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配管内を流れる流体は、まっすぐな管の壁との摩擦だけでなく、エルボ、バルブ、入口、出口、急拡大・急縮小などでも力学的エネルギーを失います。このような配管部品や流路形状の変化による損失を局所圧力損失といいます。
局所圧力損失は「マイナー損失」とも呼ばれます。しかし、短い配管やバルブが多い配管では、直管摩擦より大きくなることもあります。したがって「小さくて無視できる損失」という意味ではありません。
この記事では、局所圧力損失を表す損失係数 \(K\) の定義から、直管損失との合算、相当長さへの換算、急拡大部の式まで、例題を使って順に解説します。
局所圧力損失とは
直管部では、流体と管壁とのせん断によって圧力損失が生じます。一方、継手やバルブでは流れの向きや断面積が急に変化します。その結果、流れの剥離、渦、二次流れ、混合が発生し、流体の持つ力学的エネルギーの一部が熱へと散逸します。
局所圧力損失が発生しやすい代表例は次のとおりです。
- タンクから管への入口、管からタンクへの出口
- 90°エルボ、45°エルボ、U字ベンド
- ティー、分岐・合流部
- 仕切弁、玉形弁、ボール弁などのバルブ
- 急拡大、急縮小、レデューサー
- ストレーナー、フィルター、逆止弁
ポイント:損失は部品の内部だけで完結するとは限りません。継手の下流にできた渦が減衰し、流れが再び十分発達するまで、損失の影響が続くことがあります。
圧力損失と圧力差は同じではない
ここで、圧力損失と単なる静圧の差を区別しておきましょう。
圧力損失は、静圧・速度・高さを合わせた全力学的エネルギーの不可逆な減少です。一方、管径が細くなって流速が上がると、ベルヌーイの関係によって静圧が低下します。この静圧低下のすべてがエネルギー損失というわけではありません。
断面1から断面2までのエネルギー式は、ポンプがない場合、次のように表せます。
\[
\frac{p_1}{\rho g}+\alpha_1\frac{v_1^2}{2g}+z_1
=
\frac{p_2}{\rho g}+\alpha_2\frac{v_2^2}{2g}+z_2+h_L
\]
ここで、\(h_L\) が不可逆な損失水頭です。管径や高さが変わる場合は、速度水頭と位置水頭の変化を別に計算しなければなりません。エネルギー式の基礎は「ベルヌーイの定理とは?」で解説しています。
損失係数Kの定義
局所損失は、基準となる平均流速の速度水頭に比例する形で表します。
\[
h_{L,\mathrm{local}}=K\frac{v^2}{2g}
\]
圧力の単位で表すと、\(\Delta p_{L,\mathrm{local}}=\rho g h_{L,\mathrm{local}}\) なので、
\[
\boxed{\Delta p_{L,\mathrm{local}}=K\frac{\rho v^2}{2}}
\]
となります。
- \(K\):損失係数(無次元)
- \(v\):損失係数を定義したときの基準平均流速 \(\mathrm{m/s}\)
- \(\rho\):流体密度 \(\mathrm{kg/m^3}\)
- \(g\):重力加速度 \(\mathrm{m/s^2}\)
- \(h_L\):損失水頭 \(\mathrm{m}\)
- \(\Delta p_L\):圧力損失 \(\mathrm{Pa}\)
\(\rho v^2/2\) は動圧です。したがって \(K\) は「その部品で失われる圧力が、動圧の何倍か」を示す値と考えられます。
損失係数Kは必ずしも一定ではない
\(K\) は無次元ですが、すべての条件で完全な定数というわけではありません。主に次の要因で変化します。
- 継手の形状、曲率半径、内部の段差
- バルブの形式と開度
- レイノルズ数
- 管内面の粗さ
- 分岐・合流部における流量配分
- 上流側の速度分布や隣接する継手との距離
十分に大きなレイノルズ数では \(K\) をほぼ一定として扱える場合が多い一方、低レイノルズ数では変化が無視できないことがあります。レイノルズ数については「レイノルズ数とは?層流と乱流の違い」も参照してください。
基準流速を確認することが重要
同じ直径の管につながるエルボなら、管内平均流速をそのまま使えます。しかし、急拡大、急縮小、レデューサー、ティーなどでは、入口側と出口側で流速が異なります。
このような部品の \(K\) を使うときは、資料がどの断面の流速を基準にしているかを必ず確認します。たとえば、
\[
\Delta p_L=K_1\frac{\rho v_1^2}{2}
\]
と定義された \(K_1\) に対して、誤って \(v_2\) を使うと結果が変わってしまいます。
流量と流速の換算には、連続の式を使います。
\[
Q=A_1v_1=A_2v_2
\]
詳しくは「流量・流速・連続の式」で確認できます。
代表的な損失係数Kの目安
以下は、初学者が大きさをイメージするための代表的な目安です。実際の値は製品形状、口径、レイノルズ数、弁開度などで変わるため、設計ではメーカー資料や適用するハンドブックを確認してください。
| 部品・形状 | \(K\) のおおよその目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 鋭い角を持つ管入口 | 約0.5 | 入口で流れが剥離する |
| 十分に丸めた管入口 | 約0.04 | 流線が滑らかで損失が小さい |
| 管から大きなタンクへの出口 | 約1.0 | 速度エネルギーの多くが散逸する |
| 標準的な90°エルボ | 約0.7~1.0 | 曲率半径で大きく変わる |
| 長半径90°エルボ | 約0.2~0.4 | 緩やかな曲がりで損失が小さい |
| 仕切弁(全開) | 約0.1~0.2 | 全開時は比較的小さい |
| 玉形弁(全開) | 約8~12 | 流路が大きく曲がるため損失が大きい |
「バルブは全開ならどれも同じ」と考えてはいけません。流路がほぼ直線の仕切弁と、内部で流れを大きく曲げる玉形弁では、全開でも \(K\) が大きく異なります。
複数の局所損失を合算する
同じ直径の管内に複数の部品があり、すべて同じ平均流速 \(v\) を基準にできるなら、損失係数を足し合わせます。
\[
h_{L,\mathrm{local}}
=
\left(\sum_i K_i\right)\frac{v^2}{2g}
\]
\[
\Delta p_{L,\mathrm{local}}
=
\left(\sum_i K_i\right)\frac{\rho v^2}{2}
\]
たとえば、\(K=0.9\) のエルボが2個、\(K=0.2\) のバルブが1個なら、
\[
\sum_iK_i=0.9\times2+0.2=2.0
\]
です。
注意:管径が異なる区間の部品を一括して \(K\) だけ足すことはできません。各部品について、その \(K\) が定義された基準流速を使って圧力損失を計算し、最後に圧力の単位で合算します。
直管損失と局所損失を合わせる
直管の圧力損失はDarcy–Weisbach式で表せます。
\[
\Delta p_{L,\mathrm{pipe}}
=
f_D\frac{L}{D}\frac{\rho v^2}{2}
\]
同じ直径の配管なら、直管損失と局所損失をまとめて、
\[
\boxed{
\Delta p_{L,\mathrm{total}}
=
\left(
f_D\frac{L}{D}+\sum_iK_i
\right)
\frac{\rho v^2}{2}
}
\]
と書けます。ここで \(f_D\) はDarcy摩擦係数です。
この式を見ると、\(f_D L/D\) も \(K\) も、動圧に掛ける無次元の係数であることが分かります。直管損失の求め方は「配管の圧力損失とDarcy–Weisbach式」で詳しく解説しています。
管径や流速が区間ごとに異なる場合
管径が異なる配管では、各区間の流速を使って個別に計算します。
\[
\Delta p_{L,\mathrm{total}}
=
\sum_j
f_{D,j}\frac{L_j}{D_j}\frac{\rho v_j^2}{2}
+
\sum_i
K_i\frac{\rho v_{\mathrm{ref},i}^2}{2}
\]
細い管ほど流速が大きくなるため、圧力損失が急増しやすいことに注意しましょう。
相当長さとは
相当長さ \(L_{\mathrm{eq}}\) とは、ある継手と同じ圧力損失を生じる直管の長さです。
局所損失と直管損失を等しいとおくと、
\[
K\frac{v^2}{2g}
=
f_D\frac{L_{\mathrm{eq}}}{D}\frac{v^2}{2g}
\]
両辺の速度水頭を消して、
\[
\boxed{
L_{\mathrm{eq}}=\frac{K D}{f_D}
}
\]
または、
\[
\boxed{
\frac{L_{\mathrm{eq}}}{D}=\frac{K}{f_D}
}
\]
となります。
たとえば、\(K=0.9\)、\(D=0.050\ \mathrm{m}\)、\(f_D=0.025\) のエルボなら、
\[
L_{\mathrm{eq}}
=
\frac{0.9\times0.050}{0.025}
=
1.8\ \mathrm{m}
\]
です。このエルボ1個は、この条件では約1.8 mの直管と同じ損失を生むと考えられます。
相当長さは部品だけの固定値ではない
式から分かるように、\(L_{\mathrm{eq}}\) は摩擦係数 \(f_D\) に依存します。\(f_D\) はレイノルズ数や相対粗さで変わるため、相当長さも厳密には運転条件によって変わります。
また、ここで使う \(f_D\) はDarcy摩擦係数です。Fanning摩擦係数を混同すると4倍の誤差になります。
急拡大部の局所損失
小さい断面積 \(A_1\) から大きい断面積 \(A_2\) へ急に広がると、角部で流れが剥離し、大きな循環領域ができます。急拡大損失はBorda–Carnotの関係で、
\[
h_L=\frac{(v_1-v_2)^2}{2g}
\]
と表せます。連続の式 \(A_1v_1=A_2v_2\) を使うと、
\[
v_2=v_1\frac{A_1}{A_2}
\]
なので、上流側流速 \(v_1\) を基準にした損失係数は、
\[
h_L=
\left(
1-\frac{A_1}{A_2}
\right)^2
\frac{v_1^2}{2g}
\]
\[
\boxed{
K_1=
\left(
1-\frac{A_1}{A_2}
\right)^2
}
\]
となります。
直径が2倍になる急拡大
\(D_2=2D_1\) なら、面積は直径の2乗に比例するため、
\[
\frac{A_1}{A_2}
=
\left(\frac{D_1}{D_2}\right)^2
=
\frac{1}{4}
\]
です。したがって、
\[
K_1=
\left(1-\frac{1}{4}\right)^2
=
0.5625
\]
となります。この \(K_1\) は細い上流管の流速を基準にした値です。
例題1:継手とバルブの局所圧力損失
水が内径50 mmの管を平均流速2.0 m/sで流れています。次の部品による局所圧力損失を求めます。
- 鋭い管入口:\(K=0.5\)
- 90°エルボ2個:1個あたり \(K=0.9\)
- 全開の仕切弁:\(K=0.15\)
- 大きなタンクへの出口:\(K=1.0\)
水の密度を \(\rho=998\ \mathrm{kg/m^3}\) とします。
手順1:損失係数を合計する
\[
\sum K
=
0.5+2\times0.9+0.15+1.0
=
3.45
\]
手順2:動圧を求める
\[
\frac{\rho v^2}{2}
=
\frac{998\times2.0^2}{2}
=
1996\ \mathrm{Pa}
\]
手順3:局所圧力損失を求める
\[
\Delta p_{L,\mathrm{local}}
=
3.45\times1996
=
6886\ \mathrm{Pa}
\]
\[
\boxed{
\Delta p_{L,\mathrm{local}}
\approx
6.89\ \mathrm{kPa}
}
\]
この計算で用いた \(K\) は例題用の代表値です。実設計では使用する部品の資料で確認します。
例題2:直管損失を含む全圧力損失
例題1の配管に、長さ20 mの直管があるとします。Darcy摩擦係数を \(f_D=0.025\)、管径を \(D=0.050\ \mathrm{m}\) として、全圧力損失を求めます。
手順1:直管部分の無次元係数
\[
f_D\frac{L}{D}
=
0.025\times\frac{20}{0.050}
=
10.0
\]
手順2:局所損失を加える
\[
f_D\frac{L}{D}+\sum K
=
10.0+3.45
=
13.45
\]
手順3:全圧力損失
\[
\Delta p_{L,\mathrm{total}}
=
13.45\times1996
=
26846\ \mathrm{Pa}
\]
\[
\boxed{
\Delta p_{L,\mathrm{total}}
\approx
26.8\ \mathrm{kPa}
}
\]
このうち局所損失は6.89 kPaです。全損失に占める割合は、
\[
\frac{6.89}{26.8}\times100
\approx
25.7\%
\]
となります。「マイナー損失」という名前でも、この例では全体の約4分の1を占めています。
流速が2倍になると局所損失はどうなるか
\(K\) と密度が一定なら、
\[
\Delta p_L\propto v^2
\]
です。そのため、流速が2倍になると局所圧力損失は、
\[
\left(\frac{2v}{v}\right)^2=4
\]
倍になります。流量 \(Q\) も同じ管径では流速に比例するため、乱流域で \(K\) がほぼ一定なら、局所損失はおおむね流量の2乗に比例します。
配管径を小さくして流速を上げると、配管費は下げられても、圧力損失やポンプ動力が急増することがあります。
局所圧力損失の計算手順
- 流体の密度 \(\rho\) と粘度 \(\mu\) を確認する
- 各管区間の流量 \(Q\)、断面積 \(A\)、平均流速 \(v=Q/A\) を求める
- レイノルズ数と相対粗さからDarcy摩擦係数 \(f_D\) を求める
- 直管区間ごとに \(f_D(L/D)(\rho v^2/2)\) を計算する
- 各継手・バルブの \(K\) と基準流速を資料で確認する
- 局所損失 \(K(\rho v_{\mathrm{ref}}^2/2)\) を個別に計算する
- すべての圧力損失を合算し、ベルヌーイ式またはポンプ揚程計算に組み込む
よくある間違い
「マイナー」だから無視する
バルブが多い配管、短い配管、流速が高い配管では、局所損失が支配的になることがあります。\(f_D L/D\) と \(\sum K\) を比較して判断しましょう。
K値の基準流速を確認しない
異径継手や分岐部では、上流・下流・枝管のどの流速を基準にした \(K\) かで計算結果が変わります。
弁の種類や開度を無視する
同じ「全開」でも弁形式によって \(K\) は異なります。さらに、少し閉じただけで \(K\) が急増する弁もあります。
Darcy摩擦係数とFanning摩擦係数を混同する
両者には \(f_D=4f_F\) の関係があります。相当長さの計算でも、どちらの摩擦係数を使っているか確認が必要です。
静圧低下をすべて損失と考える
管径や高さが変わると、静圧・速度水頭・位置水頭の間で可逆的な変換も起こります。エネルギー損失 \(h_L\) と単なる静圧差を区別しましょう。
実務ではK値をどこから得るか
実務では、使用する製品のメーカー技術資料、配管設計ハンドブック、社内標準、実測データなどから \(K\) または \(L_{\mathrm{eq}}/D\) を取得します。
特にティーや分岐・合流部では、流れの方向と流量配分によって損失が変わります。単一の \(K\) だけで処理せず、使用する相関式の定義を確認することが重要です。
実験で継手の損失を求める場合は、上流・下流の十分発達した領域の圧力勾配を評価し、直管摩擦による圧力低下を差し引きます。径が変わる場合は、動圧の変化も分けて考えます。
まとめ
- 局所圧力損失は、継手・バルブ・入口・出口などで生じる不可逆なエネルギー損失
- 損失係数を使うと \(\Delta p_L=K\rho v^2/2\) と表せる
- 同じ基準流速なら、複数部品の \(K\) を合計できる
- 直管損失と合わせると \(\Delta p_L=(f_D L/D+\sum K)\rho v^2/2\)
- 相当長さは \(L_{\mathrm{eq}}=KD/f_D\)
- 異径継手では \(K\) の基準流速を必ず確認する
- \(K\) は形状、レイノルズ数、弁開度、流量配分などで変化する
- 「マイナー損失」でも、配管全体では無視できない場合がある
次は、配管系の圧力損失を補う装置であるポンプについて、揚程・動力・性能曲線の基礎へ進むと、配管設計の全体像がつながります。

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