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※内容は大学の反応工学教材や講義資料などをもとに確認しています。
PFRは、細長い管の中を流体が進みながら反応する連続式反応器です。化学工学では、回分反応器やCSTRと並ぶ代表的な理想反応器として扱います。
PFRの設計で最も重要なのは、反応器をごく小さな体積に分け、入口から出口まで順番に物質収支を積み重ねることです。入口付近では反応物濃度が高く、出口へ近づくほど濃度が低くなるため、反応速度も位置によって変わります。
この記事で分かること
- PFRの構造と押し出し流れのイメージ
- 理想PFRで仮定する「半径方向の完全混合」と「軸方向混合なし」の意味
- 微小体積の物質収支から設計式を導く方法
- 空間時間・滞留時間と転化率の関係
- 0次・1次・2次反応のPFR設計式
- PFRの転化率と必要容積を求める計算方法
- PFRとCSTRで必要容積が異なる理由
PFR(管型反応器)とは
PFRは Plug Flow Reactor の略称で、日本語では管型反応器、押し出し流れ反応器、プラグフロー反応器などと呼ばれます。
原料を管の一端から連続的に供給し、流体が管内を進む間に反応させ、反対側から製品を連続的に取り出します。細長い管を使う形が典型ですが、理想PFRは装置の外形ではなく、後述する流れ方のモデルを表す言葉です。
PFRの代表的な用途
- 連続的に運転する均一液相反応
- 高温で行う気相反応や熱分解反応
- 管壁から加熱・冷却しながら進める反応
- 触媒を充填した固定床反応器の基礎モデル
- 短い滞留時間を精密に与えたい高速反応
実装置では1本の長い管だけでなく、多数の細管を束ねた多管式反応器や、管をコイル状に巻いた反応器もあります。
理想PFRの4つの仮定
PFRの設計式を使う前に、理想モデルが何を仮定しているのかを押さえましょう。
1.定常状態
ある位置の温度や濃度が時間とともに変化しない状態です。ただし、入口から出口へ向かう位置による変化はあります。
2.半径方向には一様
同じ断面上では、濃度・温度・流速が同じとみなします。つまり、管の中心と壁付近の違いを無視し、各断面を1つの状態で代表させます。
3.軸方向の混合がない
流体は進行方向の前後へ混ざらず、栓を押し出すように進むと仮定します。この「流体の栓」が plug という名称の由来です。
4.すべての流体要素が同じ履歴をたどる
同時に入口へ入った流体は、同じ時間をかけて出口へ到達すると考えます。そのため、理想PFRの滞留時間分布は1点に集中します。
「半径方向には混ざるが、軸方向には混ざらない」がポイント
一見すると矛盾するようですが、PFRでは断面内の差を無視する一方、上流と下流の流体は混ざらないと考えます。その結果、状態は管の長さ方向だけの関数になります。
微小体積の物質収支から設計式を導く
CSTRでは反応器全体に対して物質収支を立てました。PFRでは濃度が位置によって変わるため、反応器の中から微小体積 \(dV\) を取り出して物質収支を立てます。
成分Aについて、定常状態の一般的な物質収支は次式です。
\text{流入}-\text{流出}+\text{反応による生成}=0
\]
微小体積 \(dV\) へ入るAのモル流量を \(F_A\)、出るモル流量を \(F_A+dF_A\)、Aの生成速度を \(r_A\) とすると、
F_A-\left(F_A+dF_A\right)+r_A\,dV=0
\]
したがって、PFRの基本式は
\boxed{\frac{dF_A}{dV}=r_A}
\]
となります。Aが反応物なら \(r_A<0\) なので、反応器容積 \(V\) が増えるほど \(F_A\) は減少します。
転化率を使ったPFR設計式
Aの入口モル流量を \(F_{A0}\)、転化率を \(X_A\) とすると、
F_A=F_{A0}(1-X_A)
\]
入口条件が一定なら、
dF_A=-F_{A0}\,dX_A
\]
これをPFRの基本式へ代入すると、
-F_{A0}\frac{dX_A}{dV}=r_A
\]
dV=F_{A0}\frac{dX_A}{-r_A}
\]
入口では \(V=0,\ X_A=0\) です。目標転化率 \(X_A\) まで積分すれば、
\boxed{V=F_{A0}\int_0^{X_A}\frac{dX_A}{-r_A}}
\]
これがPFRの設計式です。CSTRの設計式が出口反応速度を使う代数式だったのに対し、PFRでは位置とともに変わる反応速度を積分します。
空間時間・滞留時間とPFR設計式
入口体積流量を \(v_0\)、反応器容積を \(V\) とすると、空間時間 \(\tau\) は
\boxed{\tau=\frac{V}{v_0}}
\]
です。密度と体積流量が一定の液相反応では \(F_{A0}=C_{A0}v_0\) なので、設計式を \(v_0\) で割ると、
\boxed{\tau=C_{A0}\int_0^{X_A}\frac{dX_A}{-r_A}}
\]
また、\(C_A=C_{A0}(1-X_A)\) を使えば、
\boxed{\tau=\int_{C_A}^{C_{A0}}\frac{dC_A}{-r_A}}
\]
と表せます。
空間時間の感覚
\(\tau=V/v_0\) は、入口流量で反応器容積を満たすのに必要な時間です。密度一定の理想PFRでは、流体のかたまりが反応器内で反応する時間として扱えます。
1次反応の転化率
密度一定の液相で、不可逆1次反応
A\rightarrow B
\]
を考えます。反応速度式は
-r_A=kC_A
\]
です。\(C_A=C_{A0}(1-X_A)\) を代入すると、
-r_A=kC_{A0}(1-X_A)
\]
PFR設計式へ代入すれば、
\tau=C_{A0}\int_0^{X_A}\frac{dX_A}{kC_{A0}(1-X_A)}
\]
\boxed{\tau=-\frac{1}{k}\ln(1-X_A)}
\]
転化率について解くと、
\boxed{X_A=1-\exp(-k\tau)}
\]
となります。\(k\tau\) が大きいほど転化率は高くなりますが、理論上 \(X_A=1\) へ近づくだけで、有限の空間時間で厳密に100%にはなりません。
計算例1:容積と流量から転化率を求める
次の条件で1次反応を行うPFRを考えます。
| 項目 | 記号 | 値 |
|---|---|---|
| 反応器容積 | \(V\) | \(2.0\ \mathrm{m^3}\) |
| 入口体積流量 | \(v_0\) | \(0.50\ \mathrm{m^3/min}\) |
| 反応速度定数 | \(k\) | \(0.25\ \mathrm{min^{-1}}\) |
まず空間時間を求めます。
\tau=\frac{V}{v_0}
=\frac{2.0}{0.50}
=4.0\ \mathrm{min}
\]
したがって転化率は、
X_A=1-\exp(-k\tau)
=1-\exp(-0.25\times4.0)
\]
\boxed{X_A=0.632}
\]
転化率は約63.2%です。同じ \(V\)、\(v_0\)、\(k\) のCSTRでは \(X_A=0.500\) だったため、この条件ではPFRの方が高い転化率になります。
管内で濃度はどのように変わるか
断面積と流速が一定なら、入口からの距離 \(z\) に比例して経過空間時間が増えます。上の例で \(k\tau=1\) のとき、管内の転化率は次のように変わります。
| 無次元位置 \(z/L\) | 局所転化率 \(X_A\) | 残存濃度 \(C_A/C_{A0}\) |
|---|---|---|
| 0 | 0 | 1.000 |
| 0.25 | 0.221 | 0.779 |
| 0.50 | 0.393 | 0.607 |
| 0.75 | 0.528 | 0.472 |
| 1.00 | 0.632 | 0.368 |
入口付近では濃度が高く、反応速度も大きいので、最初の区間ほど転化率が大きく増加します。
計算例2:80%転化に必要な容積
同じ \(k=0.25\ \mathrm{min^{-1}}\)、\(v_0=0.50\ \mathrm{m^3/min}\) の条件で、目標転化率を \(X_A=0.80\) とします。
\tau=-\frac{1}{k}\ln(1-X_A)
\]
\tau=-\frac{1}{0.25}\ln(1-0.80)
=6.44\ \mathrm{min}
\]
必要容積は、
V=v_0\tau
=0.50\times6.44
\]
\boxed{V=3.22\ \mathrm{m^3}}
\]
同じ条件・同じ目標転化率のCSTRでは \(8.0\ \mathrm{m^3}\) が必要でした。PFRは入口付近の高い反応速度を活用できるため、正の反応次数では一般にCSTRより小さな容積で同じ転化率を達成できます。
0次・1次・2次反応の設計式
密度一定の液相反応について、代表的な反応次数ごとの式をまとめます。
| 反応次数 | 速度式 | PFRの空間時間 | 転化率 |
|---|---|---|---|
| 0次 | \(-r_A=k\) | \(\displaystyle \tau=\frac{C_{A0}X_A}{k}\) | \(\displaystyle X_A=\frac{k\tau}{C_{A0}}\) |
| 1次 | \(-r_A=kC_A\) | \(\displaystyle \tau=-\frac{\ln(1-X_A)}{k}\) | \(\displaystyle X_A=1-e^{-k\tau}\) |
| 2次 | \(-r_A=kC_A^2\) | \(\displaystyle \tau=\frac{X_A}{kC_{A0}(1-X_A)}\) | \(\displaystyle X_A=\frac{kC_{A0}\tau}{1+kC_{A0}\tau}\) |
0次反応の転化率式は、反応物が残っている範囲 \(0\leq X_A\leq1\) で使います。計算結果が1を超える場合は、反応物が途中で枯渇することを意味します。
レーベンシュピールプロットで必要容積を読む
横軸に転化率 \(X_A\)、縦軸に \(F_{A0}/(-r_A)\) をとったグラフをレーベンシュピールプロットと呼びます。
PFRの必要容積は、入口の \(X_A=0\) から目標転化率までの曲線下の面積です。
V_{\mathrm{PFR}}
=F_{A0}\int_0^{X_A}\frac{dX_A}{-r_A}
\]
一方、CSTRでは槽内全体が出口濃度なので、必要容積は出口反応速度を高さとする長方形です。
V_{\mathrm{CSTR}}
=\frac{F_{A0}X_A}{(-r_A)_{\mathrm{out}}}
\]
正の反応次数では転化率が上がるほど反応物濃度が低下し、反応速度も低下します。このときCSTRの長方形はPFRの曲線下の面積より大きくなります。
PFRとCSTRの違い
| 比較項目 | PFR | CSTR |
|---|---|---|
| 濃度分布 | 入口から出口へ連続的に変化 | 槽内と出口が同じ |
| 混合の仮定 | 断面内は一様、軸方向混合なし | 槽内は完全混合 |
| 設計式 | 反応速度を積分 | 出口反応速度で代数計算 |
| 正の反応次数 | 入口の高い反応速度を活用 | 槽全体が低い出口反応速度 |
| 温度制御 | 位置ごとの温度分布に注意 | 撹拌により比較的均一 |
| 連続運転 | 可能 | 可能 |
CSTRの設計式と完全混合の考え方は、CSTRとは?設計式・滞留時間・転化率を例題で解説で詳しく説明しています。
1次反応で \(k\tau=1\) の場合
同じ容積と入口流量、つまり同じ空間時間で比較すると、
X_{\mathrm{PFR}}=1-e^{-1}=0.632
\]
X_{\mathrm{CSTR}}=\frac{1}{1+1}=0.500
\]
です。PFRでは入口付近の高濃度領域が高い反応速度で働くため、より高い転化率になります。
PFRと回分反応器の関係
密度一定・等温の理想系では、PFR内を進む流体要素が経験する濃度変化は、回分反応器内の流体が時間とともに経験する濃度変化と数学的に対応します。
たとえば1次反応では、
X_{\mathrm{PFR}}=1-e^{-k\tau}
\]
X_{\mathrm{batch}}=1-e^{-kt}
\]
なので、\(\tau=t\) なら同じ転化率になります。ただし、PFRは入口と出口を持つ定常連続装置、回分反応器は時間とともに槽全体が変化する非定常装置であり、運転方法は異なります。
回分反応器については、回分反応器とは?設計式・転化率・反応時間を例題で解説も参照してください。
容積から管の長さを求める
内径 \(D\)、長さ \(L\) の円管なら、反応器容積は
\boxed{V=\frac{\pi D^2}{4}L}
\]
したがって、必要長さは
\boxed{L=\frac{4V}{\pi D^2}}
\]
計算例2で求めた \(V=3.22\ \mathrm{m^3}\) を、内径 \(D=0.50\ \mathrm{m}\) の1本の管で確保すると、
L=\frac{4\times3.22}{\pi(0.50)^2}
=16.4\ \mathrm{m}
\]
となります。実際には伝熱面積、圧力損失、製作性、設置面積なども考慮し、複数の細管へ分けることがあります。
実際の設計で注意すること
層流では速度分布ができる
円管内の層流では中心付近が速く、壁付近が遅く流れます。流体ごとの滞留時間が同じという理想PFRの仮定から外れやすくなるため、拡散・混合や滞留時間分布を考える必要があります。
軸方向混合・逆混合
乱れや循環によって上流と下流が混ざると、理想PFRよりCSTRに近い挙動になります。軸方向混合の強さは、分散モデルやペクレ数を用いて評価します。
発熱・吸熱による温度変化
反応速度定数 \(k\) は温度に強く依存します。発熱反応では入口から出口へ温度が上がり、反応速度が急増する場合があります。実務では物質収支とエネルギー収支を連立し、冷却ジャケットや多管式熱交換構造を設計します。
気相反応の体積流量変化
気相反応ではモル数、温度、圧力の変化によって体積流量 \(v\) が変わることがあります。この場合、単純な \(C_A=C_{A0}(1-X_A)\) は使えず、化学量論と状態方程式から濃度を求めます。
圧力損失
長い管や触媒充填層では圧力が入口から出口へ低下します。気相では圧力低下によって濃度と反応速度が変わるため、PFR設計式と圧力損失式を連立する必要があります。
PFR設計でよくある間違い
- 反応速度を出口条件だけで評価する:それはCSTRの考え方です。PFRでは位置ごとの速度を積分します。
- 管内の濃度は一定と考える:同じ断面内は一様でも、入口から出口へ濃度は変化します。
- \(\tau=V/v_0\) を常に平均滞留時間と同一視する:密度や体積流量が変化する系では定義と仮定を確認します。
- 生成速度 \(r_A\) の符号を間違える:Aが反応物なら \(r_A<0\)、消費速度 \(-r_A>0\) です。
- 気相反応で液相の濃度式をそのまま使う:モル数変化、温度、圧力、圧力損失を考慮します。
確認問題
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QUICK CHECK
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まとめ
- PFRは、流体が前後に混ざらず管内を進む理想的な連続反応器である
- 同じ断面内の状態は一様だが、濃度と反応速度は入口から出口へ変化する
- 微小体積の物質収支から \(\displaystyle dF_A/dV=r_A\) を得る
- 転化率を使った設計式は \(\displaystyle V=F_{A0}\int_0^{X_A}dX_A/(-r_A)\) である
- 密度一定の1次反応では \(\displaystyle X_A=1-e^{-k\tau}\) となる
- 正の反応次数では、PFRは入口の高い反応速度を活用でき、一般にCSTRより小さな容積で同じ転化率を達成する
- 実装置では温度分布、圧力損失、軸方向混合、滞留時間分布も検討する
PFRの数式は「反応器を小さく切り分け、それぞれで物質収支を立てる」と考えると理解しやすくなります。まずは1次反応の式を自分で導き、同じ条件のCSTRと数値を比較してみましょう。
参考資料
- University of Michigan, Elements of Chemical Reaction Engineering: Derivation of PFR Reactor Design Equations
- University of Michigan, Elements of Chemical Reaction Engineering: Levenspiel Plots in Terms of Concentrations
- MIT OpenCourseWare, Chemical and Biological Reaction Engineering: The Plug Flow Reactor
- UCSB, Chemical Reactor Analysis and Design Fundamentals
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