再循環・パージ・バイパスとは?物質収支の立て方を例題で解説

再循環・パージ・バイパスを含む物質収支の立て方を解説する記事のアイキャッチ 物質収支
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化学プロセスのフロー図では、いったん装置を出た流れが入口へ戻ったり、装置を通らずに出口側へ回り込んだり、一部だけが系外へ抜き出されたりします。これが再循環(リサイクル)・バイパス・パージです。

流れが枝分かれすると難しく見えますが、物質収支の基本は変わりません。重要なのは、どこを計算範囲にするか、そして分岐点では組成が変わらないことです。

この記事では、3つの流れの役割と違い、物質収支を立てる順番、分流比の定義を、初学者向けの例題で解説します。

この記事でわかること

  • 再循環・バイパス・パージの違いと使い分け
  • 複雑なフローを「全体収支」と「装置収支」に分ける方法
  • 混合点・分岐点で成り立つ物質収支
  • 再循環比・バイパス率・パージ率の定義
  • パージが不活性成分の蓄積を防ぐ理由
  • 3種類のプロセスを例題で計算する方法

物質収支そのものが初めての方は、先に物質収支の基礎|基本式と立て方を確認すると理解しやすくなります。

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再循環・バイパス・パージの違い

図解|再循環・パージ・バイパスの流れ
再循環・パージ・バイパスの流れ新規原料から混合点、反応器、分離器、製品へ進む流れに対し、再循環で未反応物を戻し、パージで蓄積成分を抜き、バイパスで一部を迂回させる概念図。再循環・パージ・バイパスを1枚で整理混合点反応器分離器新規原料製品再循環:未反応原料を入口へ戻すパージ:一部を排出不活性物の蓄積を防ぐバイパス:一部を装置の外側へ迂回させる全体系の物質収支では、内部の再循環流は相殺される新規原料 = 製品 + パージ (定常・反応による質量増減なし)

最初に、3つの流れを整理しましょう。

流れ どこへ向かうか 主な目的 代表例
再循環 下流から上流へ戻る 未反応物や溶媒の再利用、総括転化率の向上、操作条件の安定化 反応器出口から未反応原料を回収して入口へ戻す
バイパス 装置を通らず下流へ進む 最終濃度・温度・湿度などの調整 原料の一部を蒸発器に通さず、濃縮液と混合する
パージ 循環流の一部を系外へ出す 不活性成分や不純物の蓄積防止 反応器の循環ガスから一部を抜き出す

言葉で覚えるなら、戻すのが再循環、通さないのがバイパス、ためないために捨てるのがパージです。

複雑なフローほど「計算範囲」を先に決める

定常状態で、反応がない成分 (i) の物質収支は、

\[
\boxed{
\sum \dot{m}_{i,\mathrm{in}}
=
\sum \dot{m}_{i,\mathrm{out}}
}
\]

です。反応がある場合は生成・消費を含めます。

再循環を含むプロセスでは、同じフロー図でも複数の計算範囲を選べます。

  • プロセス全体:新規供給流と、系外へ出る製品・排出流だけを数える
  • 混合点:新規供給流と再循環流が混ざる場所を囲む
  • 装置単体:反応器、蒸発器、分離器などを一つだけ囲む
  • 分岐点:一つの流れが再循環流とパージ流などに分かれる場所を囲む

再循環流はプロセス全体の境界を出入りしない内部流です。そのため、最初に全体収支を取ると、未知の再循環流量が式から消えます。

解き方の基本順序
① 全体収支で外部流を求める → ② 装置収支または混合点の収支を立てる → ③ 分流比から内部流を求める、の順に進めると未知数が増えにくくなります。

混合点と分岐点のルール

混合点では流量と各成分量を足す

新規供給流 (F) と再循環流 (R) が混ざり、混合流 (M) になるとします。全流量の収支は、

\[
\boxed{M=F+R}
\]

成分 (i) の収支は、質量分率を (w_i) とすると、

\[
\boxed{Mw_{i,M}=Fw_{i,F}+Rw_{i,R}}
\]

です。混合後の組成は単純な算術平均ではなく、流量で重み付けした平均になります。

質量分率・モル分率・濃度と流量の関係は、濃度・組成・流量の基礎で詳しく解説しています。

理想的な分岐点では組成が変わらない

流れ (S) が二つの流れ (P) と (R) に分かれるだけで、分離は起こらないとします。このとき、

\[
\boxed{S=P+R}
\]

かつ、すべての成分について、

\[
\boxed{w_{i,S}=w_{i,P}=w_{i,R}}
\]

です。分岐点は流量を分けるだけなので、出口どうしの組成は入口と同じです。

分岐点と分離器を区別する
分岐点では組成は変わりません。一方、膜・蒸留塔・気液分離器などの分離器では、出口流どうしの組成が異なります。「線が二つに分かれている」だけで分岐点だと決めず、装置の役割を確認しましょう。

再循環(リサイクル)とは

再循環は、プロセス下流の流れの全部または一部を上流へ戻す操作です。英語では recycle と呼びます。

代表的な目的は次のとおりです。

  • 反応器で反応しなかった原料を戻し、原料損失を減らす
  • 分離後の溶媒や母液を再利用する
  • 入口流量を増やし、装置内の流動や温度を安定させる
  • 製品の一部を戻し、入口濃度や水分を調整する

再循環の大きさは、問題によって異なる比で表されます。たとえば、

\[
r_F=\frac{R}{F}
\]

新規供給流基準の再循環比

\[
r_P=\frac{R}{P}
\]

製品流基準の再循環比と呼びます。

同じ「再循環比」という言葉でも分母が異なることがあるため、数値を使う前に定義を確認します。

例題1:乾燥工程の再循環流量

水分20 wt%の湿潤固体を (100\ \mathrm{kg/h}) 供給し、水分5 wt%の乾燥製品を得ます。乾燥機出口の一部を入口へ戻し、再循環比を (R/P=1.0) とします。蒸発するのは水だけとして、製品流量 (P)、蒸発水量 (W)、再循環流量 (R) を求めます。

手順1:プロセス全体の固体収支

再循環流は全体境界の内側にあるため、全体収支には現れません。乾燥固体の収支は、

\[
100(1-0.20)=P(1-0.05)
\]

したがって、

\[
P=\frac{80}{0.95}=84.21\ \mathrm{kg/h}
\]

です。

手順2:全体の水収支

全体の質量収支から、

\[
100=P+W
\]

なので、

\[
W=100-84.21=15.79\ \mathrm{kg/h}
\]

です。

手順3:再循環比を使う

\[
\frac{R}{P}=1.0
\]

より、

\[
R=84.21\ \mathrm{kg/h}
\]

となります。乾燥機に入る合計流量は、

\[
F+R=100+84.21=184.21\ \mathrm{kg/h}
\]

です。

求めた流れ 流量
製品 (P) (84.21\ \mathrm{kg/h})
蒸発水 (W) (15.79\ \mathrm{kg/h})
再循環流 (R) (84.21\ \mathrm{kg/h})
乾燥機入口の合計 (184.21\ \mathrm{kg/h})

この例から、再循環流は新規供給量や最終製品量を増やすのではなく、装置内部を循環する流量を増やすことがわかります。そのため実務では、再循環率を上げるとポンプ動力、配管径、装置負荷も大きくなる点に注意します。

バイパスとは

バイパスは、供給流の一部を装置へ通さず、装置出口側へ直接送る操作です。装置で処理された流れと未処理の流れを混合し、最終状態を調整します。

供給流 (F) が、処理流 (E) とバイパス流 (B) に分かれるなら、

\[
F=E+B
\]

です。バイパス率を供給流基準で定義すると、

\[
\boxed{b=\frac{B}{F}}
\]

となります。

例題2:蒸発器を通さないバイパス流量

非揮発性溶質を10 wt%含む水溶液を (100\ \mathrm{kg/h}) 供給します。供給液の一部を蒸発器へ送り、40 wt%まで濃縮します。残りは蒸発器をバイパスし、濃縮液と混合して20 wt%の最終製品を得ます。バイパス流量を求めます。

供給流を (F=100\ \mathrm{kg/h})、バイパス流を (B)、蒸発器への流れを (E=100-B)、濃縮液を (C)、最終製品を (P) とします。

手順1:プロセス全体の溶質収支

非揮発性溶質は蒸気へ出ないため、

\[
100\times0.10=P\times0.20
\]

よって、

\[
P=50\ \mathrm{kg/h}
\]

です。

手順2:蒸発器の溶質収支

\[
0.10E=0.40C
\]

したがって、

\[
C=0.25E=0.25(100-B)
\]

です。

手順3:混合点の全量収支

最終製品はバイパス流と濃縮液の混合なので、

\[
P=B+C
\]

ここへ (P=50) と (C=0.25(100-B)) を代入します。

\[
50=B+0.25(100-B)
\]

\[
50=25+0.75B
\]

\[
\boxed{B=33.33\ \mathrm{kg/h}}
\]

したがって、蒸発器へ送る流量は (66.67\ \mathrm{kg/h})、濃縮液は (16.67\ \mathrm{kg/h}) です。バイパス率は、

\[
b=\frac{33.33}{100}=0.333
\]

すなわち約33.3%となります。

バイパス流は未処理なので、増やすほど装置の負荷は下がりますが、最終製品は供給流の状態へ近づきます。この例では、濃縮液40 wt%と未処理液10 wt%を混ぜて、20 wt%へ調整しています。

パージとは

パージは、再循環ループを流れる物質の一部を系外へ抜き出す操作です。目的は、不活性成分や除去しにくい不純物が循環系内へ蓄積するのを防ぐことです。

分離器出口の流れ (S) を、パージ流 (P_g) と再循環流 (R) に分けるとします。パージ率 (p) を、分岐前の流量に対するパージ流量の割合と定義すると、

\[
\boxed{p=\frac{P_g}{S}}
\]

したがって、

\[
P_g=pS
\]

\[
R=(1-p)S
\]

です。理想的な分岐点なら、各成分についても同じ割合だけパージされます。

なぜパージしないと不活性成分が蓄積するのか

新規供給流から不活性成分が毎時入るのに、製品分離器で除去されず、再循環流としてすべて戻るとします。この場合、不活性成分には出口がありません。

定常状態では、

\[
\text{不活性成分の流入}=\text{不活性成分の流出}
\]

でなければなりません。パージがなければ右辺が0となるため、不活性成分が流入し続ける定常状態は成立せず、系内に蓄積します。

例題3:反応器循環系のパージ計算

新規供給流として、反応物Aを (90\ \mathrm{mol/h})、不活性成分Iを (10\ \mathrm{mol/h}) 供給します。Aの反応器1回通過転化率は80%です。反応生成物は分離器で完全に除去され、未反応AとIは分岐点へ進みます。分岐流の10%をパージし、90%を反応器入口へ戻します。

パージ率は (p=0.10) です。

手順1:不活性成分の収支

分岐前の不活性成分流量を (S_I) とします。定常状態では、新規に入るIはパージから出るIと等しいため、

\[
10=pS_I
\]

\[
S_I=\frac{10}{0.10}=100\ \mathrm{mol/h}
\]

です。このうち、

\[
P_{g,I}=0.10\times100=10\ \mathrm{mol/h}
\]

\[
R_I=0.90\times100=90\ \mathrm{mol/h}
\]

となります。

一般に、新規供給される不活性成分流量を (F_I) とすれば、

\[
\boxed{S_I=\frac{F_I}{p}}
\]

です。パージ率を小さくするほど、循環系内の不活性成分流量が大きくなることがわかります。

手順2:未反応Aの収支

分岐前の未反応A流量を (S_A) とします。再循環されるAは、

\[
R_A=(1-p)S_A=0.90S_A
\]

です。反応器に入るAは、

\[
90+0.90S_A
\]

となります。1回通過転化率が80%なので、未反応で出るAは入口の20%です。

\[
S_A=0.20(90+0.90S_A)
\]

\[
0.82S_A=18
\]

\[
S_A=21.95\ \mathrm{mol/h}
\]

よって、

\[
P_{g,A}=0.10\times21.95=2.20\ \mathrm{mol/h}
\]

\[
R_A=0.90\times21.95=19.76\ \mathrm{mol/h}
\]

です。反応器で反応するAは、

\[
90+19.76-21.95=87.80\ \mathrm{mol/h}
\]

となります。

手順3:1回通過転化率と総括転化率を区別する

反応器1回通過転化率は問題文どおり80%です。一方、新規供給したAを基準にした総括転化率は、未反応のまま系外へ出るパージ中のAを使って、

\[
X_{\mathrm{overall}}
=
\frac{90-2.20}{90}
=0.9756
\]

すなわち、

\[
\boxed{X_{\mathrm{overall}}=97.6\%}
\]

です。再循環によって、1回の通過では反応しなかったAにも再び反応の機会が与えられるため、総括転化率は1回通過転化率より高くなります。ただし、パージにはAも含まれるので、原料損失とのバランスが必要です。

成分 分岐前 パージ 再循環
A (21.95\ \mathrm{mol/h}) (2.20\ \mathrm{mol/h}) (19.76\ \mathrm{mol/h})
I (100.00\ \mathrm{mol/h}) (10.00\ \mathrm{mol/h}) (90.00\ \mathrm{mol/h})

物質収支問題を解く7つの手順

再循環・バイパス・パージを含む問題は、次の順番で整理すると解きやすくなります。

  1. 基準時間を決める:1時間あたり、1バッチあたりなどを統一する
  2. すべての流れに記号を付ける:流量と組成をフロー図へ書き込む
  3. 混合点・分岐点・分離器を区別する:特に分岐点では組成が同じ
  4. 比の定義を式で書く:再循環比やパージ率の分母を明確にする
  5. プロセス全体の収支を先に立てる:内部流を消して外部流を求める
  6. 必要な装置・混合点・分岐点の収支を立てる:内部流量を順に求める
  7. 全体収支へ戻して検算する:流入、流出、生成、消費が一致するか確認する
未知数が多いときのコツ
全量収支だけでなく、装置を通過しても保存される成分に着目します。蒸発器なら非揮発性溶質、乾燥機なら乾燥固体、反応系なら不活性成分や元素収支が使いやすい対象です。

よくある間違い

再循環流を全体収支の入口と出口に数える

再循環流は全体境界の内側を回る内部流です。全体収支では、新規供給流と系外へ出る製品・パージ・廃棄流だけを数えます。

分岐した流れの組成を別々にする

単純な分岐点では分離は起きません。分岐後のパージ流と再循環流は、分岐前と同じ組成です。

比率の分母を確認しない

(R/F) と (R/P)、(P_g/S) と (P_g/F) は別の量です。「再循環比1」「パージ10%」だけで式を作らず、何に対する比かを明記します。

パージ流は不純物だけだと考える

単純な分岐によるパージでは、目的の不純物だけでなく有用な反応物も同じ組成比で失われます。特定成分だけを除去するなら、それは分岐ではなく分離操作です。

1回通過転化率と総括転化率を混同する

1回通過転化率は反応器入口を基準にし、総括転化率は新規供給流を基準にします。再循環があると、両者の値は一般に異なります。

計算結果が負の流量でもそのまま進める

負の流量や0〜1の範囲を外れる質量分率が出た場合、式の符号、計算範囲、分流比の定義、問題条件の実現可能性を確認します。

実務では何を考えるか

実際のプロセスでは、再循環率やパージ率を物質収支だけで決めるわけではありません。

  • 再循環率を上げると原料利用率を改善できるが、ポンプ・圧縮機・配管・装置の負荷が増える
  • パージ率を上げると不純物濃度を下げられるが、有用成分の損失と処理量が増える
  • バイパス率を上げると装置負荷を下げられるが、最終品質が未処理原料の状態へ近づく
  • 循環ループは応答が遅くなったり、不純物濃度の変動が増幅したりする場合がある

したがって、実務では物質収支に加え、エネルギー消費、設備費、製品規格、安全性、制御性を含めて条件を決めます。初学者の段階では、まず「流量と組成が保存則を満たしているか」を確実に確認できれば十分です。

学んだ内容を問題で確認しよう
記事を読んだら、かこまるの化工演習室で化学工学の基礎問題に挑戦してみてください。解いた記録を残しながら、知識を定着できます。

確認問題

3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。

QUICK CHECK

1 / 3

化学工学の基礎・初級

このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。

まとめ

  • 再循環は下流の流れを上流へ戻し、原料再利用や総括転化率向上に使う
  • バイパスは供給流の一部を装置へ通さず、最終濃度や温度の調整に使う
  • パージは循環流の一部を系外へ出し、不活性成分や不純物の蓄積を防ぐ
  • 再循環流はプロセス全体では内部流なので、全体収支から消える
  • 理想的な分岐点では、分岐前後の組成はすべて同じ
  • 全体収支から始め、装置収支・混合点・分岐点へ進むと解きやすい
  • 再循環比・バイパス率・パージ率は、分母を必ず確認する
  • パージ率を小さくすると、循環系内の不活性成分量は大きくなる

複雑なフロー図でも、境界を一つずつ選び、保存される成分を追えば解けます。まず全体を大きく囲み、次に必要な装置だけを小さく囲む習慣をつけましょう。

参考文献

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