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一次遅れ系より少し複雑な動きを表せるのが二次遅れ系(2次遅れ系)です。二次遅れ系では、出力が目標値を行き過ぎるオーバーシュートや、上下に揺れながら落ち着く減衰振動が現れます。
この記事では、二次遅れ系の標準形から、減衰係数(減衰比)と固有角周波数の意味、ステップ応答、極との関係、計算例までを初学者向けに順番に解説します。
この記事の結論
- 固有角周波数 \(\omega_n\)は、応答の速さを決める
- 減衰係数 \(\zeta\)は、振動やオーバーシュートの出やすさを決める
- \(0<\zeta<1\) では振動、\(\zeta=1\) では振動せず最速、\(\zeta>1\) ではゆっくり収束する
二次遅れ系とは
入力と出力の関係を表す伝達関数の分母が2次式になる系を、二次遅れ系と呼びます。標準的な伝達関数は次式です。
\[
G(s)=\frac{K\omega_n^2}{s^2+2\zeta\omega_n s+\omega_n^2}
\]
| 記号 | 名称 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|---|
| \(K\) | 定常ゲイン | 入力の変化に対して、最終的に出力が何倍変化するか | 入出力による |
| \(\omega_n\) | 固有角周波数 | 系が本来もつ応答の速さ | rad/s |
| \(\zeta\) | 減衰係数(減衰比) | 振動を抑える強さ | 無次元 |
| \(s\) | ラプラス演算子 | 時間領域をラプラス領域へ移した変数 | 1/s |
ここでの「二次」は、出力が2回遅れるという意味ではなく、伝達関数の分母に \(s^2\) の項があるという意味です。
伝達関数そのものが初めての方は、先に伝達関数とは?一次遅れ系・時定数・ステップ応答を読むと理解しやすくなります。
化学プロセスで二次遅れ系が現れる理由
化学プロセスには、物質や熱を一時的に蓄える部分が複数あります。たとえば、二つの槽を順番に通る液体、熱交換器本体と温度センサー、反応器と配管などです。
一つの蓄積要素を一次遅れで表し、それらが直列につながると、全体の伝達関数は次のようになります。
\[
G(s)=\frac{K}{(T_1s+1)(T_2s+1)}
\]
分母を展開すると、
\[
G(s)=\frac{K}{T_1T_2s^2+(T_1+T_2)s+1}
\]
となり、分母が2次式になります。このように、二つの一次遅れ要素を直列に接続した系も二次遅れ系です。
感覚的なイメージ
蛇口をひねって一つの容器を満たすだけなら、変化は比較的単純です。しかし、一つ目の容器から二つ目の容器へ順番に液体が流れると、二つ目の液位はすぐには変わりません。変化が二段階で伝わるため、全体の応答は二次になります。
減衰係数による4種類の応答
二次遅れ系の応答形状を最も大きく左右するのが、減衰係数 \(\zeta\) です。
| 減衰係数 | 名称 | ステップ応答の特徴 |
|---|---|---|
| \(\zeta=0\) | 無減衰 | 振動がいつまでも続く |
| \(0<\zeta<1\) | 不足減衰 | 行き過ぎと振動を伴いながら収束する |
| \(\zeta=1\) | 臨界減衰 | 振動せず、理論上最も速く目標値へ近づく |
| \(\zeta>1\) | 過減衰 | 振動しないが、臨界減衰よりゆっくり収束する |
自転車や自動車のサスペンションを想像すると分かりやすいでしょう。減衰が弱すぎると何度も揺れ、強すぎると動きが重くなります。適度な減衰があると、大きく揺れずに短時間で落ち着きます。
極から応答を判断する
系の応答は、伝達関数の分母を0としたときの解、すなわち極によって決まります。
\[
s^2+2\zeta\omega_n s+\omega_n^2=0
\]
二次方程式を解くと、極は
\[
s=-\zeta\omega_n\pm\omega_n\sqrt{\zeta^2-1}
\]
です。
- \(0<\zeta<1\):複素共役極になり、振動しながら収束する
- \(\zeta=1\):同じ実極が二つ重なる
- \(\zeta>1\):異なる二つの負の実極になり、振動せず収束する
極の実部が負であれば時間とともに応答は減衰します。逆に、極の実部が正になる系は出力が発散するため不安定です。
不足減衰系のステップ応答
振動が現れる \(0<\zeta<1\) の場合を考えます。振動しながら減衰するときの角周波数を減衰固有角周波数と呼び、
\[
\omega_d=\omega_n\sqrt{1-\zeta^2}
\]
で表します。大きさ \(A\) のステップ入力に対する出力は、初期値を0とすると次式です。
\[
y(t)=KA\left[1-e^{-\zeta\omega_n t}\left\{\cos(\omega_dt)+\frac{\zeta}{\sqrt{1-\zeta^2}}\sin(\omega_dt)\right\}\right]
\]
式の中の \(e^{-\zeta\omega_n t}\) が、振動の振幅を時間とともに小さくする役割を持ちます。したがって、\(\zeta\omega_n\) が大きいほど振動は早く消えます。
ステップ応答を評価する三つの指標
最大行き過ぎ量(オーバーシュート)
最終値をどれだけ超えたかを百分率で表す最大行き過ぎ量は、
\[
M_p=\exp\left(-\frac{\pi\zeta}{\sqrt{1-\zeta^2}}\right)\times100\ \%
\]
です。\(\zeta\) が小さいほどオーバーシュートは大きくなります。
ピーク時間
最初のピークに達するまでの時間は、
\[
t_p=\frac{\pi}{\omega_d}=\frac{\pi}{\omega_n\sqrt{1-\zeta^2}}
\]
です。\(\omega_n\) が大きいほどピークへ早く到達します。
整定時間
出力が最終値の±2%以内に入り、その範囲にとどまるまでの時間は、次式で近似できます。
\[
t_s\approx\frac{4}{\zeta\omega_n}
\]
これは厳密式ではなく、包絡線を用いた実用的な近似です。
例題:二次遅れ系の応答特性を求める
次の伝達関数で表される系に単位ステップ入力を加えます。
\[
G(s)=\frac{4}{s^2+2s+4}
\]
1. 固有角周波数と減衰係数を求める
標準形の分母
\[
s^2+2\zeta\omega_ns+\omega_n^2
\]
と係数を比較します。\(\omega_n^2=4\) より、
\[
\omega_n=2\ \mathrm{rad/s}
\]
また、\(2\zeta\omega_n=2\) より、
\[
\zeta=\frac{2}{2\times2}=0.5
\]
したがって、この系は不足減衰系です。
2. 減衰固有角周波数を求める
\[
\omega_d=2\sqrt{1-0.5^2}=1.73\ \mathrm{rad/s}
\]
3. 最大行き過ぎ量を求める
\[
M_p=\exp\left(-\frac{\pi\times0.5}{\sqrt{1-0.5^2}}\right)\times100=16.3\ \%
\]
定常ゲインは \(K=1\) なので、最終値1に対して最初のピークは約1.163になります。
4. ピーク時間と整定時間を求める
\[
t_p=\frac{\pi}{1.73}=1.81\ \mathrm{s}
\]
\[
t_s\approx\frac{4}{0.5\times2}=4.0\ \mathrm{s}
\]
この計算から、「約1.8秒で最初のピークに達し、16%ほど行き過ぎ、約4秒でほぼ落ち着く」と予測できます。
二つの一次遅れ要素と減衰係数の関係
先ほどの直列系
\[
G(s)=\frac{K}{(T_1s+1)(T_2s+1)}
\]
を標準形と比較すると、
\[
\omega_n=\frac{1}{\sqrt{T_1T_2}}
\]
\[
\zeta=\frac{T_1+T_2}{2\sqrt{T_1T_2}}
\]
が得られます。相加平均と相乗平均の関係から、正の時定数に対して
\[
\zeta\geq1
\]
となります。つまり、単純な一次遅れ要素を二つ直列にしただけでは、通常オーバーシュートは起こりません。
計算例
\(T_1=2\ \mathrm{min}\)、\(T_2=8\ \mathrm{min}\) とすると、
\[
\omega_n=\frac{1}{\sqrt{2\times8}}=0.25\ \mathrm{rad/min}
\]
\[
\zeta=\frac{2+8}{2\sqrt{2\times8}}=1.25
\]
よって過減衰系です。二つの槽を直列にした液位応答などは、なめらかですが比較的ゆっくり目標値へ近づく形になります。
化学プロセスで振動が見えたときの考え方
プロセス単体が過減衰でも、フィードバック制御器を含めた閉ループ系では不足減衰になり、温度・圧力・流量などが振動することがあります。
たとえば制御器の比例ゲインを上げると応答は速くなる一方、減衰が弱まり、オーバーシュートやハンチングが大きくなる場合があります。安全性や製品品質を考えると、「速ければよい」のではなく、応答速度と振動のバランスが重要です。
閉ループ伝達関数の作り方は、ブロック線図とは?等価変換とフィードバック結合で詳しく解説しています。
一次遅れ系と二次遅れ系の違い
| 項目 | 一次遅れ系 | 二次遅れ系 |
|---|---|---|
| 分母の次数 | 1次 | 2次 |
| 主なパラメータ | ゲイン、時定数 | ゲイン、固有角周波数、減衰係数 |
| オーバーシュート | 基本形では起きない | \(0<\zeta<1\) で起きる |
| 振動 | 基本形では起きない | 減衰係数により起きる |
| 代表例 | 単一槽の温度・濃度応答 | 複数の蓄積要素、閉ループ制御系 |
よくある間違い
減衰係数と固有角周波数を混同する
\(\omega_n\) は主に応答の時間尺度、\(\zeta\) は主に振動の出やすさを表します。二つを分けて考えることが重要です。
分子の定数から固有角周波数を決める
\(\omega_n\) と \(\zeta\) は、まず分母を標準形と比較して求めます。分子は定常ゲイン \(K\) を合わせるために確認します。
整定時間の近似式を厳密式と思う
\(t_s\approx4/(\zeta\omega_n)\) は2%基準の目安です。定義する許容範囲や零点の有無によって、実際の整定時間は変わります。
二次遅れなら必ず振動すると思う
振動するのは主に \(0<\zeta<1\) の場合です。\(\zeta\geq1\) なら振動せずに収束します。
確認問題
3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。
QUICK CHECK
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まとめ
- 二次遅れ系の標準形は \(G(s)=K\omega_n^2/(s^2+2\zeta\omega_ns+\omega_n^2)\)
- 固有角周波数 \(\omega_n\) は応答の速さ、減衰係数 \(\zeta\) は振動の出やすさを表す
- \(0<\zeta<1\) では減衰振動とオーバーシュートが現れる
- 最大行き過ぎ量、ピーク時間、整定時間から応答性能を定量評価できる
- 二つの一次遅れ要素の直列系は二次系だが、通常は \(\zeta\geq1\) で振動しない
次は、二次遅れ系をフィードバック制御したときに、制御器の設定が応答へどう影響するかを学ぶと、PID制御への理解がつながります。式の導出に戻りたい場合は、ラプラス変換と微分方程式から伝達関数を求める方法も参照してください。
参考文献
- 九州大学「計測技術概論」
- 電気学会論文誌C「ステップ応答波形の特徴量を利用したPIコントローラのチューニング方法」
- Journal of Chemical Engineering of Japan「Automatic Tuning of PID Controller Using Second-Order Plus Time Delay Model」


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