モルとは?モル質量・分子量・混合気体の平均分子量を例題で解説

モル、モル質量、混合気体の平均分子量を解説する化学工学の基礎記事アイキャッチ 化学工学の基礎
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モル(mol)は、原子や分子などの非常に小さな粒子を、決まった個数でまとめて数えるための単位です。化学工学では、質量、流量、組成、気体の体積、反応量を結び付ける共通言語として使います。

この記事では、モルの意味、モル質量と分子量の違い、質量とモル数の換算、モル分率と質量分率の変換、混合気体の平均モル質量までを例題で解説します。

この記事でわかること

  • 1 molが表す粒子数と、数える対象を指定する理由
  • 物質量 (n)、モル質量 (M)、相対分子質量 (M_r) の違い
  • 質量 (m) と物質量 (n) の換算方法
  • モル分率と質量分率の相互変換
  • 混合気体の平均モル質量の求め方
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モルとは?

モルは、SIにおける物質量の単位です。1 molには、指定した要素粒子が正確に次の個数だけ含まれます。

\[
1\ \mathrm{mol}=6.022\,140\,76\times10^{23}\ \text{個の要素粒子}
\]

この数はアボガドロ数と呼ばれ、アボガドロ定数 (N_A) は次の値です。

\[
N_A=6.022\,140\,76\times10^{23}\ \mathrm{mol^{-1}}
\]

「1ダース=12個」と同じように、「1 mol=約 (6.02\times10^{23}) 個」です。ただし、モルでは何を数えたのかを明示します。

  • 1 molの水分子 (mathrm{H_2O})
  • 1 molの炭素原子 (mathrm{C})
  • 1 molのナトリウムイオン (mathrm{Na^+})
  • 1 molの電子
「1 mol」だけでは対象が不十分
同じ1 molでも、水分子、酸素分子、酸素原子では数えている要素粒子が異なります。反応式や分析値では、化学式と粒子の種類を確認してください。

物質量と粒子数の関係

物質量を (n)、要素粒子の個数を (N) とすると、両者はアボガドロ定数で結ばれます。

\[
N=nN_A
\]
\[
n=\frac{N}{N_A}
\]

物質量 (n) は「粒子の個数を、1 molあたりの粒子数で割った量」と考えられます。実務では粒子を直接数えられないため、通常は質量や気体の状態量から物質量を求めます。

例題1:0.250 molの分子数

0.250 molの二酸化炭素に含まれる二酸化炭素分子の数を求めます。

\[
N=0.250\times6.022\,140\,76\times10^{23}
=1.51\times10^{23}\ \text{個}
\]

物質量にアボガドロ定数を掛けると、粒子数へ変換できます。

モル質量とは?

モル質量 (M)は、物質の質量を物質量で割った量です。

\[
M=\frac{m}{n}
\]

SI単位は (mathrm{kg/mol}) ですが、化学では (mathrm{g/mol})、化学工学では (mathrm{kg/kmol}) もよく使います。

\[
1\ \mathrm{g/mol}=1\ \mathrm{kg/kmol}
\]

例えば、二酸化炭素 (mathrm{CO_2}) のモル質量は約44.01 g/molです。二酸化炭素1 molの質量が約44.01 gであることを表します。

分子量とモル質量の違い

日常的には「分子量」と「モル質量」が同じ数値で扱われるため、混同されやすい用語です。厳密には次の違いがあります。

意味 単位 例:CO2
相対分子質量 (M_r) 分子1個の質量を統一原子質量単位と比較した比 なし 約44.01
モル質量 (M) 1 molあたりの質量 g/mol、kg/mol、kg/kmol 約44.01 g/mol

日本語で単に「分子量」と呼ぶ場合、多くは相対分子質量を指し、単位を持ちません。モル質量には質量÷物質量の単位があります。通常の化学工学計算では、モル質量をg/molで表した数値と相対分子質量の数値は等しく扱えます。

装置計算での読み替え
資料に「空気の分子量29」「MW = 29 kg/kmol」と書かれていることがあります。前者は相対的な数値、後者はモル質量ですが、数値が同じなので慣用的に「分子量」とまとめて呼ばれる場合があります。式へ代入するときは単位を確認してください。

塩化ナトリウムのようなイオン結晶には、独立したNaCl分子が存在するとは限りません。この場合は式量または相対式量と呼ぶのが適切ですが、モル質量 (M(mathrm{NaCl})) は問題なく定義できます。

質量とモル数を変換する

モル質量の定義を変形すると、化学工学で最もよく使う換算式になります。

\[
\boxed{n=\frac{m}{M}}
\]
\[
\boxed{m=nM}
\]

質量をモル数へ変換するときは質量をモル質量で割り、モル数を質量へ変換するときはモル質量を掛けます。

質量・物質量・粒子数と混合物組成の変換 質量をモル質量で割ると物質量になり、物質量にアボガドロ定数を掛けると粒子数になる。混合物では各成分の物質量からモル分率を求め、モル分率でモル質量を加重平均すると平均モル質量になる。 モルは、質量・粒子数・混合物組成をつなぐ 質量 m g または kg 物質量 n mol または kmol 粒子数 N ÷M ×Nₐ 混合物:各成分のモル数 → モル分率 → 平均モル質量 xᵢ = nᵢ / Σnᵢ  M̄ = ΣxᵢMᵢ 単位をそろえてから変換し、最後に総和が1になるか確認する
図1 質量・物質量・粒子数・平均モル質量のつながり

例題2:二酸化炭素の質量からモル数を求める

モル質量44.0 g/molの二酸化炭素が88.0 gあります。物質量は、

\[
n=\frac{88.0\ \mathrm{g}}{44.0\ \mathrm{g/mol}}=2.00\ \mathrm{mol}
\]

となります。分母と分子のgが消え、molが残ることを確認できます。

例題3:kgとkmolで計算する

二酸化炭素440 kgを、モル質量44.0 kg/kmolで換算します。

\[
n=\frac{440\ \mathrm{kg}}{44.0\ \mathrm{kg/kmol}}=10.0\ \mathrm{kmol}
\]

化学プラントでは流量が大きいため、kgとkmolの組合せが便利です。単位と次元の基礎で解説しているように、式へ代入する前に単位系をそろえます。

モル分率と質量分率

混合物では、成分 (i) の割合をモル基準または質量基準で表します。

\[
x_i=\frac{n_i}{\sum_j n_j}
\]
\[
w_i=\frac{m_i}{\sum_j m_j}
\]

(x_i) はモル分率、(w_i) は質量分率です。どちらも無次元量で、全成分について足すと1になります。

\[
\sum_i x_i=1,\qquad \sum_i w_i=1
\]

気液平衡では、液相モル分率に (x_i)、気相モル分率に (y_i) を使い分けることがあります。組成、濃度、流量の基礎は濃度・組成・流量の表し方も参照してください。

質量分率をモル分率へ変換する

成分 (i) の質量を (m_i)、モル質量を (M_i) とすると、モル数は (n_i=m_i/M_i) です。これをモル分率の定義へ代入すると、

\[
\boxed{x_i=\frac{w_i/M_i}{\sum_j w_j/M_j}}
\]

となります。逆に、モル分率から質量分率へ変換する式は、

\[
\boxed{w_i=\frac{x_iM_i}{\sum_j x_jM_j}}
\]

です。分子量の小さい成分は、同じ質量でもモル数が多くなります。そのため、質量分率とモル分率は一般に一致しません。

混合気体の平均モル質量

混合物全体の質量を (m)、全物質量を (n) とすると、平均モル質量 (overline{M}) は、

\[
\overline{M}=\frac{m}{n}
\]

です。全質量 (m=\sum_i n_iM_i) を使うと、モル分率による加重平均が得られます。

\[
\boxed{\overline{M}=\sum_i x_iM_i}
\]

気相モル分率を (y_i) と書く場合は、(overline{M}=\sum_i y_iM_i) です。平均モル質量は、各成分のモル質量の間に入ります。

例題4:窒素と酸素の混合気体

窒素79 mol%、酸素21 mol%の単純化した混合気体を考えます。モル質量をそれぞれ28.013 g/mol、31.998 g/molとします。

\[
\overline{M}
=0.79\times28.013+0.21\times31.998
=28.85\ \mathrm{g/mol}
\]

この例は窒素と酸素だけに単純化しています。実際の乾燥空気にはアルゴン、二酸化炭素なども含まれるため、代表的な平均モル質量は約28.97 g/molです。

体積%をモル%として使える条件
同じ温度・圧力にある理想気体混合物では、体積分率はモル分率と等しく扱えます。実在気体、高圧、凝縮を伴う系では、測定条件と定義を確認してください。

質量分率から平均モル質量を求める

質量分率が与えられている場合は、平均モル質量の逆数を使うと直接計算できます。

\[
\boxed{\frac{1}{\overline{M}}=\sum_i\frac{w_i}{M_i}}
\]

これは、基準質量を1と置いたとき、全モル数が (sum_i w_i/M_i) になることから導けます。

例題5:質量分率から平均モル質量とモル分率を求める

窒素の質量分率が0.70、酸素が0.30の混合気体を考えます。モル質量を窒素28.0 g/mol、酸素32.0 g/molとします。

手順1:平均モル質量を求める

\[
\frac{1}{\overline{M}}=\frac{0.70}{28.0}+\frac{0.30}{32.0}
=0.034375\ \mathrm{mol/g}
\]
\[
\overline{M}=29.1\ \mathrm{g/mol}
\]

手順2:モル分率を求める

\[
x_{\mathrm{N_2}}
=\frac{0.70/28.0}{0.70/28.0+0.30/32.0}
=0.727
\]
\[
x_{\mathrm{O_2}}=1-0.727=0.273
\]

窒素は酸素よりモル質量が小さいため、質量分率70%に対してモル分率は約72.7%と高くなります。

平均モル質量と理想気体の密度

混合気体を理想気体とみなすと、状態方程式は (PV=nRT) です。(n=m/\overline{M})、密度 (
ho=m/V) を代入すると、

\[
\boxed{\rho=\frac{P\overline{M}}{RT}}
\]

となります。平均モル質量が大きい気体ほど、同じ温度・圧力では密度が大きくなります。例えば、25 ℃、101.325 kPa、(overline{M}=28.85\ \mathrm{g/mol}=0.02885\ \mathrm{kg/mol}) とすると、

\[
\rho
=\frac{101325\times0.02885}{8.314\times298.15}
\approx1.18\ \mathrm{kg/m^3}
\]

気体計算の基本は理想気体の状態方程式 (PV=nRT)、混合気体の圧力との関係は分圧とドルトンの分圧の法則へつながります。

「1 molの気体は22.4 L」の注意点

1 molの理想気体が約22.4 Lになるのは、0 ℃、1 atm付近という特定の条件です。気体のモル体積は温度と圧力で変わります。

\[
V_m=\frac{V}{n}=\frac{RT}{P}
\]

25 ℃や加圧条件では22.4 L/molをそのまま使えません。温度をKへ変換し、圧力と気体定数の単位をそろえて状態方程式から求めます。

化学工学でモル基準を使う理由

場面 モル基準を使う理由
反応量論 化学反応式の係数が分子数・モル数の比を表す
物質収支 反応を伴う流入・流出・生成・消費を同じ基準で扱える
気体計算 (PV=nRT)により圧力・体積・温度と結び付く
相平衡 液相モル分率と気相モル分率で組成を比較できる
物質移動 モル流束、モル濃度、モル流量で成分移動を表せる
プロセス流量 kg/hとkmol/hをモル質量で相互変換できる

特に反応を伴う物質収支では、質量基準のまま反応係数を使うのではなく、一度モル基準へ変換します。基礎は物質収支の基本で解説しています。

初学者が間違えやすいポイント

分子量にg/molを付ける

相対分子質量は比なので無次元です。g/molはモル質量の単位です。

g/molとkg/molを混ぜる

28.0 g/molは0.0280 kg/molです。一方、28.0 kg/kmolとは同じ数値です。理想気体の密度式では、使用する気体定数に合わせて単位をそろえます。

質量分率をそのままモル分率として使う

成分のモル質量が異なれば、質量分率とモル分率は一致しません。各成分の質量をモル質量で割ってから割合を求めます。

質量分率でモル質量を算術平均する

(overline{M}=\sum x_iM_i) はモル分率を使う式です。質量分率しかない場合は (1/\overline{M}=\sum w_i/M_i) を使います。

1 molの気体は常に22.4 Lと考える

モル体積は温度と圧力で変化します。標準状態の定義も資料によって異なるため、条件を確認します。

計算の手順

  1. 化学式と、数える要素粒子を確認する
  2. 各成分のモル質量 (M_i) を用意する
  3. 質量とモル質量の単位をそろえる
  4. (n_i=m_i/M_i) で各成分のモル数を求める
  5. 必要に応じてモル分率 (x_i=n_i/\sum n_i) を求める
  6. (sum x_i=1)、(sum w_i=1) で検算する
  7. 混合物なら (overline{M}=\sum x_iM_i) を求める
覚える中心式は3つ
(n=m/M)、(x_i=n_i/\sum n_i)、(overline{M}=\sum x_iM_i)です。質量分率から始めるときだけ、(x_i=(w_i/M_i)/\sum(w_j/M_j))を使います。

モル・モル質量の基礎ミニテスト

QUICK CHECK

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化学工学の基礎・初級

このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。

まとめ

  • モルは物質量のSI単位で、1 molには正確に (6.02214076\times10^{23}) 個の要素粒子が含まれる
  • 粒子数は (N=nN_A) で求められる
  • モル質量は (M=m/n) で、質量とモル数の換算には (n=m/M) を使う
  • 相対分子質量は無次元、モル質量にはg/molやkg/kmolの単位がある
  • モル分率は (x_i=n_i/\sum n_i)、質量分率は (w_i=m_i/\sum m_i) である
  • 質量分率からモル分率へは (x_i=(w_i/M_i)/\sum(w_j/M_j)) で変換する
  • 平均モル質量は、モル分率があれば (overline{M}=\sum x_iM_i) で求める
  • 質量分率があれば (1/\overline{M}=\sum w_i/M_i) を使う

モルは、目に見えない粒子の世界を、測定できる質量や流量へ結び付ける道具です。質量をモル数へ変換できるようになると、物質収支、反応量論、理想気体、相平衡の計算が同じ土台の上で理解できます。

学んだ内容を演習で定着させよう
かこまるの化工演習室では、単位、物質収支、気体、熱力学などの基礎問題を分野別に練習できます。
化学工学の基礎問題を解く
実務での注意
原子量・モル質量は、同位体組成や採用するデータ表の有効数字によってわずかに異なります。設計・分析では、使用する物性データの出典、組成基準、単位系、有効数字をそろえてください。

参考資料

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