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※内容は大学の反応工学教材や講義資料などをもとに確認しています。
転化率とは、供給した反応物のうち反応した割合です。たとえば原料Aを100 mol供給し、20 mol残った場合、転化率は80%です。
収率は「目的生成物をどれだけ得られたか」、選択率は「副生成物に対して目的生成物をどれだけ優先して作れたか」を表します。この記事では、3つの違いと求め方を計算式・例題から整理し、分母を取り違えない考え方まで解説します。
転化率・収率・選択率の違いを先に確認
\[X_A=\frac{F_{A0}-F_A}{F_{A0}}\]
- 転化率:供給した反応物のうち、実際に反応した割合。
- 収率:原料から目的生成物をどれだけ得られたかを表す割合。
- 選択率:目的生成物が副生成物に対してどれだけ優先してできたかを表す比。
収率・選択率は資料によって定義が異なるため、分母と化学量論基準を必ず確認します。
この記事で分かること
- 転化率・収率・選択率がそれぞれ何を表すか
- 流通系と回分系における計算式
- 反応した原料基準の収率と、供給原料基準の収率の違い
- 瞬間選択率と総括選択率の違い
- 化学量論係数が1でない場合の補正方法
- 並列反応で濃度・温度・反応器形式が選択率へ与える影響
- 逐次反応で中間生成物を最大化する考え方
転化率・収率・選択率の違い
まずは3つの指標を一言で整理します。
| 指標 | 基本的な意味 | 代表的な分母 |
|---|---|---|
| 転化率 \(X_A\) | 原料Aが反応した割合 | 供給したA |
| 収率 \(Y_D\) | 原料Aが目的生成物Dへ変わった効率 | 反応したA、または供給したA |
| 選択率 \(S_{D/U}\) | 目的生成物Dが副生成物Uに対してできた比 | 生成したU |
収率と選択率は、必ず定義を確認する
収率・選択率には複数の慣用的な定義があります。論文、教科書、会社の計算書で分母が異なる場合があるため、「何を何で割った値か」を式で明記することが重要です。この記事では、生成物が入口に含まれず、基本反応が1:1の例から説明します。
転化率とは?定義・計算式・求め方
転化率は、供給した原料のうち、反応によって消費された割合です。反応物Aの転化率を \(X_A\) とします。
流通系の転化率
CSTRやPFRのような定常流通系では、入口と出口のモル流量を使います。
\boxed{X_A=\frac{F_{A0}-F_A}{F_{A0}}}
\]
ここで、\(F_{A0}\) は入口のAのモル流量、\(F_A\) は出口のAのモル流量です。
回分系の転化率
回分反応器では、初期と時刻 \(t\) の物質量を使います。
\boxed{X_A=\frac{N_{A0}-N_A}{N_{A0}}}
\]
転化率は「Aが消えた割合」を表すだけで、Aが何に変わったかは区別しません。目的生成物Dになっても、副生成物Uになっても、Aが消費されれば転化率は上がります。
収率とは?転化率との違い
収率は、原料から目的生成物をどれだけ有効に得られたかを表します。ただし、分母に「反応した原料」を使うか「供給した原料」を使うかで値が変わります。
反応した原料基準の総括収率
流通系で、目的生成物Dの入口流量を \(F_{D0}\)、出口流量を \(F_D\) とすると、反応したAに対するDの総括収率は、
\boxed{\widetilde{Y}_D=
\frac{F_D-F_{D0}}{F_{A0}-F_A}}
\]
です。生成物が原料に含まれない場合は \(F_{D0}=0\) です。この定義は「反応したAのうち、何割がDになったか」を表します。
回分系ではモル数を使って、
\boxed{\widetilde{Y}_D=
\frac{N_D-N_{D0}}{N_{A0}-N_A}}
\]
と表します。
供給原料基準の生成物収率
供給したA全体に対して、得られたDの割合を表す定義もよく使われます。
\boxed{Y_{D,\mathrm{feed}}=
\frac{F_D-F_{D0}}{F_{A0}}}
\]
1:1反応なら、2種類の収率には次の関係があります。
\boxed{Y_{D,\mathrm{feed}}=X_A\widetilde{Y}_D}
\]
つまり、供給原料基準の収率を高くするには、転化率と反応した原料基準の収率の両方が必要です。
瞬間収率
ある濃度・温度において、消費されるAのうちDになる割合を瞬間収率と呼びます。
\boxed{Y_D=\frac{r_D}{-r_A}}
\]
\(r_D\) はDの生成速度、\(-r_A\) はAの総消費速度です。瞬間収率はその瞬間の反応経路の分配、総括収率は入口から出口まで積み重なった結果を表します。
選択率とは?収率との違い
選択率は、目的生成物Dと副生成物Uのどちらが優先して生成したかを表します。
瞬間選択率
ある濃度・温度における生成速度の比です。
\boxed{S_{D/U}=\frac{r_D}{r_U}}
\]
\(S_{D/U}=3\) なら、その条件ではDがUの3倍の速度で生成しています。
総括選択率
反応器全体で実際に生成した量の比です。流通系では、
\boxed{\widetilde{S}_{D/U}=
\frac{F_D-F_{D0}}{F_U-F_{U0}}}
\]
回分系では、
\boxed{\widetilde{S}_{D/U}=
\frac{N_D-N_{D0}}{N_U-N_{U0}}}
\]
と表します。定常CSTRでは槽内の濃度と出口濃度が同じなので、生成物が入口に含まれず、化学量論をそろえた単純な並列反応なら、瞬間選択率と総括選択率は一致します。
化学量論係数が1でない場合
これまでの式は、AからDまたはUが1:1で生じる場合を想定しました。たとえば、
aA\rightarrow dD
\]
なら、Dの生成量を化学量論係数 \(d\)、Aの消費量を \(a\) で割り、反応進行度に相当する量で比較します。
\boxed{\widetilde{Y}_D=
\frac{(F_D-F_{D0})/d}{(F_{A0}-F_A)/a}}
\]
DとUの化学量論係数がそれぞれ \(d\)、\(u\) なら、総括選択率は、
\boxed{\widetilde{S}_{D/U}=
\frac{(F_D-F_{D0})/d}{(F_U-F_{U0})/u}}
\]
となります。質量基準で評価する場合は、モル流量の代わりに質量流量を使います。どの基準でも、分子と分母の単位・化学量論基準をそろえることが大切です。
計算例:転化率・収率・選択率を求める
反応物Aから目的生成物Dと副生成物Uが、それぞれ1:1で生成する並列反応を考えます。
\begin{aligned}
A&\rightarrow D &&\text{(目的反応)}\\
A&\rightarrow U &&\text{(副反応)}
\end{aligned}
\]
入口と出口のモル流量は次のとおりです。DとUは入口に含まれないものとします。
| 成分 | 入口流量 | 出口流量 |
|---|---|---|
| 反応物A | \(100\ \mathrm{mol/h}\) | \(20\ \mathrm{mol/h}\) |
| 目的生成物D | 0 | \(60\ \mathrm{mol/h}\) |
| 副生成物U | 0 | \(20\ \mathrm{mol/h}\) |
1.転化率
X_A=\frac{100-20}{100}
=\boxed{0.80}
\]
Aの80%が反応しています。
2.反応したA基準の総括収率
\widetilde{Y}_D=\frac{60}{100-20}
=\boxed{0.75}
\]
反応したAの75%が目的生成物Dになっています。
3.供給A基準の生成物収率
Y_{D,\mathrm{feed}}=\frac{60}{100}
=\boxed{0.60}
\]
供給したA全体の60%がDとして得られています。確かに、
X_A\widetilde{Y}_D
=0.80\times0.75
=0.60
\]
となります。
4.総括選択率
\widetilde{S}_{D/U}=\frac{60}{20}
=\boxed{3.0}
\]
DはUの3倍生成しています。
複数反応の4つの型
| 型 | 模式反応 | 特徴 |
|---|---|---|
| 並列反応 | \(A\rightarrow D,\ A\rightarrow U\) | 同じ原料が複数経路で競争する |
| 逐次反応 | \(A\rightarrow D\rightarrow U\) | 目的物がさらに反応する |
| 複合反応 | 並列と逐次の組合せ | 複数の競争・後続反応が共存する |
| 独立反応 | \(A\rightarrow B,\ C\rightarrow D\) | 異なる反応が相互に関与せず進む |
複数反応では、1つの転化率だけで全成分の量を表せない場合があります。そのため、各成分のモル流量 \(F_i\) や濃度 \(C_i\) を直接使って物質収支を立てる方法が基本になります。
並列反応の選択率と濃度
次の並列反応を考えます。
A\xrightarrow{k_D}D,\qquad
A\xrightarrow{k_U}U
\]
速度式を、
\begin{aligned}
r_D&=k_D C_A^{\alpha}\\
r_U&=k_U C_A^{\beta}
\end{aligned}
\]
とすると、瞬間選択率は、
\boxed{S_{D/U}=
\frac{k_D}{k_U}C_A^{\alpha-\beta}}
\]
です。目的反応と副反応の反応次数の差によって、望ましい濃度条件が変わります。
- \(\alpha>\beta\):Aの濃度を高く保つとDが有利です。PFR、高濃度原料、低希釈が候補になります。
- \(\alpha<\beta\):Aの濃度を低く保つとDが有利です。CSTR、希釈、原料Aの分割供給が候補になります。
- \(\alpha=\beta\):濃度項が消え、選択率は \(k_D/k_U\) で決まります。
反応速度式の意味や反応次数については、反応速度とは?速度式・反応次数・速度定数を例題で解説も参照してください。
1次並列反応の例
両方がAについて1次で、
k_D=0.30\ \mathrm{min^{-1}},\qquad
k_U=0.10\ \mathrm{min^{-1}}
\]
なら、瞬間選択率は濃度によらず、
S_{D/U}=\frac{k_D}{k_U}=3.0
\]
です。消費されたAがDへ向かう瞬間収率は、
Y_D=\frac{r_D}{r_D+r_U}
=\frac{k_D}{k_D+k_U}
=\frac{0.30}{0.40}
=0.75
\]
となります。転化率80%なら、供給A基準のD収率は \(0.80\times0.75=0.60\) です。
温度が選択率へ与える影響
速度定数をアレニウス式で表すと、
\begin{aligned}
k_D&=A_D\exp\left(-\frac{E_D}{RT}\right)\\
k_U&=A_U\exp\left(-\frac{E_U}{RT}\right)
\end{aligned}
\]
速度定数の比は、
\boxed{\frac{k_D}{k_U}
=\frac{A_D}{A_U}
\exp\left[-\frac{E_D-E_U}{RT}\right]}
\]
です。
- \(E_D>E_U\):一般に温度を上げるほど目的反応の速度定数が相対的に大きくなります。
- \(E_D<E_U\):一般に低温側が目的反応の選択率に有利です。
ただし、温度は反応速度、平衡、触媒劣化、安全性にも影響します。選択率だけで運転温度を決めず、必要生産量や除熱能力を含めて評価します。
逐次反応では目的生成物を取り出す時点が重要
次の逐次1次反応で、中間生成物Bが目的生成物だとします。
A\xrightarrow{k_1}B\xrightarrow{k_2}C
\]
反応初期にはAからBが生成するためB濃度は上がります。しかし時間が長すぎると、BがCへ変わってB濃度は下がります。
定容回分反応器、または密度一定の理想PFRの流体要素について、\(C_{B0}=0\)、\(k_1\neq k_2\) なら、
C_A=C_{A0}e^{-k_1t}
\]
C_B=C_{A0}\frac{k_1}{k_2-k_1}
\left(e^{-k_1t}-e^{-k_2t}\right)
\]
B濃度が最大になる時刻は、\(dC_B/dt=0\)、つまりBの生成速度と消費速度が等しい条件です。
k_1C_A=k_2C_B
\]
\boxed{t_{\max}=
\frac{\ln(k_2/k_1)}{k_2-k_1}}
\]
数値例
\(k_1=0.50\ \mathrm{min^{-1}}\)、\(k_2=0.10\ \mathrm{min^{-1}}\) とすると、
t_{\max}=
\frac{\ln(0.10/0.50)}{0.10-0.50}
=\boxed{4.02\ \mathrm{min}}
\]
初期濃度を \(C_{A0}=1.00\ \mathrm{mol/L}\) とすると、この時点で、
\begin{aligned}
C_A&=0.134\ \mathrm{mol/L}\\
C_B&=0.669\ \mathrm{mol/L}\\
C_C&=0.197\ \mathrm{mol/L}
\end{aligned}
\]
です。Aの転化率は86.6%ですが、さらに反応を続けて転化率を上げると、目的物BがCへ変わり、Bの収率は低下します。逐次反応では「転化率を最大にする」ことと「目的生成物を最大にする」ことが一致しません。
反応器形式で選択率を改善する
並列反応で望ましい濃度が分かれば、反応器形式の選択につなげられます。
| 望ましい条件 | 候補となる操作 | 理由 |
|---|---|---|
| Aを高濃度に保つ | PFR、高濃度供給、低希釈 | PFR入口ではA濃度が高い |
| Aを低濃度に保つ | CSTR、希釈、Aの分割供給 | CSTR全体が出口の低濃度になる |
| Bを低濃度に保つ | 半回分でBを徐々に供給 | Bを蓄積させず副反応を抑える |
| 中間生成物Dを守る | 短い滞留時間、急冷、反応後の迅速分離 | Dの後続反応を止める |
理想反応器の濃度分布については、CSTRの設計式とPFRの設計式の記事で詳しく解説しています。
実務で指標を使うときの確認事項
- 基準成分:どの反応物を基準に転化率を定義したか
- モル基準か質量基準か:単位と化学量論補正がそろっているか
- 生成物の入口量:リサイクル流では入口に生成物が含まれることがある
- 瞬間値か総括値か:反応速度の比か、出口までに生成した量の比か
- 分離工程を含むか:反応収率と、精製後の単離収率・製品回収率を区別する
- 未反応原料のリサイクル:単流転化率とプロセス全体の総括転化率を区別する
よくある間違い
- 転化率をそのまま目的生成物の収率と考える:副反応があれば一致しません。
- 収率の分母を書かない:反応した原料基準と供給原料基準では値が異なります。
- 選択率を百分率に限定する:D/Uの比なので1を超えることがあります。
- 化学量論係数を無視する:反応進行度または理論生成量へ換算して比較します。
- 瞬間選択率と総括選択率を混同する:PFRや回分反応器では濃度が変化するため、一般に一致しません。
- 逐次反応で転化率だけを最大化する:目的中間体がさらに反応し、収率が下がることがあります。
確認問題
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QUICK CHECK
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まとめ
- 転化率は、供給した原料Aのうち反応した割合を表す
- 収率は、原料が目的生成物Dへ変わった効率を表す
- 収率には反応した原料基準と供給原料基準があり、1:1反応では \(Y_{D,\mathrm{feed}}=X_A\widetilde{Y}_D\) となる
- 選択率は、目的生成物Dと副生成物Uの生成速度または生成量の比である
- 瞬間値はその場の反応経路、総括値は反応器全体の結果を表す
- 並列反応では反応次数の差に応じて、濃度・温度・反応器形式を選ぶ
- 逐次反応では中間生成物に最大値があり、転化率を上げすぎると目的物収率が低下することがある
- 収率・選択率を示すときは、分母、化学量論基準、モル基準か質量基準かを明記する
まずは「転化率=Aが消えた割合」「収率=AがDになった効率」「選択率=DとUの比」と覚え、計算時には必ず分子と分母を書き出しましょう。
参考資料
- University of Michigan, Elements of Chemical Reaction Engineering: Multiple Reactions
- University of Michigan, Reaction Engineering and Design: Selectivity in Multiple Reactions
- MIT OpenCourseWare, Chemical and Biological Reaction Engineering: Selectivity vs. Conversion
- Princeton University, Reactor Design Guide
- UCSB, Chemical Reactor Analysis and Design Fundamentals
この先の学習ルート
反応成績の指標を、物質収支・反応速度・反応器設計へ順番につなげましょう。
- 先に物質収支:物質収支の基本式と解き方
- 反応速度を学ぶ:反応速度式・反応次数・Arrhenius式
- 回分操作へ応用:回分反応器の設計式
- 連続槽型へ応用:CSTRの設計式
- 管型反応器へ応用:PFRの設計式
全体を確認:化学工学の学習ロードマップ
アウトプット:この下の確認テストで、理解できたところと復習箇所を確かめましょう。


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