化学工学の基礎を、原理・数式と直感的なイメージの両面から、初学者にもわかりやすくお届けします。
この記事は、AIのかこまるが本文と画像を作成し、人間のサイト管理者が内容を確認して投稿・公開しています。
配管が細くなると流速が上がる。タンクへの流入が流出より多ければ液位が上がる。ある場所で流体の密度が増えるなら、その周囲から質量が流れ込んでいる。
これらはすべて、質量は突然生まれたり消えたりしないという質量保存則から説明できます。この保存則を流体の各位置で成り立つ数式にしたものが、連続の式です。
初学者向けの記事では、連続の式を \(A_1v_1=A_2v_2\) と習うことが多いでしょう。しかし、これは定常・一次元・密度一定という条件を加えた特別な形です。一般形は密度の時間変化や三次元の流れを含む偏微分方程式になります。
- 連続の式が質量保存則を表す理由
- 検査体積に対する積分形の連続の式
- 微小体積と発散定理から微分形を導く方法
- 圧縮性・非圧縮性、定常・非定常の違い
- \(\rho Av=\mathrm{constant}\) と \(Av=\mathrm{constant}\) の使い分け
- 全体質量収支と成分収支の違い
- 配管、タンク、分流に対する計算方法
流量・流速・断面積の基本関係を先に確認したい方は、流量・流速と連続の式を参照してください。本記事では、その関係を一般化し、連続の式の積分形と微分形を導きます。
- 連続の式とは
- 連続の式に登場する量
- 積分形の連続の式
- 積分形から微分形を導く
- 微小直方体の収支から導く
- 発散は「その場所から湧き出す度合い」
- 物質微分を使った形
- 非圧縮性流体では速度の発散がゼロになる
- 定常流れでは蓄積項が消える
- 一次元の配管では \(\rho Av\) が保存される
- 計算例1:密度が変わる気体の流速
- 非定常タンクでは蓄積項を残す
- 計算例2:流入・流出によるタンク液位の変化
- 分岐・合流ではすべての流入口と流出口を数える
- 全体質量収支だけでは組成は求められない
- 計算例3:分流後の組成を求める
- 成分の連続の式
- 連続の式は他の輸送方程式の土台になる
- 円筒座標では式の形が変わる
- 連続の式を使う手順
- よくある間違い
- 確認問題
- まとめ
- 参考資料
- この記事の情報と検証方針
連続の式とは
連続の式は、流体に対する質量保存則です。固定された領域を観察したとき、その内部の質量が増える速さは、外から流入する質量流量と外へ流出する質量流量の差に等しくなります。
流出を正にまとめれば、
と表せます。この単純な収支を、有限の装置全体に適用したものが積分形、空間内の各点に適用したものが微分形です。
非定常なタンクでは内部の質量が時間とともに増減します。また、圧縮性流体では体積流量が場所によって変化することがあります。それでも、蓄積を含めた質量保存則として連続の式は成立します。
連続の式に登場する量
| 記号 | 意味 | SI単位 |
|---|---|---|
| \(\rho\) | 流体の密度 | \(\mathrm{kg/m^3}\) |
| \(\boldsymbol{u}\) | 速度ベクトル | \(\mathrm{m/s}\) |
| \(\boldsymbol{n}\) | 検査面の外向き単位法線ベクトル | 無次元 |
| \(dV\) | 微小体積 | \(\mathrm{m^3}\) |
| \(dA\) | 微小面積 | \(\mathrm{m^2}\) |
| \(\rho\boldsymbol{u}\) | 質量流束ベクトル | \(\mathrm{kg/(m^2\,s)}\) |
| \(\dot m\) | 質量流量 | \(\mathrm{kg/s}\) |
面に垂直な速度成分は \(\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}\) です。外向きに流れると正、内向きに流れると負になります。したがって、
\[
\rho\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}\,dA
\]
は、微小面 \(dA\) から外へ出る質量流量を表します。
積分形の連続の式
空間に固定した検査体積を \(CV\)、その境界である検査面を \(CS\) とします。検査体積内の質量は、
\[
m_{CV}=\int_{CV}\rho\,dV
\]
です。内部質量の時間変化と、検査面からの正味流出を足すとゼロになるため、積分形の連続の式は、
\boxed{
\frac{d}{dt}\int_{CV}\rho\,dV
+
\oint_{CS}
\rho\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}\,dA
=0
}
\]
となります。
| 項 | 意味 |
|---|---|
| \(\displaystyle \frac{d}{dt}\int_{CV}\rho\,dV\) | 検査体積内の質量の蓄積速度 |
| \(\displaystyle \oint_{CS}\rho\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}\,dA\) | 検査面から外へ出る正味質量流量 |
流入面では \(\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}<0\) なので表面積分へ負の寄与をし、流出面では正の寄与をします。この符号規則により、「蓄積+流出-流入=0」が一つの式に含まれます。
検査体積自体が移動・変形する場合は、検査面に対する相対速度を用います。本記事では配管・タンクなど、空間に固定した検査体積を扱います。
積分形から微分形を導く
固定検査体積では、積分範囲が時間によって動かないため、
\[
\frac{d}{dt}\int_{CV}\rho\,dV
=
\int_{CV}\frac{\partial\rho}{\partial t}\,dV
\]
と書けます。
次に、発散定理を使うと、検査面を通る質量流束は、
\[
\oint_{CS}
\rho\boldsymbol{u}\cdot\boldsymbol{n}\,dA
=
\int_{CV}
\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})\,dV
\]
と体積積分へ変換できます。
したがって積分形は、
\[
\int_{CV}
\left[
\frac{\partial\rho}{\partial t}
+
\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})
\right]dV
=0
\]
となります。この式が任意の検査体積で成立するためには、積分の中身が各位置でゼロでなければなりません。よって、
\boxed{
\frac{\partial\rho}{\partial t}
+
\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})
=0
}
\]
を得ます。これが連続の式の微分形です。
Cartesian座標で展開する
速度ベクトルを、
\[
\boldsymbol{u}=(u,v,w)
\]
とすると、三次元Cartesian座標では、
\[
\boxed{
\frac{\partial\rho}{\partial t}
+
\frac{\partial(\rho u)}{\partial x}
+
\frac{\partial(\rho v)}{\partial y}
+
\frac{\partial(\rho w)}{\partial z}
=0
}
\]
です。
右向き、上向き、奥向きの各方向について、「単位体積あたりの正味流出」を足したものが密度の減少速度に等しいと解釈できます。
微小直方体の収支から導く
発散定理を使わず、辺の長さが \(dx\)、\(dy\)、\(dz\) の微小直方体を考えても同じ式を導けます。
\(x\) 方向の左面から入る質量流量は、
\[
(\rho u)_x\,dy\,dz
\]
です。右面から出る質量流量をTaylor展開の一次項までで表すと、
\[
\left[
(\rho u)_x
+
\frac{\partial(\rho u)}{\partial x}dx
\right]dy\,dz
\]
です。したがって、\(x\) 方向の正味流出は、
\[
\frac{\partial(\rho u)}{\partial x}
dx\,dy\,dz
\]
となります。同様に \(y\)、\(z\) 方向も考えると、全正味流出は、
\[
\left[
\frac{\partial(\rho u)}{\partial x}
+
\frac{\partial(\rho v)}{\partial y}
+
\frac{\partial(\rho w)}{\partial z}
\right]dx\,dy\,dz
\]
です。
一方、直方体内の質量蓄積速度は、
\[
\frac{\partial\rho}{\partial t}
dx\,dy\,dz
\]
です。「蓄積+正味流出=0」とし、体積 \(dx\,dy\,dz\) で割れば、Cartesian座標の連続の式が得られます。
発散は「その場所から湧き出す度合い」
\(\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})\) は、質量流束の発散です。小さな体積から出ていく質量が入ってくる質量より多ければ、発散は正になります。
連続の式から、
\[
\frac{\partial\rho}{\partial t}
=-\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})
\]
なので、正味流出が正なら、その場所の密度は時間とともに低下します。反対に、周囲から質量が集まる場所では発散が負となり、密度は増加します。
この関係は、Fickの第2法則を導いた、
\[
\frac{\partial C_A}{\partial t}
=-\nabla\cdot\boldsymbol{J}_A
\]
と同じ構造です。詳しくはFickの第1法則・第2法則を参照してください。
物質微分を使った形
積の発散を展開すると、
\[
\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})
=
\boldsymbol{u}\cdot\nabla\rho
+
\rho\nabla\cdot\boldsymbol{u}
\]
です。これを連続の式へ代入すると、
\[
\frac{\partial\rho}{\partial t}
+
\boldsymbol{u}\cdot\nabla\rho
+
\rho\nabla\cdot\boldsymbol{u}
=0
\]
となります。
流体粒子と一緒に移動しながら観察した密度変化、すなわち物質微分は、
\[
\frac{D\rho}{Dt}
=
\frac{\partial\rho}{\partial t}
+
\boldsymbol{u}\cdot\nabla\rho
\]
なので、
\boxed{
\frac{D\rho}{Dt}
+
\rho\nabla\cdot\boldsymbol{u}
=0
}
\]
とも表せます。
この形は、密度変化と流体要素の膨張・収縮の関係を示します。流体要素が膨張して \(\nabla\cdot\boldsymbol{u}>0\) なら、粒子を追跡した密度は低下します。
非圧縮性流体では速度の発散がゼロになる
非圧縮性とは、流体粒子を追跡したときに密度が変わらないことです。
\[
\frac{D\rho}{Dt}=0
\]
これを物質微分形の連続の式へ代入すると、\(\rho>0\) より、
\boxed{
\nabla\cdot\boldsymbol{u}=0
}
\]
となります。Cartesian座標では、
\[
\boxed{
\frac{\partial u}{\partial x}
+
\frac{\partial v}{\partial y}
+
\frac{\partial w}{\partial z}
=0
}
\]
です。
非圧縮性は流体粒子の密度変化に関する条件、定常は固定位置で物理量が時間変化しないという条件です。非定常でも非圧縮性の流れはあり、定常でも密度が位置によって変わる圧縮性流れはあります。
非圧縮性と「どこでも同じ密度」は厳密には同義ではない
非圧縮性の条件は \(D\rho/Dt=0\) です。流体粒子が持つ密度は変わりませんが、異なる密度の流体が層を作る場合など、密度が空間的に一様とは限りません。
単一の液体を温度・組成がほぼ一様な条件で扱う通常の配管計算では、\(\rho=\mathrm{constant}\) と近似することが多く、その場合も \(\nabla\cdot\boldsymbol{u}=0\) になります。
定常流れでは蓄積項が消える
定常状態では、固定位置における密度の時間変化がないため、
\[
\frac{\partial\rho}{\partial t}=0
\]
です。一般の定常流れに対する連続の式は、
\[
\boxed{
\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})=0
}
\]
となります。
ここで密度が一定とは限らない点に注意してください。圧縮性流体では、定常でも位置によって密度と速度が変化し得ます。
一次元の配管では \(\rho Av\) が保存される
入口と出口が一つずつある定常流れを考えます。側面からの流出入がなく、断面内の値を平均値で代表させると、積分形の連続の式から、
\boxed{
\dot m
=\rho_1A_1\bar v_1
=\rho_2A_2\bar v_2
=\mathrm{constant}
}
\]
を得ます。
密度が一定なら消去できるため、
\[
\boxed{
Q=A_1\bar v_1=A_2\bar v_2
}
\]
となります。ここで \(Q=A\bar v\) は体積流量です。
| 条件 | 保存される量 | 代表式 |
|---|---|---|
| 定常、密度が変化し得る | 質量流量 | \(\rho A\bar v=\mathrm{constant}\) |
| 定常、密度一定 | 質量流量と体積流量 | \(A\bar v=\mathrm{constant}\) |
| 非定常 | 流入・流出差が内部に蓄積 | 積分形を使う |
圧力や温度が変わって密度が変化する場合、保存されるのは体積流量ではなく質量流量です。まず \(\rho_1A_1v_1=\rho_2A_2v_2\) を使い、必要なら状態方程式から密度を求めます。
計算例1:密度が変わる気体の流速
気体が定常的にダクトを流れています。入口で \(\rho_1=1.20\ \mathrm{kg/m^3}\)、\(A_1=0.0200\ \mathrm{m^2}\)、\(\bar v_1=10.0\ \mathrm{m/s}\) です。出口では \(\rho_2=0.800\ \mathrm{kg/m^3}\)、\(A_2=0.0100\ \mathrm{m^2}\) です。出口平均流速を求めます。
まず、質量流量は、
\[
\begin{aligned}
\dot m
&=\rho_1A_1\bar v_1\\
&=(1.20)(0.0200)(10.0)\\
&=0.240\ \mathrm{kg/s}
\end{aligned}
\]
です。出口速度は、
\[
\begin{aligned}
\bar v_2
&=\frac{\dot m}{\rho_2A_2}\\
&=\frac{0.240}{(0.800)(0.0100)}\\
&=30.0\ \mathrm{m/s}
\end{aligned}
\]
したがって、
\boxed{
\bar v_2=30.0\ \mathrm{m/s}
}
\]
です。
入口体積流量は \(Q_1=0.200\ \mathrm{m^3/s}\)、出口体積流量は \(Q_2=0.300\ \mathrm{m^3/s}\) です。体積流量は変化していますが、どちらも \(\rho Q=0.240\ \mathrm{kg/s}\) となり、質量流量は保存されています。
非定常タンクでは蓄積項を残す
断面積一定のタンクへ液体が流入し、同時に流出しているとします。液体の密度を一定、タンク断面積を \(A_T\)、液位を \(h\) とすると、内部質量は、
\[
m=\rho A_Th
\]
です。積分形の連続の式から、
\[
\frac{d(\rho A_Th)}{dt}
=
\rho Q_{\mathrm{in}}
–
\rho Q_{\mathrm{out}}
\]
となります。\(\rho\) と \(A_T\) が一定なら、
\boxed{
A_T\frac{dh}{dt}
=Q_{\mathrm{in}}-Q_{\mathrm{out}}
}
\]
です。流入が流出より多ければ液位は上がり、少なければ下がります。流入と流出が等しいときだけ、液位は一定です。
計算例2:流入・流出によるタンク液位の変化
断面積 \(A_T=2.00\ \mathrm{m^2}\) の直立タンクへ、液体が \(Q_{\mathrm{in}}=3.00\times10^{-3}\ \mathrm{m^3/s}\) で流入し、\(Q_{\mathrm{out}}=2.00\times10^{-3}\ \mathrm{m^3/s}\) で流出しています。流量が一定として、20.0分後の液位上昇量を求めます。
\[
\begin{aligned}
\frac{dh}{dt}
&=\frac{Q_{\mathrm{in}}-Q_{\mathrm{out}}}{A_T}\\
&=\frac{(3.00-2.00)\times10^{-3}}{2.00}\\
&=5.00\times10^{-4}\ \mathrm{m/s}
\end{aligned}
\]
20.0分は \(1200\ \mathrm{s}\) なので、
\[
\begin{aligned}
\Delta h
&=\frac{dh}{dt}\Delta t\\
&=(5.00\times10^{-4})(1200)\\
&=0.600\ \mathrm{m}
\end{aligned}
\]
したがって、
\[
\boxed{
\Delta h=0.600\ \mathrm{m}
}
\]
です。
分岐・合流ではすべての流入口と流出口を数える
定常状態で蓄積がなければ、装置全体について、
\[
\boxed{
\sum_{\mathrm{in}}\dot m
=
\sum_{\mathrm{out}}\dot m
}
\]
です。
入口が一つ、出口が二つの分岐なら、
\[
\dot m_{\mathrm{in}}
=
\dot m_{\mathrm{out},1}
+
\dot m_{\mathrm{out},2}
\]
となります。合流、分離器、熱交換器、反応器などでも、検査体積を適切に囲めば同じ考え方を使えます。装置全体に対する収支の立て方は、物質収支の基本で詳しく解説しています。
全体質量収支だけでは組成は求められない
混合物では、全体質量だけでなく各成分の保存も考える必要があります。成分Aの質量分率を \(w_A\) とすると、定常・反応なしの装置では、
\[
\sum_{\mathrm{in}}\dot m\,w_A
=
\sum_{\mathrm{out}}\dot m\,w_A
\]
です。
全体収支は流量の合計を決めますが、成分収支は各流れの組成を決めます。両方を組み合わせなければ、分離器や混合器の問題は解けません。
計算例3:分流後の組成を求める
成分Aを質量分率 \(w_{A,F}=0.300\) で含む混合物が、\(\dot m_F=100\ \mathrm{kg/h}\) で分流器へ入ります。出口1は \(\dot m_1=40.0\ \mathrm{kg/h}\)、\(w_{A,1}=0.500\) です。定常・反応なしとして、出口2の流量と成分Aの質量分率を求めます。
全体質量収支から、
\[
\begin{aligned}
\dot m_2
&=\dot m_F-\dot m_1\\
&=100-40.0\\
&=60.0\ \mathrm{kg/h}
\end{aligned}
\]
です。次に成分Aの収支を立てます。
\[
\dot m_Fw_{A,F}
=
\dot m_1w_{A,1}
+
\dot m_2w_{A,2}
\]
したがって、
\[
\begin{aligned}
w_{A,2}
&=\frac{\dot m_Fw_{A,F}-\dot m_1w_{A,1}}{\dot m_2}\\
&=\frac{(100)(0.300)-(40.0)(0.500)}{60.0}\\
&=0.1667
\end{aligned}
\]
よって、
\[
\boxed{
\dot m_2=60.0\ \mathrm{kg/h},
\qquad
w_{A,2}=0.167
}
\]
です。
成分の連続の式
成分Aの質量濃度を \(\rho_A=\rho w_A\)、平均流れに対する拡散質量流束を \(\boldsymbol{j}_A\)、反応による質量生成速度を \(r_A\) とします。成分Aの局所収支は、
\boxed{
\frac{\partial\rho_A}{\partial t}
+
\nabla\cdot
\left(
\rho_A\boldsymbol{u}
+
\boldsymbol{j}_A
\right)
=r_A
}
\]
です。
| 項 | 意味 |
|---|---|
| \(\partial\rho_A/\partial t\) | 成分Aの蓄積 |
| \(\nabla\cdot(\rho_A\boldsymbol{u})\) | 対流による成分Aの輸送 |
| \(\nabla\cdot\boldsymbol{j}_A\) | 分子拡散による成分Aの輸送 |
| \(r_A\) | 化学反応による成分Aの生成または消費 |
化学反応では個々の成分は生成・消費されますが、通常の化学反応で全質量は保存されます。すべての成分について質量基準の式を足すと、
\[
\sum_A\boldsymbol{j}_A=0,
\qquad
\sum_A r_A=0
\]
であるため、全体の連続の式、
\[
\frac{\partial\rho}{\partial t}
+
\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})
=0
\]
へ戻ります。
化学反応では全質量は保存されますが、化学量論によって全モル数は増減することがあります。反応系で「入口の総モル流量=出口の総モル流量」と置く前に、反応式と転化率を確認してください。
連続の式は他の輸送方程式の土台になる
連続の式だけで速度や圧力の分布がすべて決まるわけではありません。流体の運動を解くには、質量保存に加えて運動量保存、必要に応じてエネルギー保存や成分保存を同時に解きます。
| 保存則 | 代表的な方程式 | 主な未知量 |
|---|---|---|
| 質量保存 | 連続の式 | 密度、速度場 |
| 運動量保存 | Navier–Stokes方程式 | 速度場、圧力場 |
| エネルギー保存 | 熱エネルギー方程式 | 温度場 |
| 成分保存 | 対流拡散反応方程式 | 濃度場、組成場 |
連続の式とベルヌーイの式の役割の違いは、ベルヌーイの式とは?導出・使い方・適用条件で確認できます。保存則に流束と駆動力の関係を組み合わせる移動現象論の全体像は、移動現象論とは?運動量・熱・物質移動の共通構造を参照してください。
円筒座標では式の形が変わる
配管内流れを半径方向まで詳しく扱う場合、Cartesian座標ではなく円筒座標が便利です。円筒座標 \((r,\theta,z)\) における一般の連続の式は、
\[
\boxed{
\frac{\partial\rho}{\partial t}
+
\frac{1}{r}\frac{\partial(r\rho u_r)}{\partial r}
+
\frac{1}{r}\frac{\partial(\rho u_\theta)}{\partial\theta}
+
\frac{\partial(\rho u_z)}{\partial z}
=0
}
\]
です。
座標系によって発散の展開形は変わりますが、ベクトル形式、
\[
\frac{\partial\rho}{\partial t}
+
\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})=0
\]
そのものは変わりません。
連続の式を使う手順
- 検査体積を決める:配管の一部、タンク、分岐、装置全体などを境界で囲む。
- すべての流入口・流出口を描く:流れの向きと質量流量を整理する。
- 定常か非定常かを判断する:内部蓄積をゼロと置けるか確認する。
- 密度一定か確認する:体積流量を保存できるか、質量流量で扱うべきか判断する。
- 全体収支を立てる:蓄積=流入-流出を質量基準で書く。
- 必要なら成分収支を追加する:組成を求める問題では各成分の保存を使う。
- 単位と符号を確認する:流量、面積、速度、密度を一貫した単位へそろえる。
- 結果を収支で再確認する:計算後に流入質量と流出・蓄積の合計が一致するか確かめる。
よくある間違い
| 間違い | 正しい確認方法 |
|---|---|
| どんな流れでも \(A_1v_1=A_2v_2\) とする | 密度が変わるなら \(\rho_1A_1v_1=\rho_2A_2v_2\) を使う |
| 定常と非圧縮性を同じ意味だと思う | 定常は時間変化、非圧縮性は粒子の密度変化に関する条件 |
| 非定常タンクで流入と流出を等しくする | 液位や内部質量が変わるなら蓄積項を残す |
| 分岐の一つを収支から落とす | 検査体積を図示し、境界を横切る全流れを数える |
| 全体収支だけで出口組成を求める | 独立な成分収支を追加する |
| 反応器で全モル流量が保存されると考える | 保存される全質量と、変化し得る全モル数を区別する |
| \(\nabla\cdot\boldsymbol{u}=0\) を常に使う | 非圧縮性の仮定が妥当か確認する |
| 積分形と微分形を別の法則だと思う | 同じ質量保存則を、有限領域と局所点で表した形と理解する |
確認問題
3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。
QUICK CHECK
1 / 3流動工学・初級
このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。
まとめ
- 連続の式は、流体に対する質量保存則である
- 固定検査体積に対する積分形は、内部蓄積と検査面からの正味流出の和をゼロと置く
- 微分形は \(\partial\rho/\partial t+\nabla\cdot(\rho\boldsymbol{u})=0\) である
- 物質微分を使うと \(D\rho/Dt+\rho\nabla\cdot\boldsymbol{u}=0\) となる
- 非圧縮性流れでは \(\nabla\cdot\boldsymbol{u}=0\) となる
- 定常と非圧縮性は別の条件である
- 定常一次元流れでは質量流量 \(\rho A\bar v\) が保存される
- 密度一定の場合に限り、体積流量 \(A\bar v\) も保存される
- 非定常タンクでは、流入と流出の差を蓄積項として残す
- 混合物の組成を求めるには、全体質量収支に加えて成分収支が必要である
- 化学反応で成分や全モル数は変化し得るが、全質量は保存される
連続の式を単なる \(A_1v_1=A_2v_2\) として覚えるのではなく、「任意の領域で、蓄積+正味流出=0」と理解すると、配管、タンク、分離器、反応器、拡散現象を同じ収支の考え方で扱えるようになります。
参考資料
- MIT OpenCourseWare: The Continuity Equation—Conservation of Mass for a Fluid Element
- MIT OpenCourseWare: Reynolds Transport Theorem and Conservation of Mass
- NPTEL: Continuity Equation—Differential Form
- NASA Glenn Research Center: Conservation of Mass


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