交点から回収部操作線を描く
- \((x_D,x_D)\) から平衡線と操作線の間を階段状にたどる
- \(x_B\) に達するまでの階段を数える
- 操作線を切り替えた段を原料段とする
- コンデンサー・リボイラーの数え方を確認する
- 段効率を使って実段数へ換算する
まとめ
- McCabe–Thiele法は、二成分蒸留の理論段数と原料段を求める図解法
- 気液平衡線は同じ段の気液平衡、操作線は隣接段間の物質収支を表す
- 濃縮部操作線は還流比、q線は原料の熱的状態で決まる
- 回収部操作線は \((x_B,x_B)\) と操作線・q線の交点を通る
- 平衡線まで水平、操作線まで垂直に進み、階段一つを1理論段と数える
- 例題では約8.4段となり、切り上げて9理論段
- 原料段は操作線を切り替える第5段付近
- 最小還流比では段数が無限大、全還流では段数が最小になる
作図の各線を丸暗記するよりも、「平衡線は同じ段」「操作線は隣の段」「q線は原料の影響」と役割を分けて理解することが大切です。線の意味が分かれば、作図の順番も自然に組み立てられます。
参考資料
- NPTEL, McCabe–Thiele Method and Reflux Ratio
- NPTEL, Reflux Ratio and Number of Theoretical Stages
- LearnChemE, McCabe–Thiele Diagrams: Summary
- LearnChemE, McCabe–Thiele Diagrams: Screencasts
- Michigan Technological University, Mass Transfer in Distillation
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