ハーゲン・ポアズイユの法則とは?円管内層流の流量式を導出と例題で解説

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Hagen–Poiseuille(ハーゲン・ポアズイユ)の法則は、細い円管を流れるニュートン流体の層流について、圧力差・流量・粘度・管寸法の関係を表す式です。

この法則から、円管内層流の速度分布が放物線になること、中心流速が平均流速の2倍になること、流量が管内径の4乗に比例することがわかります。毛細管粘度計、細管、マイクロ流路、低速の高粘度流体などの計算に使われます。

この記事では、微小な円筒状流体に働く力の釣り合いから速度分布を導き、断面積分によって流量式を求めます。さらに、Darcy–Weisbachの式や管摩擦係数との関係を例題で確認します。

この記事でわかること

  • Hagen–Poiseuilleの法則の基本式
  • 式を使うための適用条件
  • 円管内層流の放物線速度分布
  • 平均流速と最大流速の関係
  • 流量が管径の4乗に比例する理由
  • 圧力損失式とDarcy摩擦係数との関係
  • 毛細管を使った粘度の求め方

Hagen–Poiseuilleの法則とは

十分に発達した円管内層流では、体積流量 \(Q\) は次の式で表されます。

\[
\boxed{
Q
=
\frac{\pi D^4}{128\mu L}
\Delta p
}
\]

半径 \(R=D/2\) を使うと、

\[
\boxed{
Q
=
\frac{\pi R^4}{8\mu L}
\Delta p
}
\]

記号 意味 SI単位
\(Q\) 体積流量 \(\mathrm{m^3/s}\)
\(D\) 管内径 \(\mathrm{m}\)
\(R\) 管内半径 \(\mathrm{m}\)
\(\mu\) 粘度 \(\mathrm{Pa\,s}\)
\(L\) 管長 \(\mathrm{m}\)
\(\Delta p\) 管の両端の圧力差 \(\mathrm{Pa}\)

流量は圧力差に比例し、粘度と管長に反比例します。特に重要なのが、流量が管内径の4乗に比例することです。

Hagen–Poiseuilleの法則の適用条件

この式は、次の条件を満たす理想化された流れに適用します。

条件 意味
定常流れ 各位置の流速や圧力が時間で変化しない
非圧縮性 密度が流れに沿って一定
ニュートン流体 粘度がせん断速度に依存しない
層流 円管レイノルズ数が十分小さい
十分に発達した流れ 速度分布が流れ方向に変化しない
円形・一定径・直管 断面形状と管径が一定
壁面ですべりなし 管壁に接する流体の速度が0
粘度一定 温度などによる粘度変化を無視できる

乱流、非ニュートン流体、入口直後、管径変化、滑り境界、気体の大きな圧縮を伴う流れには、そのまま適用できません。

層流・乱流の判定は、レイノルズ数の記事で解説しています。

円管内層流の速度分布を導出する

半径 \(R\)、長さ \(L\) の水平円管を考えます。入口圧力を \(p_1\)、出口圧力を \(p_2\) とし、\(\Delta p=p_1-p_2>0\) とします。

管中心から半径 \(r\) までの円筒状の流体を取り出し、流れ方向の力の釣り合いを考えます。

圧力によって流体を押す力

円筒の断面積は \(\pi r^2\) なので、上流と下流の圧力差による力は、

\[
F_p
=
\Delta p\,\pi r^2
\]

です。

粘性によって流れを妨げる力

円筒側面の面積は \(2\pi rL\) です。側面へ働くせん断応力の大きさを \(\tau(r)\) とすると、粘性力は、

\[
F_{\tau}
=
\tau(r)\,2\pi rL
\]

です。

力の釣り合いからせん断応力を求める

定常流れでは、圧力による力と粘性力が釣り合います。

\[
\Delta p\,\pi r^2
=
\tau(r)\,2\pi rL
\]

したがって、

\[
\boxed{
\tau(r)
=
\frac{\Delta p}{2L}r
}
\]

となります。せん断応力は管中心で0、管壁へ近づくほど大きくなります。

ニュートンの粘性法則を適用する

流速を \(u(r)\) とします。管中心から壁へ向かうほど流速が小さくなるため、\(\mathrm{d}u/\mathrm{d}r<0\) です。せん断応力の大きさは、

\[
\tau(r)
=
-\mu\frac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}r}
\]

と書けます。力の釣り合いから得た式を代入すると、

\[
-\mu\frac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}r}
=
\frac{\Delta p}{2L}r
\]

よって、

\[
\frac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}r}
=
-\frac{\Delta p}{2\mu L}r
\]

です。\(r\) について積分すると、

\[
u(r)
=
-\frac{\Delta p}{4\mu L}r^2
+C
\]

管壁で流体速度が0となる、すべりなし条件 \(u(R)=0\) を使うと、

\[
C
=
\frac{\Delta p}{4\mu L}R^2
\]

したがって、円管内層流の速度分布は、

\[
\boxed{
u(r)
=
\frac{\Delta p}{4\mu L}
\left(R^2-r^2\right)
}
\]

となります。\(r\) の二次式なので、速度分布は放物線です。

粘度とニュートンの粘性法則は、粘度の記事で詳しく解説しています。

最大流速と平均流速

管中心の最大流速

管中心 \(r=0\) では流速が最大となります。

\[
\boxed{
u_{\mathrm{max}}
=
\frac{\Delta pR^2}{4\mu L}
}
\]

断面平均流速

断面平均流速は \(\bar{v}=Q/A\) で定義します。後で求める流量式を使うと、

\[
\boxed{
\bar{v}
=
\frac{\Delta pR^2}{8\mu L}
=
\frac{\Delta pD^2}{32\mu L}
}
\]

したがって、

\[
\boxed{
u_{\mathrm{max}}
=
2\bar{v}
}
\]

です。十分に発達した円管内層流では、中心最大流速は断面平均流速の2倍になります。米国エネルギー省の流体基礎資料でも、層流の速度分布は放物線状で、中心最大流速は平均流速のおよそ2倍と説明されています。

速度分布を積分して流量式を求める

半径 \(r\)、厚さ \(\mathrm{d}r\) の環状部分の面積は、

\[
\mathrm{d}A
=
2\pi r\,\mathrm{d}r
\]

です。この部分を通る微小流量は、

\[
\mathrm{d}Q
=
u(r)\,2\pi r\,\mathrm{d}r
\]

なので、管全体の流量は、

\[
Q
=
\int_0^R
u(r)\,2\pi r\,\mathrm{d}r
\]

です。速度分布を代入すると、

\[
\begin{aligned}
Q
&=
\int_0^R
\frac{\Delta p}{4\mu L}
\left(R^2-r^2\right)
2\pi r\,\mathrm{d}r \\
&=
\frac{\pi\Delta p}{2\mu L}
\int_0^R
\left(R^2r-r^3\right)
\mathrm{d}r \\
&=
\frac{\pi\Delta pR^4}{8\mu L}
\end{aligned}
\]

よって、

\[
\boxed{
Q
=
\frac{\pi R^4}{8\mu L}
\Delta p
=
\frac{\pi D^4}{128\mu L}
\Delta p
}
\]

が得られます。

圧力損失を求める形

流量式を圧力差について解くと、

\[
\boxed{
\Delta p
=
\frac{128\mu LQ}{\pi D^4}
}
\]

です。また、\(Q=\bar{v}\pi D^2/4\) を代入すると、

\[
\boxed{
\Delta p
=
\frac{32\mu L\bar{v}}{D^2}
}
\]

となります。層流では、圧力損失は粘度、管長、平均流速に比例し、管内径の二乗に反比例します。ただし、流量一定で比較する場合は \(D^4\) の影響になります。

一般的な配管損失との関係は、配管の圧力損失の記事で確認できます。

管径の4乗則

圧力差、粘度、管長が同じなら、Hagen–Poiseuilleの式から、

\[
Q\propto D^4
\]

です。管内径の変化による流量比は、

\[
\frac{Q_2}{Q_1}
=
\left(
\frac{D_2}{D_1}
\right)^4
\]

となります。

管内径の変化 流量の変化
1.2倍 \(1.2^4=2.07\) 倍
1.5倍 \(1.5^4=5.06\) 倍
2倍 \(2^4=16\) 倍
半分 \((1/2)^4=1/16\)

直径と半径の取り違えに注意

半径を使う式の分母は8、直径を使う式の分母は128です。\(D=2R\) なので \(D^4=16R^4\) となり、係数が16倍違います。

Darcy–Weisbachの式との関係

Darcy–Weisbachの式は、

\[
\Delta p
=
f_{\mathrm{D}}
\frac{L}{D}
\frac{\rho \bar{v}^2}{2}
\]

です。円管内層流のDarcy摩擦係数、

\[
f_{\mathrm{D}}
=
\frac{64}{\mathrm{Re}_D}
\]

と、

\[
\mathrm{Re}_D
=
\frac{\rho \bar{v}D}{\mu}
\]

を代入すると、

\[
\begin{aligned}
\Delta p
&=
\frac{64\mu}{\rho \bar{v}D}
\frac{L}{D}
\frac{\rho \bar{v}^2}{2} \\
&=
\frac{32\mu L\bar{v}}{D^2}
\end{aligned}
\]

となります。これはHagen–Poiseuilleの式から得た圧力損失式と一致します。つまり、\(f_{\mathrm{D}}=64/\mathrm{Re}_D\) はHagen–Poiseuille流れと整合する関係です。

壁面せん断応力

せん断応力分布、

\[
\tau(r)
=
\frac{\Delta p}{2L}r
\]

へ \(r=R=D/2\) を代入すると、壁面せん断応力は、

\[
\boxed{
\tau_w
=
\frac{\Delta pD}{4L}
}
\]

です。圧力損失式を代入すれば、

\[
\boxed{
\tau_w
=
\frac{8\mu \bar{v}}{D}
}
\]

とも書けます。管径が小さいほど、同じ平均流速を保つために大きな速度勾配と壁面せん断応力が必要です。

助走区間と十分に発達した流れ

流体が一様な速度分布で円管へ入ると、壁面のすべりなし条件によって管壁付近から境界層が成長します。境界層が管中心へ到達するまでの区間を助走区間と呼び、その後に速度分布が放物線形で変化しなくなった流れを十分に発達した流れと呼びます。

円管内層流の助走長さ \(L_e\) の目安として、

\[
\boxed{
\frac{L_e}{D}
\approx
0.05\,\mathrm{Re}_D
}
\]

が使われます。短い管や入口直後では、発達流れを前提とするHagen–Poiseuilleの式からずれる場合があります。

例題1:水が流れる細管の流量

内径2.0 mm、長さ1.0 mの水平円管へ、圧力差1.0 kPaを加えます。水の粘度を \(1.00\times10^{-3}\,\mathrm{Pa\,s}\)、密度を \(1000\,\mathrm{kg/m^3}\) として流量を求め、層流条件を確認します。

1. 流量を求める

\[
\begin{aligned}
Q
&=
\frac{\pi D^4}{128\mu L}
\Delta p \\
&=
\frac{
\pi(2.0\times10^{-3})^4
(1.0\times10^3)
}{
128(1.00\times10^{-3})(1.0)
} \\
&=
3.93\times10^{-7}\,\mathrm{m^3/s}
\end{aligned}
\]

\(\mathrm{L/min}\) へ換算すると、

\[
Q
=
0.0236\,\mathrm{L/min}
\]

2. 平均流速とレイノルズ数を確認する

\[
\begin{aligned}
\bar{v}
&=
\frac{Q}{\pi D^2/4} \\
&=
0.125\,\mathrm{m/s}
\end{aligned}
\]
\[
\begin{aligned}
\mathrm{Re}_D
&=
\frac{\rho \bar{v}D}{\mu} \\
&=
\frac{(1000)(0.125)(0.0020)}
{1.00\times10^{-3}} \\
&=250
\end{aligned}
\]

レイノルズ数は250なので層流条件を満たします。流量は\(3.93\times10^{-7}\,\mathrm{m^3/s}\)、0.0236 L/minです。

例題2:高粘度油に必要な圧力差

粘度0.50 Pa·sの油を、長さ2.0 m、内径10 mmの円管へ \(1.0\times10^{-6}\,\mathrm{m^3/s}\) で流します。必要な圧力差を求めます。

\[
\begin{aligned}
\Delta p
&=
\frac{128\mu LQ}{\pi D^4} \\
&=
\frac{
128(0.50)(2.0)(1.0\times10^{-6})
}{
\pi(0.010)^4
} \\
&=
4.07\times10^3\,\mathrm{Pa} \\
&=
4.07\,\mathrm{kPa}
\end{aligned}
\]

必要な圧力差は4.07 kPaです。密度を900 kg/m³とすればレイノルズ数は約0.23となり、十分な層流です。

例題3:毛細管の測定値から粘度を求める

内径1.0 mm、長さ0.50 mの毛細管に20 kPaの圧力差を加えたところ、流量が \(1.0\times10^{-7}\,\mathrm{m^3/s}\) でした。理想的なHagen–Poiseuille流れとして粘度を求めます。

流量式を粘度について解くと、

\[
\mu
=
\frac{\pi D^4\Delta p}{128LQ}
\]

です。数値を代入して、

\[
\begin{aligned}
\mu
&=
\frac{
\pi(1.0\times10^{-3})^4
(2.0\times10^4)
}{
128(0.50)(1.0\times10^{-7})
} \\
&=
9.82\times10^{-3}\,\mathrm{Pa\,s} \\
&=
9.82\,\mathrm{mPa\,s}
\end{aligned}
\]

粘度は9.82 mPa·sです。実際の毛細管粘度計では、入口・出口の効果、運動エネルギー、温度、管寸法の校正などを補正する場合があります。NISTの毛細管粘度計資料でも、理想的なPoiseuille式に加えて端部や慣性の補正が扱われています。

Hagen–Poiseuilleの法則が使われる場面

  • 毛細管粘度計:流量や通過時間から粘度を測定する
  • マイクロ流路:小径流路の圧力と流量を設計する
  • 注射針・細管:必要な押出圧力を見積もる
  • 潤滑・油圧細管:高粘度液体の漏れや流量を求める
  • 膜・多孔質体のモデル:細孔を毛細管の集合として近似する
  • 生体流れの基礎:細い血管内の理想化された流れを考える

実際の血液は単純なニュートン流体ではない

血液は細胞を含み、特に細い血管では非ニュートン性や細胞スケールの影響が現れます。Hagen–Poiseuilleの法則は重要な基礎モデルですが、すべての血流を正確に表すわけではありません。

よくある間違い

1. 乱流へ適用する

Hagen–Poiseuilleの法則は層流の式です。計算後もレイノルズ数を確認し、層流条件と矛盾していないか検証します。

2. 直径と半径の式を混ぜる

\(Q=\pi R^4\Delta p/(8\mu L)\) と \(Q=\pi D^4\Delta p/(128\mu L)\) を混ぜると16倍の誤差になります。

3. mmをmへ換算しない

管径は4乗されるため、単位換算ミスの影響が極端に大きくなります。2 mmは \(2\times10^{-3}\,\mathrm{m}\) です。

4. 粘度と動粘度を取り違える

基本式に入れるのは動粘度 \(\nu\) ではなく粘度 \(\mu\) です。動粘度しかない場合は \(\mu=\rho\nu\) で変換します。

5. 非ニュートン流体へそのまま使う

見かけ粘度がせん断速度に依存する流体では、速度分布と流量式が変わります。適切な構成方程式を使う必要があります。

6. 入口損失や助走区間を無視する

短い管や太く短い毛細管では、入口で流体を加速するための圧力や発達途中の流れが無視できない場合があります。

7. 温度変化による粘度変化を無視する

細管ではせん断や圧力損失による発熱が問題になる場合があります。粘度が温度で大きく変わる流体では、一定粘度の仮定を確認します。

8. 管内径の4乗則を乱流にもそのまま使う

\(Q\propto D^4\) は、他の条件が同じHagen–Poiseuille層流に対する関係です。乱流では摩擦係数や流量と圧力差の関係が異なります。

次に学ぶ内容とのつながり

Hagen–Poiseuilleの法則を理解すると、次の内容へ進みやすくなります。

  • 非円形流路の層流と水力直径
  • 平行平板間のPoiseuille流れ
  • Couette流れと圧力駆動流れの重ね合わせ
  • 非ニュートン流体の管内流動
  • 入口領域と発達流れ
  • 毛細管粘度計の補正式
  • 多孔質体のDarcy則

速度分布を導き、断面積分して流量を求める考え方は、運動量移動を学ぶうえで非常に重要です。

まとめ

  • Hagen–Poiseuilleの法則は、円管内の十分に発達したニュートン流体の層流に適用する
  • 速度分布は \(u(r)=\Delta p(R^2-r^2)/(4\mu L)\) の放物線
  • 中心最大流速は断面平均流速の2倍
  • 体積流量は \(Q=\pi D^4\Delta p/(128\mu L)\)
  • 圧力損失は \(\Delta p=128\mu LQ/(\pi D^4)=32\mu L\bar{v}/D^2\)
  • 流量は圧力差に比例し、粘度・管長に反比例する
  • 流量は管内径の4乗に比例するため、管径の影響が非常に大きい
  • Darcy摩擦係数 \(64/\mathrm{Re}_D\) と組み合わせた圧力損失式と一致する
  • 適用前後に層流、十分発達、ニュートン流体などの条件を確認する

この法則は単なる細管の公式ではなく、粘性、せん断応力、速度分布、流量、圧力損失を一つにつなぐ、管内流動の基本モデルです。

参考資料

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