吸収塔とは?ガス吸収の原理・物質収支・操作線を例題で解説

吸収塔とは?ガス吸収の原理・物質収支・操作線を例題で解説 ガス吸収・放散

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※内容は大学の分離工学教材や公的機関の技術資料などをもとに確認しています。

工場の排ガスからアンモニアや二酸化硫黄を取り除きたい。あるいは、混合ガスから目的成分を液体へ回収したい。このようなときに使われる代表的な分離装置が吸収塔です。

吸収塔では、気体と液体を接触させ、気体中の特定成分だけを液体へ溶かし込みます。見た目は蒸留塔とよく似ていますが、分離を起こす仕組みは異なります。

この記事で分かること

  • 吸収塔が気体を分離する仕組み
  • 充填式吸収塔の構造と向流接触を使う理由
  • モル分率 \(x,y\) とモル比 \(X,Y\) の違い
  • 吸収塔の物質収支と操作線の導き方
  • 平衡線と操作線が表す意味
  • 最小液量の考え方と求め方
  • 例題から必要な吸収液流量と出口濃度を計算する手順
  • 塔高・塔径を決めるために次に必要な考え方
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吸収塔とは

吸収塔は、混合ガスを液体と接触させ、ガス中の溶質成分を液相へ移動させる装置です。ガス中から取り除きたい成分を被吸収成分、その成分を溶かす液体を吸収液または吸収剤と呼びます。

たとえば、次のような用途があります。

  • 排ガス中の酸性ガスやアンモニアの除去
  • 天然ガスや合成ガスからの二酸化炭素・硫化水素の除去
  • ガス中に含まれる溶剤蒸気や有価成分の回収
  • 後工程に悪影響を与える微量ガス成分の精製

吸収は、成分が気相から液相へ移る物質移動操作です。吸収塔の内部では、気液平衡だけでなく、接触面積、流量、拡散速度、圧力損失などが性能を左右します。

吸収・放散・蒸留の違い

分離操作 主な成分移動 分離の起こし方 代表例
吸収 気相から液相 ガス成分を吸収液へ溶かす 排ガス中のアンモニアを水へ吸収
放散・ストリッピング 液相から気相 液中の溶質をガスへ追い出す 吸収液から溶解ガスを回収
蒸留 両方向の蒸発・凝縮 揮発度の差を利用して気液接触を繰り返す ベンゼンとトルエンの分離

吸収と放散は、成分移動の向きが反対です。吸収後の液体から溶質を回収し、吸収液を再利用するために、吸収塔と放散塔(ストリッピング塔)を組み合わせることもあります。

充填式吸収塔の構造

吸収塔には棚段塔やスプレー塔などもありますが、ここでは代表的な向流式の充填塔を考えます。塔内には充填物が入り、その表面を吸収液が薄い膜となって流れます。ガスは充填物のすき間を上向きに流れ、液膜と接触します。

向流式充填吸収塔の構造塔頂から希薄な吸収液が入り、充填物の表面を下向きに流れる。塔底から溶質を含む原料ガスが入り、上向きに流れる。塔頂から浄化ガス、塔底から溶質を含む吸収液が出る。向流式の充填吸収塔充填物大きな気液接触面積をつくる液は下向きガスは上向き希薄な吸収液Lₛ, Xᵢₙ浄化されたガスGₛ, Yₒᵤₜ溶質を含む原料ガスGₛ, Yᵢₙ濃くなった吸収液Lₛ, Xₒᵤₜ気液を反対方向に流し、塔全体で濃度差を保つ

向流接触では、最も汚れた入口ガスが、溶質を多く含むもののまだ吸収能力をもつ出口液と接触します。一方、浄化された出口ガスは、溶質濃度の低い新しい吸収液と接触します。この組み合わせにより、塔の上から下まで物質移動の駆動力を保ちやすくなります。

図解|吸収塔では、ガスと液体を向流で接触させる

吸収塔では、ガスと液体を向流で接触させる充填塔の下から溶質を含むガスを上向きに、上から吸収液を下向きに流し、溶質を気相から液相へ移す図。 充填層 原料ガス IN溶質濃度 高 精製ガス OUT溶質濃度 低 吸収液 IN溶質濃度 低 吸収液 OUT溶質濃度 高 溶質は 気相 → 液相 へ移動

向流にすると塔の全域で物質移動の推進力を確保しやすくなります。塔頂ほどガスは清浄に、塔底ほど液体は溶質を多く含みます。

吸収を支配する3つの考え方

1.溶質が吸収液へ溶けやすいこと

同じガスでも、吸収液によって溶けやすさは異なります。温度、圧力、溶質と溶媒の組み合わせが平衡溶解度を決めます。一般に、物理吸収では低温・高圧ほどガスを液体へ吸収しやすくなります。

2.平衡から離れていること

液相組成 \(x\) と平衡にある気相組成を \(y^*\) とすると、気相側で見た物質移動の駆動力は、おおまかに次の差で表されます。

\[
\text{物質移動の駆動力}\propto y-y^*
\]

\(y>y^*\) なら、実際のガスは平衡状態より多くの溶質を含むため、溶質は気相から液相へ移動します。\(y=y^*\) になると、その場所で正味の物質移動は起こりません。

3.十分な接触面積と接触時間があること

充填物は、液を薄い膜として広げ、気液の接触面積を大きくします。ただし、液の偏流、充填物の濡れ不足、ガス流速の上げすぎによるフラッディングが起これば、期待した性能は得られません。

濃度を表す \(x,y\) と \(X,Y\)

気液平衡では、液相中の溶質モル分率を \(x\)、気相中の溶質モル分率を \(y\) と表すことが一般的です。

  • \(x\):液相中の溶質モル分率
  • \(y\):気相中の溶質モル分率

一方、吸収塔の物質収支では、溶質を含まない成分を基準にしたモル比を使うと計算が明快になります。

\[
X=\frac{x}{1-x}
\]

\[
Y=\frac{y}{1-y}
\]

  • \(X\):溶質を含まない吸収液1 molあたりの溶質量
  • \(Y\):溶質を含まないキャリアガス1 molあたりの溶質量

希薄系では \(x\ll1,\ y\ll1\) なので、\(X\approx x,\ Y\approx y\) と近似できます。しかし、数%程度でも厳密な収支を取りたい場合は、最初にモル比へ変換するのが安全です。

なぜモル比を使うのか

吸収によって溶質は気相から液相へ移りますが、溶質を除いたキャリアガス流量 \(G_s\) と、溶質を除いた吸収液流量 \(L_s\) は、蒸発や溶媒損失を無視すれば塔内で一定とみなせます。そのため、\(X,Y\) を使うと操作線が直線になります。

吸収塔全体の物質収支

定常状態で、吸収液の蒸発、キャリアガスの液への溶解、化学反応による全モル数変化を無視します。塔全体の溶質収支は次式です。

\[
G_sY_{\mathrm{in}}+L_sX_{\mathrm{in}}
=G_sY_{\mathrm{out}}+L_sX_{\mathrm{out}}
\]

移項すると、ガスから減った溶質量と、液に増えた溶質量が等しいことが分かります。

\[
G_s\left(Y_{\mathrm{in}}-Y_{\mathrm{out}}\right)
=L_s\left(X_{\mathrm{out}}-X_{\mathrm{in}}\right)
\]

この式は吸収塔計算の出発点です。入口・出口濃度とガス流量が分かれば、吸収液流量または出口液濃度を求められます。

平衡線とは

平衡線は、ある温度・圧力で、液相組成 \(X\) と平衡にある気相組成 \(Y^*\) の関係を表します。希薄な物理吸収では、ヘンリーの法則に基づき、次の直線で近似することがあります。

\[
Y^*=mX
\]

\(m\) は平衡線の傾きです。同じ \(X\) に対して \(Y^*\) が小さい、つまり \(m\) が小さいほど、溶質は液へ溶けやすいと考えられます。

\(m\) は普遍的な定数ではありません

平衡関係は、溶質・溶媒の組み合わせ、温度、圧力、濃度範囲によって変わります。実際の設計では、対象系の平衡データを確認します。高濃度や非理想性の強い系に、原点を通る直線を無条件で使ってはいけません。

操作線とは

操作線は、実際に運転している吸収塔の同じ位置における気相組成 \(Y\) と液相組成 \(X\) の関係です。塔頂から任意の高さまでを囲んで溶質収支を立てると、次式が得られます。

\[
G_s\left(Y-Y_{\mathrm{out}}\right)
=L_s\left(X-X_{\mathrm{in}}\right)
\]

したがって、操作線は次の直線になります。

\[
Y=Y_{\mathrm{out}}
+\frac{L_s}{G_s}\left(X-X_{\mathrm{in}}\right)
\]

操作線の傾きは \(L_s/G_s\) です。吸収液流量を増やすと操作線は急になり、一般に平衡線との間隔が広がります。

平衡線と操作線の関係

吸収塔の平衡線と操作線横軸が液相モル比X、縦軸が気相モル比Y。平衡線より上に実際の操作線があり、その縦方向の差YマイナスYスターが吸収の駆動力を表す。最小液量の操作線は塔底で平衡線に接する。平衡線と操作線XY液相中の溶質モル比気相中の溶質モル比平衡線 Y* = mX実際の操作線最小液量の操作線塔頂(Xᵢₙ, Yₒᵤₜ)塔底(Xₒᵤₜ, Yᵢₙ)ピンチ点駆動力 Y − Y*

吸収では、実際の気相濃度が平衡濃度より高い \(Y>Y^*\) の状態が必要です。そのため、\(Y\)-\(X\) 線図では操作線が平衡線より上に位置します。両者の縦方向の差 \(Y-Y^*\) が小さくなるほど物質移動は遅くなり、必要な塔高が増えます。

最小液量とは

吸収液流量 \(L_s\) を減らすと、操作線の傾き \(L_s/G_s\) は小さくなり、操作線は平衡線へ近づきます。限界まで減らすと、通常は塔底側で出口液が入口ガスと平衡になります。

\[
Y_{\mathrm{in}}=Y_{\mathrm{out}}^*
\]

ここで、記号の混同を避けるため、入口ガス \(Y_{\mathrm{in}}\) と平衡になる液組成を \(X_{\mathrm{out}}^*\) と書くと、

\[
Y_{\mathrm{in}}=mX_{\mathrm{out}}^*
\]

したがって、平衡出口液組成は次式です。

\[
X_{\mathrm{out}}^*=\frac{Y_{\mathrm{in}}}{m}
\]

最小液量は、塔全体の物質収支から求められます。

\[
\left(\frac{L_s}{G_s}\right)_{\min}
=\frac{Y_{\mathrm{in}}-Y_{\mathrm{out}}}
{X_{\mathrm{out}}^*-X_{\mathrm{in}}}
\]

最小液量では実際に設計できません

最小液量では平衡線と操作線が接し、その点の物質移動の駆動力がゼロになります。理論段数または必要塔高が無限大へ近づくため、実際は最小液量より多い吸収液を流します。

例題:吸収塔に必要な液量を計算する

希薄な溶質Aを含むガスを、溶質を含まない吸収液で洗浄する向流吸収塔を考えます。温度と圧力は一定で、平衡関係は \(Y^*=1.5X\) とします。

条件 記号
溶質を除いたキャリアガス流量 \(G_s\) \(100\ \mathrm{kmol/h}\)
入口ガスの溶質モル分率 \(y_{\mathrm{in}}\) \(0.050\)
出口ガスの溶質モル分率 \(y_{\mathrm{out}}\) \(0.010\)
入口吸収液の溶質モル分率 \(x_{\mathrm{in}}\) \(0\)
平衡線の傾き \(m\) \(1.5\)
実際の吸収液量 \(L_s\) \(1.5L_{s,\min}\)

手順1:モル分率をモル比へ変換する

\[
\begin{aligned}
Y_{\mathrm{in}}
&=\frac{y_{\mathrm{in}}}{1-y_{\mathrm{in}}}\\
&=\frac{0.050}{1-0.050}\\
&=0.05263
\end{aligned}
\]

\[
\begin{aligned}
Y_{\mathrm{out}}
&=\frac{y_{\mathrm{out}}}{1-y_{\mathrm{out}}}\\
&=\frac{0.010}{1-0.010}\\
&=0.01010
\end{aligned}
\]

\[
X_{\mathrm{in}}=0
\]

ガスから除去する溶質量は、キャリアガス基準で次の値です。

\[
\begin{aligned}
G_s\left(Y_{\mathrm{in}}-Y_{\mathrm{out}}\right)
&=100(0.05263-0.01010)\\
&=4.253\ \mathrm{kmol/h}
\end{aligned}
\]

溶質の除去率は次のとおりです。

\[
\eta
=\frac{Y_{\mathrm{in}}-Y_{\mathrm{out}}}{Y_{\mathrm{in}}}\times100
=80.8\%
\]

手順2:最小液量を求める

最小液量では、塔底から出る液が入口ガスと平衡になります。

\[
\begin{aligned}
X_{\mathrm{out}}^*
&=\frac{Y_{\mathrm{in}}}{m}\\
&=\frac{0.05263}{1.5}\\
&=0.03509
\end{aligned}
\]

最小液量とガス流量の比は、次のようになります。

\[
\begin{aligned}
\left(\frac{L_s}{G_s}\right)_{\min}
&=\frac{Y_{\mathrm{in}}-Y_{\mathrm{out}}}
{X_{\mathrm{out}}^*-X_{\mathrm{in}}}\\
&=\frac{0.05263-0.01010}{0.03509-0}\\
&=1.212
\end{aligned}
\]

\[
\begin{aligned}
L_{s,\min}
&=1.212\times100\\
&=121.2\ \mathrm{kmol/h}
\end{aligned}
\]

手順3:実際の吸収液量を決める

問題では、最小液量の1.5倍を流すため、

\[
\begin{aligned}
L_s
&=1.5L_{s,\min}\\
&=1.5\times121.2\\
&=181.8\ \mathrm{kmol/h}
\end{aligned}
\]

となります。実際の設計倍率は、必要な除去率、塔高、循環ポンプ動力、吸収液の再生費、装置コストなどを合わせて決めます。

手順4:出口液濃度を求める

塔全体の溶質収支を \(X_{\mathrm{out}}\) について解きます。

\[
X_{\mathrm{out}}
=X_{\mathrm{in}}
+\frac{G_s}{L_s}
\left(Y_{\mathrm{in}}-Y_{\mathrm{out}}\right)
\]

\[
\begin{aligned}
X_{\mathrm{out}}
&=0+\frac{100}{181.8}(0.05263-0.01010)\\
&=0.02339
\end{aligned}
\]

モル分率へ戻すと、

\[
\begin{aligned}
x_{\mathrm{out}}
&=\frac{X_{\mathrm{out}}}{1+X_{\mathrm{out}}}\\
&=\frac{0.02339}{1+0.02339}\\
&=0.02286
\end{aligned}
\]

したがって、出口吸収液の溶質モル分率は約 \(2.29\%\) です。

手順5:塔底の駆動力を確認する

出口液 \(X_{\mathrm{out}}\) と平衡な気相濃度は、

\[
\begin{aligned}
Y_{\mathrm{bottom}}^*
&=mX_{\mathrm{out}}\\
&=1.5\times0.02339\\
&=0.03509
\end{aligned}
\]

です。塔底の気相は \(Y_{\mathrm{in}}=0.05263\) なので、気相基準の駆動力は、

\[
\begin{aligned}
Y_{\mathrm{in}}-Y_{\mathrm{bottom}}^*
&=0.05263-0.03509\\
&=0.01754>0
\end{aligned}
\]

となります。実際の液量が最小液量より多いため、塔底でも正の駆動力が残っています。

例題の答え

  • 溶質除去率:\(80.8\%\)
  • 最小吸収液流量:\(121.2\ \mathrm{kmol/h}\)
  • 実際の吸収液流量:\(181.8\ \mathrm{kmol/h}\)
  • 出口液の溶質モル比:\(X_{\mathrm{out}}=0.02339\)
  • 出口液の溶質モル分率:\(x_{\mathrm{out}}=0.02286\)

吸収液量を増やすとどうなるか

吸収液量を増やしたとき 主な影響
操作線の傾き \(L_s/G_s\) が大きくなり、操作線が平衡線から離れやすい
物質移動の駆動力 一般に大きくなり、必要な理論段数・塔高を減らしやすい
出口液濃度 同じ吸収量なら、液量が多いほど薄くなる
ポンプ動力 増加する
吸収液の再生・処理 循環量が増え、再生設備や熱負荷が大きくなることがある
塔内流動 圧力損失やフラッディングへの余裕が小さくなる場合がある

液量を増やせば無条件によいわけではありません。塔本体を小さくできても、ポンプや再生設備の費用が増えるため、装置費と運転費の両方から適切な液量を選びます。

理論段とHTU–NTU法

棚段式吸収塔では、平衡段を仮定し、平衡線と操作線の間で階段作図を行って理論段数を求められます。考え方は蒸留のMcCabe–Thiele法と似ていますが、吸収では操作線が平衡線の上に位置します。

一方、充填塔では気液が連続的に接触するため、塔高 \(Z\) を移動単位高さHTU移動単位数NTUの積で表す方法がよく使われます。HTUの計算には、総括物質移動係数と二重境膜説の理解が役立ちます。

\[
Z=HTU\times NTU
\]

気相総括基準の代表的な形では、

\[
N_{OG}
=\int_{Y_{\mathrm{out}}}^{Y_{\mathrm{in}}}
\frac{dY}{Y-Y^*}
\]

となります。平衡線と操作線が近づき、駆動力 \(Y-Y^*\) が小さくなるほどNTUが増え、より高い充填層が必要です。

液量計算だけでは塔高は決まらない

この記事で求めたのは物質収支と操作線です。実際の塔高を決めるには、平衡関係、物質移動係数、濡れ面積、充填物の特性を使ってHTUとNTUを評価します。

吸収塔の塔径と塔高は何で決まるか

設計項目 主に支配するもの
塔径 ガス・液流量、密度、充填物、圧力損失、フラッディング速度
充填層高さ 必要な分離度、平衡関係、操作線、物質移動係数、HTU・NTU
吸収液循環量 物質収支、最小液量、塔高と運転費のバランス
運転温度・圧力 溶解度、反応速度、溶媒蒸発、設備条件
付属設備 液分配器、再分配器、充填物支持板、ミスト除去器、ポンプ

塔径は主として流体を通せる量、塔高は目標の分離を達成するために必要な物質移動量から決まる、と捉えると分かりやすいでしょう。

物理吸収と化学吸収

項目 物理吸収 化学吸収
仕組み 溶解によって液相へ取り込む 溶解後の化学反応も利用する
主な特徴 高圧・低温で有利になりやすい 低い分圧でも高い除去率を得やすい
再生 減圧や加熱で比較的容易な場合がある 反応を戻すための熱が大きい場合がある
有機溶媒によるガス成分の溶解 アルカリ水溶液による酸性ガス吸収、アミンによるCO₂吸収

化学反応を伴う場合、見かけ上の平衡関係や物質移動速度が変わります。単純な \(Y^*=mX\) だけでは表せないことが多く、反応平衡、反応速度、発熱、溶媒劣化なども考慮します。

吸収液の選び方

  • 対象ガスをよく溶かす、または選択的に反応する
  • 蒸気圧が低く、ガスとともに失われにくい
  • 粘度が低く、濡れ性と物質移動性がよい
  • 腐食性、毒性、可燃性が低い
  • 熱的・化学的に安定で、分解しにくい
  • 放散や加熱によって再生しやすい
  • 安価で入手しやすく、廃液処理が容易である

吸収能力だけでなく、吸収液を再生して循環させる費用や、安全性まで含めて選ぶ必要があります。

よくある計算ミス

  • モル分率 \(x,y\) とモル比 \(X,Y\) を途中で混ぜる
  • 全ガス流量と溶質を除いたキャリアガス流量 \(G_s\) を同じものとして扱う
  • 吸収塔なのに操作線を平衡線の下へ描く
  • 平衡線の傾き \(m\) を温度・圧力に関係しない定数だと考える
  • 最小液量を、そのまま実際の運転液量として採用する
  • 液量を増やせば塔全体の費用も必ず下がると考える
  • 物質収支だけで充填層高さまで決められると考える
  • 溶媒の蒸発、発熱、化学反応、圧力損失を無視できる条件を確認しない

よくある質問

吸収塔とスクラバーは同じですか?

重なる部分はあります。スクラバーは、液体を使ってガス状物質や粒子を除去する装置の総称として使われます。ガス成分を液へ溶かして除去する湿式スクラバーは吸収塔の一種と考えられますが、粒子の捕集が主目的の装置もあります。

なぜガスを下から、液を上から入れるのですか?

向流にすると、塔の各位置で濃度差を保ちやすく、高い除去率を得やすいためです。液は重力で下向きに流れ、ガスは圧力差によって上向きに流れます。

操作線が平衡線と交差するとどうなりますか?

交差点では駆動力がゼロになり、それを越えると想定していた方向の吸収が起こりません。指定した入口・出口条件を、その液量と平衡関係では実現できないことを意味します。

最小液量の何倍を流せばよいですか?

一律の値では決まりません。学習用の例では最小液量の1.2~2倍などを仮定することがありますが、実設計では塔高、圧力損失、循環動力、吸収液再生費、運転変動への余裕を比較して決めます。

吸収は発熱しますか?

多くのガスの溶解や化学吸収では熱が発生します。温度が上がると物理吸収の平衡が不利になることがあるため、濃厚系や反応吸収では塔内温度分布や冷却も重要です。

確認問題

3問のミニテストで、ここまでの内容を確認しましょう。選択すると、その場で正誤と解説が表示されます。

QUICK CHECK

1 / 3

分離工学・初級

このミニテストの回答結果は保存されません。学習記録を残す場合は化工演習室をご利用ください。

まとめ

  • 吸収塔は、ガス中の溶質を吸収液へ移す物質移動装置である
  • 向流接触では、塔全体にわたって濃度差を保ちやすい
  • モル比は \(X=x/(1-x)\)、\(Y=y/(1-y)\) で定義する
  • 塔全体の収支は \(G_s(Y_{\mathrm{in}}-Y_{\mathrm{out}})=L_s(X_{\mathrm{out}}-X_{\mathrm{in}})\) である
  • 操作線は \(Y=Y_{\mathrm{out}}+(L_s/G_s)(X-X_{\mathrm{in}})\) となる
  • 吸収では、操作線が平衡線より上にあり、\(Y-Y^*>0\) が必要である
  • 最小液量ではピンチが生じ、必要な段数・塔高が無限大へ近づく
  • 例題では、最小液量が \(121.2\ \mathrm{kmol/h}\)、実際の液量が \(181.8\ \mathrm{kmol/h}\) となった
  • 塔高を決めるには、物質収支に加えてHTU–NTUや物質移動係数が必要である
  • 実際の設計では、液量、塔高、圧力損失、吸収液再生費を合わせて評価する

吸収塔の計算では、「ガスから消えた溶質は液へ移る」という物質収支と、「平衡からどれだけ離れているか」という駆動力を分けて考えることが大切です。まず平衡線と操作線を理解すると、最小液量、理論段数、HTU–NTUによる塔高計算へ自然につながります。

参考資料

この先の学習ルート

この記事を土台に、次の3記事へ進むと理解がつながります。

  1. 移動の基本:相間物質移動・界面平衡・kLa
  2. 抵抗を理解:二重境膜説と総括物質移動係数
  3. 逆操作を学ぶ:放散塔の操作線と最小ガス量

全体を確認:化学工学の学習ロードマップ(全94記事)

アウトプット:この下の確認テストで、理解できたところと復習箇所を確かめましょう。

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